第24話 連続殺人を討伐せよ! 2 ロキのおもちゃ
俺は久しぶりに会ったカイトを見下ろし何故彼がこんな凶行に走ったのか考えた。
しかし何も思い浮かばない。
一先ず俺から離れようとするカイトを掴む。
「何故こんなことをしたんだ、カイト! 」
目を見て言うと、カイトは目がキョロキョロさせて俺を見た。
「お、お、お、おま、お前! そう! お前! アダマだ! 」
「俺か? 」
「お前がいなくなって『聖杯を受け継ぐ者』はそこのロキだけになった! 全部、全部お前のせいだ! 」
カイトが言うロキとやらを見るとそこには青い髪の少年がいた。
目にも止まらない速さでシグナが動き彼に剣をつきつけている。
両手を上げてニヤニヤとこちらを見ているが、普通じゃない。
しかし俺が?
一体どういう……。
「出鱈目な事を言うな、もやし! 」
「で、出鱈目じゃねぇ! こいつがいなくなってダンジョン攻略が上手くいかなくなった! 」
「それはお前本来の実力だったということだろう? それにそこの良い男を寄越してくれたのは他でもない、お前じゃないか」
「ぐっ......」
「こいつの言葉を真に受けるな、アダマ君」
そう言うとパシン! と魔法鞭を振るった。
隊長の言葉と鞭の音に顔を上げる。
本当に頼りがいのある隊長だ。
「そいう言えばメアリとキルケーはどうした? 」
「こんな男の事だ。差し詰めその仲間とやらに愛想を尽かしたんじゃないか? 」
「ち、違う!!! 俺に限ってそんなことはない! メアリのやつはダンジョンが怖くなって逃げやがったんだ! そうだ! そうに決まっている! 」
言っていることがおかしい。
錯乱しているのか?
クラウディア隊長の方を見ると俺の意図を察したのか頷いた。そして隊長が再度鞭を振る。
するとカイトの精神が戻った。
クラウディアの魔法鞭は指揮下にある人や物に強化を施す。
加えて指定した人や魔物に、音を通じて精神干渉を行うものらしい。
今回行ったのは攻撃ではなく、鎮静系統の魔法だろうが。
「その話が本当としてキルケーはどうした」
「キ、キルケーは……売った」
その言葉に頭が真っ白になる。
売った?
あんなにカイトを慕っていたキルケーを?
ありえない。
「あ、あいつは俺の、ログ子爵家を乗っ取ろうとした大罪人だ! 命あるだけ——」
拳を握り、顔面にめりこませた。
ドゴン!!!
カイトが吹き飛んでいく。
しまった! 逃がしてしまう!
「おいアダマ。やり過ぎだ。私の方まで来たぞ」
ドン!
飛んだ方を見るとシグナがカイトを踏みつけていた。
どうやら飛んでいるのを叩き落としたようだ。
危ない、危ない。
自分の迂闊さを恥じながら彼女の元に近寄る。
すると拍手の音が聞こえて来た。
「良いね良いね。君達。ここまで面白い事が起こるなんて……。やっぱりカイトについて来てよかったよ」
「て、てめぇ」
「おお、こわ。そんな目でボクを見ないでおくれよ。ボクも君のダンジョンライフを手伝ってあげたんだからさ」
「ロキ、だったか。君も同行願うぞ」
「いやいや、ボクは只彼と共にダンジョンを攻略していただけだから無罪放免だと思うけど? 」
「いや。この連続殺人に関わっているのは明白だ。一緒に来てもらう」
「む~。ならば仕方ないか」
「分かって貰えてうれし——「じゃぁもっと楽しい事をしようじゃないか! 」」
そう言った瞬間膨大な力の塊がその少年から放たれる。
危険を感じたのかシグナが俺の近くへ退避した。
いつの間にか周りにエリアエルとクラウディア隊長もいる。
全員が俺のスキル範囲に入ったことを確認してロキを見た。
「ロ……キ。貴様一体……」
「カイト、残念だよ。本当に残念。こんなにも面白いおもちゃを見つけたのに手放さないといけないのが残念でもならない」
「なにをいって……」
「ねぇカイト。知っていた? 」
「なにが」
「君が最初に拾ったお金、あるじゃん? あれなんだったと思う? 」
「……」
「正解は……、君の残り寿命でした!!! パチパチ~」
「!!! 」
「君と言う価値を命に換算した時の寿命そのもの。あ~あ。売っちゃった。でも仕方ないよね。君はキルケーちゃんを売ったんだから」
「あ、あいつはっ! 」
「関係ないなんて言わせないよ。君が行ったのは立派な犯罪。でも君を罰する人がその時いなかったからね。だからボクが独断と偏見と面白半分で君の寿命を換えちゃった、テヘ♪」
「き、きさ……まぁぁぁ!!! 」
全身に鳥肌が立つ。
寿命を金に換える?
一体何をしたんだこの少年は?!
「で、残り寿命はと言うと……」
そう言いながら少年は懐に手をやった。
そして一つの袋を出し、逆さにして金貨を一枚取り出した。
「ま、まさか」
「そう、そのまさか。君の寿命は後金貨一枚分。だけどよかったね、金貨で。これがもし銀貨だったり銅貨だったりしたらどうだったのか、分かるよね? 」
それを聞きカイトの顔色が青ざめる。
二人の異様な会話、いや説明が更に続けられた。
「でね、カイト。一つ良い事を教えてあげる」
「なんだ」
「この金貨。実はボクのスキルで色んなものが付与されて金貨になっているだけなんだ」
「それはどういう」
「つまりボクという存在を介して金貨になっているだけ。元の価値は銅貨一枚にもならないんじゃないかな」
「な……ぁ」
「で何が付与されて金貨になっていると思う? 」
「あ……あぁ」
「それは――ボクのおもちゃ道具としての価値でした! はい、みんな拍手~パチパチ」
言っていることは醜悪だ。
だがその表情は純粋無垢な少年のそれ。
その異様なやりとりに警戒し見守る。
今手を出すのはまずい。何故か本能がそう訴えていた。
「じゃぁ皆で遊ぼう! このカイトを使って!!! 万能変化! 」
金貨をカイトに少年が落とす。
それは吸い込まれるようにカイトの中に入っていく。
するとドクン、ドクンと体を跳ねらせ浮かびあがる。
「な、なんだ、あれ」
「色が黒くなっていく?! 」
宙に浮いた状態でどんどんと体が変色していく。
爪が生え、一対の羽根が生え、頭に一本の角が生えた。
「魔物か?! 」
「嘘だろ。人を魔物に換えるスキル?! 」
「チチチ、ボクのスキルはそんなちゃちなスキルじゃないよ」
驚いているといつの間にか俺達の正面にロキがいた。
彼をバックにカイトがどんどんと変形していく。
止めないと!
「おっとそうはさせないよ。変身は最後までやらないと」
動こうとした俺に回し蹴りを繰り出してきた。
それをバックアップで避けてよく見る。
「……勘が鋭いね」
「君は本当に何者だい? 」
「ボクかい? ボクはロキ! それ以上でもそれ以下でもない、ただ世界を楽しみ歩く旅人さ」
嘘をつけ、と心の中で毒つきながら前を見た。
「お、完成したようだ」
ロキがくるりと回りカイトだったものを見る。
「彼の事を示す言葉がないのならばこう表現しよう。魔人『カイト』、とね」
同時にカイトの八つの目が俺達に向いた。
ここまで如何だったでしょうか?
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