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【書籍発売中】ユーリ~魔法に夢見る小さな錬金術師の物語~  作者: 佐伯凪
第四章 魔法への三歩目~グレゴリアの書記とエレメント~
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第102話

・土級常時依頼、一角兎の角の納品(500リラ) 場所、ベルベット領都東の雑木林


「セイッ! タァッ!」


 飛びかかってくる複数の一角兎を、棒を上手く操り迎撃。華麗な棒術を見せるフィオレ。


「お姉ちゃんすごーい!」


「一角兎が複数いても私達の出る幕はなし、と。違うの行きましょう」


 合計12本、計6,000リラ


・土級常時依頼、ジャイアントトードのガマ油の納品(1Lあたり1,000リラ) 場所、ベルベット領都南の沼地


「水の精霊よ、氷槍となりてかの魔物に降り注げ」


 ザンッ!


 体長1メートルほどの巨大なカエルに氷の槍が突き刺さる。


「この程度の速度の相手なら、フィオレにとってはただの的ね。納品物は一匹からそこそこ採れておいしい依頼ではあるんだけど……」


「これっきりにしたいですね……」


 オリヴィアとフィオレは目を細めて、嬉々としてジャイアントトードのガマ油を採取するユーリを見る。ユーリは全身カエルの分泌液でドロドロだ。

 用意した袋にタップリと採取し、ニコニコドロドロでかけ戻ってくるユーリ。


「お姉ちゃーん! オリヴィアー! いっぱい採れたー!」


「水の精霊清らかな水となりあの可愛い子を清めよ!」


「もっとジャイアントトードの……うわぁっぷ!!」


 フィオレの放った水魔法で押し戻され、綺麗に洗われるユーリであった。


 合計5リットル。5,000リラ。


・鉛級常時依頼、黒狼の討伐(1匹あたり1,000リラ) 場所、ベルベット領都北の森


「セイッ! ソリャッ!」


「ヤッ! タァーッ!」


 遭遇した黒狼の群れ。大きな群れの様で、十頭以上はいるだろう。

 流石にフィオレの棒術では攻撃力が足りずに一撃で倒すことは出来ないが、それでも黒狼の攻撃を全てを払い、撃ち落とす。

 ユーリに向かってきた狼は一閃の元に沈む。


「この程度だと、連携の必要もなし、ね」


 合計12体。12,000リラ。


・鉄級常時依頼、ミュータントトレントの木材の納品(1㎥あたり200,000リラ)場所、ベルベット領都北の森


「火の精霊よ、灼熱の太陽となりてかの邪木じゃぼくに照りつけよ」


 森の中に湧く泉のすぐ隣に陣取っているミュータントトレント。その頭上に火魔法で熱球を作り出すフィオレ。

 ジリジリとミュータントトレントを焼く。


「いやー、移動しない相手には魔法って本当に便利ねー」


 悲痛な叫び声を上げながら干からびていくミュータントトレント。根を地面から引き抜き賢明に動こうとするも、その歩みは遅々としたものだ。

 ひときわ大きな断末魔を上げた後、ドシンとその巨体を横たえた。所々の枝葉から出火している。


「水の精霊よ、霧雨となりて降り注げ」


 山火事になってしまわないように、水魔法で消化するフィオレ。アフターケアもばっちりである。

 幹の外周が5メートルにも及ぶミュータントトレントを丸のまま確保できたのは大きい。が、問題はどうやって運ぶかである。


「勿体無いけど、持てる分だけ納品しようか」


「転がして行けば何とかなるんじゃない?」


「こ、この巨木を……?」


 巨木をユーリが蹴り転がしたり、オリヴィアが枝を切り飛ばしたり、フィオレが水魔法をぶつけたりしながら運ぶ。見た目は無惨な姿に成り果てたが、なんとか納品に成功。


 合計4.3㎥。860,000リラ


・鉄級随時依頼、スイートベアの新鮮で傷のない肝臓の納品(一つ150,000リラ、三つまで。なお品質により報酬に減額の可能性あり)場所、ベルベット領都北の森


「っち、キラービーがまとわりついてるわ! こいつキラービーの巣にちょっかいかけてきたみたいよ!」


「私が火魔法で敬遠します! ユーリはオリヴィアさんに向かう蜂を払って!」


「うん!」


「助かるわ!」


 はちみつが大好きな三メートルほどの熊、スイートベア。キラービーの巣を襲ってはちみつを食べてきたのだろう。口周りにべったりと蜜をつけている。

 当然激怒したキラービーがスイートベアの周りを飛び回っている。そして激怒キラービー達はスイートベアだろうが冒険者だろうが見境なしに襲ってくるのだ。

 後衛であるフィオレが的確に状況を判断し指示を飛ばす。己に向かって来るキラービーを棒で叩き落としながらも詠唱を始めた。


「火の精霊よ、双龍となり我が意に従え!」


 火で二体の龍を生み出し、巧みに操りオリヴィアをキラービーから守る。

 その間にも自分に向かって来るキラービーを棒術で迎撃するフィオレ。


「ったく! 弟だけじゃなくて姉まで優秀とか、勘弁してよね! 私の立つ瀬がないじゃないの!」


 よくわからない文句を言いながらスイートベアに対峙し、攻撃してくる腕を搔い潜って細剣を一閃。

 スイートベアの指を数本落とすが、おびえるどころかさらに怒り狂って襲い掛かって来た。


「これだから図体のわりに脳が小さい奴は嫌いなのよ!」


 姿勢を低くし、瞬刻強化をした足で踏み切る。大降りに攻撃してくるスイートベアの脇をすり抜けながら、脇から首にかけて切りつける。

 首を切られ致命傷を負ったスイートベアは悲鳴にならない悲鳴を上げてしばらくのたうち回り、絶命した。


「ほいっと。これで最後の一匹」


 同じタイミングでユーリが全てのキラービーを倒した。


「フィオレ、氷の箱をお願い」


「はい。水の精霊よ、氷の箱となりて出現せよ」


 熊の肝臓は鮮度が命。氷で冷やしつつ、ほかにも2頭を討伐。


 依頼達成。合計三つ。鮮度が良好だったため追加報酬あり。500,000リラ。

 ついでに常時依頼キラービーのはちみつの納品、50,000リラ。


 その他もろもろの依頼もこなし、パーティ結成から数か月で三人とも鉄級への昇格条件である、依頼による100万リラの報酬受領を達成した。

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