105.ホッとしたら…
レイヴンから呼び方のことを言われて――私は、無意識のうちに明るくなった笑顔を浮かべて。
「ええ! もちろんです! 閣下」
「……! ありがとうございます。レイラ様」
私がそう返事をすると。
レイヴンも、笑顔を浮かべて返事をしてくれた。
そして、おずおずとレイヴンが再び口を開いて。
「その……閣下ではなく――同志として……名前で呼んでくださいますか?」
「! そ、それは……」
「アタシは、この国では王族を敬う立場であって……レイラ様が臆することはありませんもの」
あらためてレイヴンにそう言われて。
私は、どうするべきか悩んでしまう。
(今まで……閣下と呼んできて長かったこともあって……なによりも、彼は――この国で多くの人々から尊敬される立場の人だわ)
確かにレイラも――王妃として、国を代表する立場ではあるが……。
その実態は、王宮の使用人や貴族たちに侮られている立場だ。
もともとレイヴンも、王妃であるレイラの態度についてはネガティブなイメージを持っていたわけで。
(でも、それなら……ジェイドも……?)
そう考えたら、ジェイドだって――今更ながら本当に呼び捨てて呼んでいいのか、焦ってくる。
悩んでいるのが表情に出ていたのが、分かったのか。レイヴンは優しく声をかけてきて。
「レイラ様を悩ませるのは、アタシの本意ではないわ。だから、無理にしなくてもいいのよ」
「あ……」
そう声をかけてくれたレイヴンは、私を気遣ってそう言ってくれたのがひしひしと伝わって来た。
もちろんレイヴンを気兼ねなく――いきなり呼ぶのは、ハードルが高いけれど。
それでも彼と「同志」になりたいと言った自分の言葉に……責任を持ちたくて。
私は口を開き――。
「その……レイヴン……卿……そう呼んでもいい……かしら?」
「!」
私がそう言うと、レイヴンはパアッと明るい表情になって。
「ええ! いいわ! これからも――よろしくね。レイラ様」
「は、はい……! よろしくお願いします! レイヴン卿」
「ふふ、また口調が敬語に戻っているわよ?」
「あ……」
先ほど、どうにか敬語はなしで――くだけた口調で言ってみたものの。まだ慣れてなくて、もとの話し方が出てしまうようだ。
そのことに、罪悪感や照れくささが出てしまうが……こうしてレイヴンと明るく話せるようになったことを、純粋に嬉しく思った。
(レイヴン卿のフランクな感じが……なんだか――くだけて話せる友人のようで……心強く感じるのかな?)
見た目は頼れる――そして美麗なイケメン騎士団長のレイヴンだが、こうして柔らかい口調のおかげもあって、安心感が生まれていた。
レイヴンとの話のおかげで、張り詰めていた緊張がなくなったのか……。
(あ……身体に力が入らないような……)
――グラッ。
「レイラッ……!」
――ギュッ。
床に崩れ落ちそうになった時――逞しい腕が、私の身体を支えてくれた。
支えてくれた人物を見れば、ジェイドで……彼の顔を見れば、焦ったような――困惑した顔になっていた。
心配をかけさせてしまったことに申し訳なさを感じるものの……身体は鉛のように重くなってしまい――私の言うことをきかない。
(気づけば……ダンスの練習をしてから――徹夜もして、慣れないことばかりで……身体がふらついてしまったのかしら……?)
OL時代なら、徹夜なんてお手の物だったが……。
レイラになってから、規則正しい生活などを続けていたため――突然のイレギュラーに身体がビックリしてしまったのかもしれない。
「ジェイド……ごめんなさい……」
「謝るな。何も悪くないし――すぐにお前を休ませられなかった……俺が悪い」
「そんなことは……」
「ちょ、ちょっと大丈夫っ……?」
なんとかジェイドに、謝罪の言葉を口にしたが。
ジェイドからは、気遣う様子で返事を返されたが――彼を心配させたくないのに、言うことをきかない自分の身体に歯がゆさを感じた。
レイヴンは――突然、身体から力をなくしてしまった私を見て、オロオロとしているようだった。
「身体はすべて――俺に預ければいい」
「え……? わっ!」
ジェイドは私にそう話しかけたかと思うと――。
逞しい腕で私を支えるだけでなく、お姫様抱っこのように横抱きで持ち上げたのであった。
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