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105/151

105.ホッとしたら…



レイヴンから呼び方のことを言われて――私は、無意識のうちに明るくなった笑顔を浮かべて。


「ええ! もちろんです! 閣下」

「……! ありがとうございます。レイラ様」


私がそう返事をすると。

レイヴンも、笑顔を浮かべて返事をしてくれた。


そして、おずおずとレイヴンが再び口を開いて。


「その……閣下ではなく――同志として……名前で呼んでくださいますか?」

「! そ、それは……」

「アタシは、この国では王族を敬う立場であって……レイラ様が臆することはありませんもの」


あらためてレイヴンにそう言われて。

私は、どうするべきか悩んでしまう。


(今まで……閣下と呼んできて長かったこともあって……なによりも、彼は――この国で多くの人々から尊敬される立場の人だわ)


確かにレイラも――王妃として、国を代表する立場ではあるが……。


その実態は、王宮の使用人や貴族たちに侮られている立場だ。


もともとレイヴンも、王妃であるレイラの態度についてはネガティブなイメージを持っていたわけで。


(でも、それなら……ジェイドも……?)


そう考えたら、ジェイドだって――今更ながら本当に呼び捨てて呼んでいいのか、焦ってくる。


悩んでいるのが表情に出ていたのが、分かったのか。レイヴンは優しく声をかけてきて。


「レイラ様を悩ませるのは、アタシの本意ではないわ。だから、無理にしなくてもいいのよ」

「あ……」


そう声をかけてくれたレイヴンは、私を気遣ってそう言ってくれたのがひしひしと伝わって来た。


もちろんレイヴンを気兼ねなく――いきなり呼ぶのは、ハードルが高いけれど。


それでも彼と「同志」になりたいと言った自分の言葉に……責任を持ちたくて。


私は口を開き――。


「その……レイヴン……卿……そう呼んでもいい……かしら?」

「!」


私がそう言うと、レイヴンはパアッと明るい表情になって。


「ええ! いいわ! これからも――よろしくね。レイラ様」

「は、はい……! よろしくお願いします! レイヴン卿」

「ふふ、また口調が敬語に戻っているわよ?」

「あ……」


先ほど、どうにか敬語はなしで――くだけた口調で言ってみたものの。まだ慣れてなくて、もとの話し方が出てしまうようだ。


そのことに、罪悪感や照れくささが出てしまうが……こうしてレイヴンと明るく話せるようになったことを、純粋に嬉しく思った。


(レイヴン卿のフランクな感じが……なんだか――くだけて話せる友人のようで……心強く感じるのかな?)


見た目は頼れる――そして美麗なイケメン騎士団長のレイヴンだが、こうして柔らかい口調のおかげもあって、安心感が生まれていた。


レイヴンとの話のおかげで、張り詰めていた緊張がなくなったのか……。


(あ……身体に力が入らないような……)


――グラッ。


「レイラッ……!」


――ギュッ。


床に崩れ落ちそうになった時――逞しい腕が、私の身体を支えてくれた。


支えてくれた人物を見れば、ジェイドで……彼の顔を見れば、焦ったような――困惑した顔になっていた。


心配をかけさせてしまったことに申し訳なさを感じるものの……身体は鉛のように重くなってしまい――私の言うことをきかない。


(気づけば……ダンスの練習をしてから――徹夜もして、慣れないことばかりで……身体がふらついてしまったのかしら……?)


OL時代なら、徹夜なんてお手の物だったが……。


レイラになってから、規則正しい生活などを続けていたため――突然のイレギュラーに身体がビックリしてしまったのかもしれない。


「ジェイド……ごめんなさい……」

「謝るな。何も悪くないし――すぐにお前を休ませられなかった……俺が悪い」

「そんなことは……」

「ちょ、ちょっと大丈夫っ……?」


なんとかジェイドに、謝罪の言葉を口にしたが。

ジェイドからは、気遣う様子で返事を返されたが――彼を心配させたくないのに、言うことをきかない自分の身体に歯がゆさを感じた。


レイヴンは――突然、身体から力をなくしてしまった私を見て、オロオロとしているようだった。


「身体はすべて――俺に預ければいい」

「え……? わっ!」


ジェイドは私にそう話しかけたかと思うと――。


逞しい腕で私を支えるだけでなく、お姫様抱っこのように横抱きで持ち上げたのであった。



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