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第23話 連続殺人鬼を討伐せよ! 1

 朝。食事を終えて兵舎(へいしゃ)の自室へ向かっている時、聞きなれた声が俺を呼び止めた。


「アダマ君じゃないか。うむ。丁度(ちょうど)いい。私の部屋に来(たま)え」


 振り返るとそこには兵舎の中だというのに何故か帽子を(かぶ)っているカエサル隊長がいた。

 呼び止められたということは俺に拒否権はないということか。


 それにいつもと同じように声かけられたがどこか声のトーンが低い。

 何か重要な事でも話すのだろうか。

 ならば行かないという選択肢もない。

 少しの異変を感じながらも俺は隊長について行った。


「悪いな。私の部屋には大きな椅子がないんだ。だから一先ずベットにでも腰掛けてくれ」


 カエサル隊長は俺に指示を出しクローゼットの方へ歩いていく。

 黒い上着のボタンを一つ一つ丁寧(ていねい)に外すとぷるんと(はじ)けて白いシャツが現れた。

 そそるそれに見惚(みと)れながらもカエサル隊長は上着を脱いで、クローゼットに仕舞(しま)い、長(そで)の白いシャツと黒いミニスカ軍服のみとなって俺の方へ体を向けた。


「何だ。私のこの魅惑(みわく)のボディに見惚(みと)れていたのか? 」

「……最近カエサル隊長とシグナの境界(きょうかい)曖昧(あいまい)になってきましたよ」

「私の事はクラウディアと呼んでくれと言ったはずだが……まぁおいおい慣れていけば良いか。が露出狂と同程度とは不本意だ。訂正(ていせい)を求めよう」

「ではどこが違うか教えていただいても? 」

「彼女は見られることを()とするが、私は私が認めた人間にしか体を見させないし許す気はない! (ちな)みに君ならいつでも大歓迎だ。アダマ君」

「認められているということだけは嬉しく受け取ります」

「私が誘っているのに君という人は」


 やれやれとカエサル隊長は首を振る。

 確かにカエサル隊長は魅力的だ。

 他のメンバーと比べても性格も割とまとも。

 だが……ダメだろう。


 大きく「ふぅ」と息を吐く。

 込み上げてくる欲望を振り切ってカエサル隊長に聞く。


「でどうしたのですか? 何か重要な相談事でも話すような雰囲気でしたが」

「あぁそれか」


 俺の言葉に答えながらカエサル隊長は椅子に座る。

 椅子ごとこちらに向いて脚を組み言った。


「正直これは私達の仕事ではないと思うのだが……」

「この前の出撃命令も本来の仕事ではないと思うのですが……。それ以上の厄介事で? 」


 俺が聞くと頷いた。

 厄介事か。

 調べることやダンジョン攻略など仕事は山ほどあるんだが、ここにきて厄介事か。


「実は最近中央区で連続殺人が発生しているんだ」

「連続殺人?! 」


 そ、そんな大事が起こっていたのか!


「最近と言っても本当に最近だ。君達が村へ行く前後から続いていたみたいでな」


 少し疲れた表情で隊長が続ける。


「最初は女性が。そして無差別に、老若男女問わず襲われている。ここ数日でもう二桁行ったよ」

「衛兵は何を……」

「捕らえようとした衛兵にも犠牲者が出た。それで(およ)び腰になったみたいで」

「俺達に話が回って来た、と言うことですか」


 隊長は「そうだ」と言い俺を見た。

 黒いその瞳はからは「本当に不本意だ」という感情が伝わってくる。


「この国はダンジョン都市国家と言うこともあり衛兵の練度(れんど)は低くない。それにも関わらず殺され逃げられた。相当な相手だとわかる」

「その相手に目星(めぼし)はあるのでしょうか? 」


 俺が聞くと隊長は首を横に振った。


「どのように情報を操作しているのかわからないが全くだ。実力者、ということから冒険者(くず)れが一番しっくりくるが、どこの誰かは分からない。加えるのならばどこに隠れているのかもさっぱりだ」


 両手を上げて降参のポーズをする隊長。

 腕を降ろすと溜息をついた。


「私達はダンジョン専門だ。専門外をやるにしても魔物退治が限度」

「区内で強大な魔法を使うわけにはいきませんしね」

「その通りだ。例えダンジョンで活躍しても町での対人戦闘とは勝手が違う。もしエリアエルを区内で暴れさせてみろ。どっちが犯罪者かわからなくなってしまうだろ? 」

「おっしゃる通りで」

「しかし君達に捕らえる、もしくは討伐して欲しいという上層部の考えは分かる。英雄だからと言うのもあるが、君のスキルは守りながら戦うのに(てき)しているからな」


 確かにそうだ。

 俺のスキルなら他の人を守りながら戦うことができる。

 流石に建物をエリアエルの攻撃から守ることはできないが、人的な被害を抑えることはできるだろう。


「それに……個人的に君達にやってほしくないのもある」

「どうしてですか? 」


 聞くと隊長は少し顔を下に向けながら呟くように言った。


「……相手は連続殺人鬼だ。どんな危険が君達を襲うかわからない」

「でもそれは……」

「あぁ分かっている。ダンジョンの方が危険だということは。だがな。対人戦に慣れていない部下をわざわざ危険なところへ送る隊長が……」


 と一旦止まる。

 どうしたんだ?


「いるかもしれないが、少なくとも私はそのようなことはしたくない」


 隊長がきりっとした目ではっきりとそう言った。

 強い意思を感じる言葉だ。

 少しその雰囲気に圧倒されてしまった。


 いつもふざけているが……、そうか。この人は優しい人なんだ。彼女の目を見てそう感じた。

 しかし隊長には上層部から指示が出ているはず。この依頼を受けないと彼女の立場は良くなくなるだろう。

 ならば部下としてやることは一つだな。


「隊長。俺はやります」

「! 」

「俺達にいつものように命じてください。クラウディア隊長」

「……はぁ。全く君と言う人は卑怯(ひきょう)で優しくて(たくま)しく硬い(良い)男だな」


 プイッと顔を()らしながらクラウディア隊長はそう言った。

 どこか顔が赤かったのは気のせいだろう。


 ★


「「連続殺人鬼の討伐?! 」」

「あぁ。貴君(きくん)らにそれを(めい)じる」


 作戦会議室にエリアエルとシグナが入るや(いな)や隊長が言った。

 二人が動揺(どうよう)するのは無理もないか。

 どうにか説得できれば良いんだが。


「……わたし対人戦は無理ですよ? いえ建物ごと吹き飛ばしていいのならできますが」

「私は得意かもな。(よう)は人間(だい)のゴブリンと思えばいいだろ? いや衛兵に被害が出ていることを考えるとゴブリン・ソルジャーか」

「やるのなら(おとり)くらいにしかなれませんが」


 ……。


 思ったより乗り気なようだ、と思いながらクラウディアを見る。

 すると目を開いて驚いていた。


「……てっきり拒否されると思ったのだが」

「このくらいこなせなくて何が英雄カエサル隊ですか」

「あぁそうだぜ。まぁそれに手は考えているんだろ? カエサル隊長」

「もちろんだ」

「なら心配なんかねぇな。それにいざという時はアダマがいるしな。無敵状態のアダマの範囲内に入っていりゃ傷一つ付かねぇしな」


 シグナがそう言い少し笑う。

 確かに俺の防御範囲に入っていれば傷一つ付かないな。


「大丈夫そうですね。クラウディア隊長」

「あぁ全くだ。じゃぁ作戦会議を始めよう! 」

「ちょーーーーーーーっと待ってください! 」

「「?? 」」


 作戦会議を始めようとしたらエリアエルが()って入ってきた。

 ど、どうしたんだ。

 エリアエルが俺とクラウディアの中間に立ってギロっとこちらを見上げて来た。


「隊長の事を名前呼びとはどういうことですか!!! 」

「さっきのは私も気になるな」

「ん? 気になるか? 気になるのか、エリアエル。私とアダマの中に何があったのか」

「そ、そんなことはありません! しかしっ! しかし部下と上司の間に何があったか私達も知る権利はあると思います! 」

「良いだろう。私とアダマの淫靡(いんび)な日々を、んんっ! 教えようじゃないか」

「記憶を捏造(ねつぞう)しないでください!!! 」


 はぁ、早く作戦会議が始まらないだろうか。

ここまで如何だったでしょうか?


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