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59.話す



(私から目が離せない……?)


ジェイドから言われた言葉について。

私は頭の中で何度も――考え続けた。


その結果……良いことなのか、悪いことなのか――よくわからなかった。


(いえ、でも……なんだか褒められているような気もしている……けど)


そう、ジェイド自身の考えが変わったということなので、良い変化なのだと思う。


“冷酷王”に関する偏見もしかりだが、もともとのジェイドと私の距離が遠すぎたゆえにの弊害が生まれている。


(でも……彼は、私の言葉を受けて――)


確かに、まだ彼の言葉をそのまま受け止めていいのか迷う時はある。

しかしそれでも、目の前の彼は行動と――そして真っ直ぐな言葉を、私に向けてくれた。


(だから……私も、驚いて何も言えないだけでは……いけないわ)


ずっとジェイドの行動に理解が追い付かなくて、上手く言葉が出なかった。

けれどそのままでいるのは――よくない。


「陛下……、お話してくださいましてありがとうございます」

「……ああ」

「私は、妖精のことは――全然知らなくて……それに陛下の悩みにも気づいておりませんでした」

「……それは、俺が話さなかったから」

「……確かに陛下しか知る由のないこと――かもしれませんが、それでも……」

「それでも……?」


私の頭の中では、先日の――庭園で、ぐったりとしているジェイドの顔が思い浮かぶ。


レイラとジェイドは冷え切った関係だった……けれども、二人ともお互いの現状を知っていたら――。


(いえ、上手くいくか……なんて分からないわね。今、家族関係を良好にしたいと思う……私からしたら――の話だから)


レイラはもともと、王宮で孤独を感じ――贅沢をすることで気を紛らわせていたのかもしれない……が。


ジェイドの辛さも、レイラの辛さも……私が万事解決できるわけではなかったのだ。


(だから、私ができるのは――今をよりよくすること、ね)


自分の中での気持ちが固まった私は、再び口を開いて。


「それでも、今知ることができて――良かったと思うのです」

「……」

「まだ私を信じ切れていないところもあると――思います。けれど……私も微力ながらですが、陛下の体調を良くする手伝いをしてもよろしいですか?」

「手伝い?」

「前に医者に診せても、治らなかった……と聞きましたが――私が触れることで陛下の体調が少しでも良くなるのなら、そのお手伝いをしたいと思ったのです」


私の話を聞きながら、ジェイドはこちらをじっと見つめていた。


「私は医者ではないので、陛下の身体のことをきっちり分かっていると、言い切れるわけではありません――が、一緒にその道を探していくことはできると……そう思っております」

「道を……探す……?」

「はい! 陛下の体調が治れば――その分、今以上に元気に過ごせるということでしょう? ずっと病気でいるのは辛すぎますから」

「……だが――」


ジェイドは、少し下を向きながら――ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「俺の体調のことで、お前を煩わせるわけにはいかない。問題は俺のことで……」

「いいえ」

「……?」


私の返事を聞き、ジェイドは思わずといった形で顔をあげた。


「私たちは夫婦であり――家族です。だから、一人だけで背負おうとしないでください」

「……っ」

「こんな言葉を私が言うのは、とても今更な気もしますが……それでも、陛下がこうして話してくださったということに、私は家族のような関係を築けると――そう思ったのです」

「家族の……関係」

「ええ、王族や貴族という前に――ノエルも含めて、私たちは家族というつながりがあると思いませんか?」

「……」


ジェイドは逡巡しているようで、目を少し伏せながら――眉間に力を入れていた。


「もちろん、陛下が……親子や家族を想像しにくい事情があるというのは、さきほどの話で知りました。だから――少しずつ、始めませんか?」


そう、さっき――ジェイドは親子の情など分からないと、そう言っていた。

思い出すのは庭園で、ギスギスとした雰囲気を放っていたジェイドと上皇后様の姿。


想像でしかないが、ジェイドは幼少期から上皇后様と温かい家族のような関係はなかったように思ったのだ。


だから、今後の関係――特にノエルの成長の過程のためにも、それに今の自分の気持ちとしても変わっていきたいと……そう思った。


ジェイドは、こうした提案がされるとは思っていなかったらしく、どう反応すればいいのか迷っているようだった。そんな彼に私は――。


「陛下がこうして話してくださったのに、私は何も話せていなかったですね」

「?」

「あらためて、謝らせてください――秘密にするほどでもなかったのですが……」


先ほどは、ジェイドに話すなんて……あまりにも個人的すぎて、彼には関係ない――そう思っていたのだが。


(でも、彼と家族としての関係を築いていくために――それに、このことだって家族の話としては関係はなくは……ないはずだ)


私は決意をして、おずおずと口を開き。


「実は先ほど……陛下が言っていた通り、私はここ最近……気分が塞ぎこんでいたんです」

「!」

「その……ノエルが私に頼らなくなっていること……そのことに――」


言い淀まないように、前のめりな姿勢で……私は続けて言う。


「――寂しさを感じていたんです!」


そう言うと――隣に座る彼は、目を見開いて私を見つめていた。





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