第6話 スキル鑑定
部屋に入ると今までにないほどに清潔な部屋が広がっていた。
「綺麗な部屋だ。いや新築だから当たり前なのか? 」
独り言ちながら荷物を降ろすために中を歩く。
中央にある木の机と椅子を横切りリュックサックを下に置く。
中を空けて明日必要になるだろう物を確認後、端に置いた。
「……仕方がないとはいえ小さい」
木の椅子に座ると大幅に体がはみ出した。
恐らく他の部屋と同じ物なのだろう。しかし窮屈な物は窮屈である。給料が入ったら買い換えようと思いながらもベットに座る。
「今日は色々あった」
そう呟きながら天井を見た。
パーティーを追い出されたことはショックだったが、こうして職を見つけてくれていた。
これに関しては感謝しかない。
こっちのメンバーは変態ばかりだが、考えてみれば前のパーティーもそこそこ色濃い人の集まりだった。
自信家で突っ込む癖のある剣士カイトにその恋人キルケー。何を考えているのかわからないメアリにそして俺。
よく考えればカイトにべったりでメアリを目の敵にしているキルケー、というギスギスした雰囲気から抜け出せたのは良かったのかもしれない。
「そう言う意味ではいいタイミングだったのかもしれない。……歳が気になるが」
俺は今二十八歳。
スキルは『硬化』と『範囲防御』、そしてカエサル隊長曰く耐性系のスキル。
幾ら防御特化とは言え後どのくらい続くか心配だ。
だが聞くところによると冒険者よりも長く続けることができるようだ。
よく思い出すと門番とかも高齢の人がいたりもする。現役で、全力で体を動かせなくなった人が回されているのかもしれない。
そう考えると今後は明るい。
「そういや当分スキル鑑定してなかったな」
思い出し、考える。
スキル鑑定を行うためには多くのお金が必要になる。
教会でやる成人の儀の時のスキル鑑定だけ無料だが、その後は献金が必要。
スキルを確認する方法は幾つかある。一番簡単なのは魔法の『スキル鑑定』だろうか。
最初に鑑定したのは確か成人の儀の時教会で行ったスキル鑑定でそれ以降はしていない。
これから軍務を続けるのなら、いつかはもう一回やらないといけないだろうな、と思いつつ懐が寂しい。
一人ベットの上で考えていると「バン! 」と扉が開いた。
「た、隊長?! 」
「来たぞ! アダマ君」
「……せめてノックをしてください」
溜息をつきながら立ち上がろうとする。
しかしカエサル隊長はそれを手で制して椅子に座った。
「ふむ。この椅子は君には小さいようだな」
「後で買い換えます」
「構わない。後で備品交換の申請を行っておこう」
「……俺一人の為に良いのですか? 」
「良いも悪いも、結局の所独立ダンジョン攻略部隊は総勢百名程度。しかし割り当てられた資金は膨大。使わない手はないだろう」
椅子ごとベットに体を向けて隊長はそう言った。
「手に持っているのは何ですか? 」
「これか。これはスキル鑑定の為の魔道具だ」
「スキル鑑定の?! 」
驚き声を上げると微笑み大きく頷いた。
「あの時君が出て行ってしまったから鑑定が出来なかったが、ここで行うとしよう」
「……すみません。てっきり変なことをされるのかと思い」
「何だ。されたいのか? 」
「滅相もございません!!! 」
「つれないな……。まぁいい。今回の本題はこれだ。机の前まで来てくれ給え」
ベットから立ち上がり机まで行く。
隊長が「これに手をかざすんだ」と言うので手をかざす。
すると空中に文字が浮かび上がった。
「!!! 」
隊長が大きく目を開けた。
そして同情するかのような目線で俺を見る。
一体何が書かれているんだ?
「……正直ここまでとは思わなかったよ」
「どういうことで? 」
「いや、話を聞いた所によると君の基本的なスキルは『硬化』だろ? 」
それに頷く俺。
隊長は続けた。
「おかしいと思わないかい? 硬化スキルで、低位とは言えドラゴンの一撃を微風のように凌げるのは」
「……長らくスキル鑑定をしていなかったので、そんなものとばかり思っていましたが……、何が書かれているので」
俺が聞くとカエサル隊長は読み上げてくれた。
「『超硬化』『範囲防御』『敵意集中』『攻撃誘導』『物理攻撃耐性』『魔法攻撃耐性』『痛覚麻痺』『精神苦痛耐性』『病疫耐性』『精神攻撃耐性』『幸運』……。君は呪いでも受けているのかね? 」
カエサル隊長の形容しがたい表情が俺に刺さる。
……何でこんなにスキルが。
「最初の方はまだわかる。しかし魔法攻撃耐性は普通会得できないぞ? 日常的に、誰かに魔法攻撃でも喰らっていたのか? 」
「そう言えばキルケ―、いや前のパーティーの魔法使いに戦闘中誤爆を受けてましたね」
「よくそのパーティーを自分から辞めなかったな。私ならばその女を斬り殺している所だぞ」
「まぁ特に痛くもなかったので」
「……お人好しが過ぎる。まぁしかし、これならばエリアエルの範囲魔法を喰らっても大丈夫だろう」
「いえそこは出来るだけ自重して欲しいのですが」
「諦め給え。彼女の範囲魔法の『範囲』は常軌を逸する」
「火力だけじゃないのですか? 」
「この私が火力だけで人を入れるとでも」
「愚問でした」
「そこは否定して欲しいところだが……、まぁ次だ。他の耐性系スキルだが……どうなっているんだ? というよりも君はどれだけ劣悪な環境で育ったんだ? 」
それを聞かれ、思い出すように考える。
俺はその昔小さな農村で生まれ育った。
村長の子に冤罪をかぶせられて村八分にされたことがあるが……多分その時ついたのだろう。
そのことを隊長に話す。
「よしこれからその農村とやらを潰しに行こうか」
「待ってください、隊長」
「止めないでくれアダマ君。私の可愛い部下が世話になったんだ。ちょっとした挨拶にその村長の息子とやらの息子を切り刻みに行くだけだ」
その言葉に体が一気に竦み上がる。
怖っ!!!
発想が怖すぎます、隊長。
思ってくれるのは嬉しいが、流石にやり過ぎだ。
「……まぁ良い。君が止めるとならば、引き下がっておこう。見事なまでに攻撃系のスキルはないが一応聞いておく。アダマ君の攻撃方法はどんな方法だ? 」
「拳で殴ります」
「……普通拳で殴ったら魔物よりも拳が壊れると思うが……、あぁ超硬化か」
「ええ。拳に硬化、いえ超硬化をかけて殴ります」
「君を怒らせないようにしたほうが良さそうだ。ま、これを上に報告しておくが良いかね? 」
「はい」
「よろしい」
そう言い隊長は席を立った。
俺の隣まで来て扉の方へ——。
「では味見と行こうか」
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