第61話 滅亡を回避せよ! 6 邪神のダンジョン 4 vs 『破壊』を司る邪神教団
「メアリだと?! 」
「そうだよ。元『聖杯を継ぐ者』の斥候、メアリ」
「アダマ。あの魔物と知り合いなのですか? 」
自身をメアリと名乗る魔物と会話しているとエリアエルが聞いて来た。
答えに詰まる。
「正直わからない。彼女が本物のメアリと言うのならば元メンバーだが......少なくとも俺が知ってるメアリは邪神教団の一員ではなかった」
「はは。それは僕の表面しか見ていなかったからだよ」
軽く笑いながら邪教教徒メアリは言う。
「......いつ邪神教団に」
「最初からだよ」
「最初から? 」
俺が聞き返すと醜悪な笑みを浮かべるメアリ。
片手に赤い物を作りだしながら俺に向かう。
手を軽く振ると赤い光線が走った。
「ぐっ! 」
すぐさま皆の前に出てそれを受け止める。
ダメージがっ。
やはり邪神の力か。
「メアリは俺が引き受ける。そっちは任せた! 」
「任せておけ」
「任せてください」
「そっちこそ後腐れなく終わらせろよ」
彼女達を範囲に入れつつメアリと対峙する。
さて。どう倒すか。
★
邪神の力を取り込んだ相手に通常攻撃は効かない。
これは経験則で、恐らく鉄則だろう。
なので彼女に金剛鉄鋼の神体を纏った拳で攻撃する。
だが。
「甘い」
六つの腕を器用に動かし受け流された。
「君をあのパーティーに勧誘したのは誰だと思ってるの? 」
「ちっ! 」
再度拳を振り上げるも受け流された。
「アダマの癖は見切っているんだよ」
「なんで……」
「? 」
「なんで聖杯を受け継ぐ者から抜け出した」
俺が聞くと、キョトンとした表情をし笑い出した。
「はははは。アダマ。もしかしてカイト達が落ちぶれたのが僕のせいだとでも思ってる? 」
「そんなことはっ」
「いやあるね。何せこの場面で聞くんだから。もしかしてカイトを自分と重ねた? 」
そう言いつつ距離を取り赤い光線を五本ほど伸ばしてくる。
それを回避しつつ「違う」と否定する。
「俺は単純に聞きたかっただけだ」
「そう。まぁ別に知られて困る事でもないし教えてあげるよ」
メアリの光線を回避しつつ彼女に近寄る。
しかし彼女は何かの魔法ですぐに移動し距離をとられた。
「答えは簡単。アダマが抜けて暴走しそうだったから見切っただけ」
「! 」
「そもそもあのパーティーにいたのは一番安全にお金が稼ぎやすそうだったからだ。特に思い入れがある訳じゃないし、潮時かなって」
「そんな理由であのパーティーにいたのか?! 」
「驚くことかい? そもそも冒険者と言うのは己の欲を満たす者の集まりじゃないか」
「確かにそうだが......」
「金に名声、力に異性。アダマの場合だと仲間、かな。ともかく何かしら得るために冒険者になっている。アダマが僕の活動を否定する理由なんてどこにもないんだよ! 」
また消え、俺の前に現れ、六本の腕で連打してきた。
「ぐぅお! 」
「はは。幾ら君が硬かろうが耐久性には限界があるよね? 何時まで持つかっな! 」
ドドドドド!!! と連打してくる。
だがメアリ。俺を甘く見過ぎだ!
「!! ギィヤァ! 」
連打の合間を縫って一本腕をとる。
背中から引きちぎり遠くへ蹴り飛ばした。
「はぁはぁはぁ……。女の子相手に酷いね君は」
「馬鹿を言うな。世界を滅亡させかねない存在にかける情けはない」
苦痛耐性がないのだろう。
痛みに顔を歪ませながら膝をつくメアリ。
「君は軍に入って変わったね」
「そんなことはない。俺は俺のままだ」
「いいや変わったよ。冒険者の時だとただ受けるだけだったんだから。言葉も、攻撃も! 」
メアリは立ち上がり五本の腕を構え、俺も拳を構えた。
感知、とは言えない微弱な何かを感じ取り拳を突き出す。
「! 」
拳と拳がぶつかり合い衝撃波を生み出した。
「感知されるなんて! 」
「この程度の曲芸! 」
「曲芸? まぁ良いよ。だけどね——」
メアリが言った瞬間合わさった拳から激痛が走る。
「がぁっ! 」
「~~~っ! 」
彼女が離れる。
激痛が消え拳を見ると皮膚が黒ずんでいた。
だがそれもすぐに回復する。黒い皮膚が拳から剥がれ落ちながら肌色に戻った。
「本当にとんでもないね。『破壊』のスキルで腕一つを犠牲にするつもりだったのに」
聞いたことのないスキルだ。
だがあの硬い拳が黒ずみ痛みが走ったことを考えると、その名の通り触れた対象物を壊す自滅スキルか。
メアリを見る。すると五本の腕が一本垂れ下がり持ちあがっていない。
それで彼女の言葉を確認した。
「だけどアダマ。これを何発も喰らえばどうなるかな? 」
好戦的な笑みを浮かべて彼女は言った。
★
「君はカイトと同じ部類の人間だ! 」
「……」
彼女の攻撃をかわしながら話を聞く。
さっきから攻撃してくるが彼女のスキルが『破壊』のみとは分からないからだ。
しかし俺とカイトが同じ、か。
「カイトもアダマも居場所が欲しかっただけ。ただそれだけで人を傷つける! 」
「っ! 」
拳がかすり火傷を負う。一つ一つ効果が違うのか!
それに垂れ下がっていた腕も持ち上がっている。自己回復か。
「なんで傷つけられる人の事を考えない! そんなにも強者が偉いのか!!! 」
「そんなことはっ! 」
「あるね。君は英雄かもしれないけど何も知らない! 」
ドン!!! と彼女の拳が地面に突き刺さりひび割れる。
そこから離脱して守りに入る。
「何故見ようとしない?! 近くにある悪を! 」
「何を言って! 」
「何で、何で僕達を助けなかった!!! 」
更に攻撃が激しさを増す。
回避しきれないっ!
「っ! 」
「弱者を守らないこんな世界なんて、――ホロビレバイイ」
破壊の拳が俺に突き刺さる。
「ぐぅ! 」
当たる度に破壊と再生が行われるが痛みが残る。
正直彼女の過去に何があったのかわからない。
彼女が言っている弱者の事は詳しく知らない。
だが彼女の理念だけで世界が壊されるのは間違っている!
「独りよがりで——」
迫りくる拳が、遅く見える。
次に来る場所が、分かる。
間を縫って後ろに回る。
「!!! 」
「――世界を巻き込むな!!! 」
回避されると思わなかったのだろう。
勢い余りメアリは態勢を崩す。振り下ろした五本の腕は地面を叩きつけようとするが俺が背中をとって腕を掴む。
「しまっ! 」
「これで、どうだ!!! 」
「ギャァァァァァァァァァァ!!! 」
勝敗は決した。
★
「あっけないものだな」
俺がメアリを倒した後隊長の声が聞こえて来た。
隊長の方を向くと胴体が二つになって地に伏せている魔物が一体。
「終わりましたね」
「まだだ……」
隊長の後ろから声が聞こえた。
隊長達がすぐに振り向くと上半身だけ動かして何やら呪文のようなものを唱えている。
「まずい! 」
シグナがすぐに動き斬ろうとする。
しかし——。
「破壊を司る我らが主ヨ。アラ、ワ……レ、……タモウ」
二体の魔物から黒い柱が天を突いた。
ここまで如何だったでしょうか?
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