第18話 爵位授与と隊長の秘密
「爵位授与の日程が決まった」
作戦会議室でカエサル隊長が俺達三人にそう言った。
何とか報告書を書き終えた俺は、その後死者のダンジョンで魔物を狩りながら財宝の運搬を行っていた。
踏破し危険度が大きく下がったダンジョンをするすると進み、中を軍関係者に案内していたのだが、ある日カエサル隊長に呼び出された。
そして俺の爵位授与の日を告げたのであった。
「何故わたし達も呼び出されたのですか? 」
俺の爵位授与の呼び出しのはずである。だからエリアエルの疑問はもっともだ。
「それは死者のダンジョンを攻略した者としてエリアエルとシグナも昇爵するからだ」
「え?! 」
「ほぉ」
「エリアエル。何を驚く? 誰も、どの隊も攻略できなかったダンジョンをたった三人で攻略したんだ。むしろ昇爵しない方がおかしい」
隊長が機嫌良さそうにそう言った。
爵位の事はよくわからないが、確かに何かしら褒美があってもおかしくはない。もう爵位を持っている二人にとっての褒美は昇爵なのだろう。
「ではここで爵位を貰えるということで? 」
俺が聞くとカエサル隊長が微妙そうな顔をして手に頭をやった。
何か変な事でも聞いたか?
的外れなことを言ったのではないかと少し不安になりながらも返事を待っていると、カエサル隊長が苦々しい顔で俺に言う。
「爵位授与と昇爵は王城で行われる」
「「え?! 」」
「それはどういう……」
二人の反応からこれは異例な事であるのがわかる。
聞いてみると大きく溜息をついて俺に向いた。
「通常騎士爵程度ならば王城で行うような大それたことはしない」
それを聞き少し顔が引き攣るのを感じた。
俺が貰うのって騎士爵じゃなかったっけ?!
何か大事になっていないか?!
「アダマ、エリアエル、シグナ。君達は男爵になる」
「え? 」
「うそ?! 」
「はは。まじか」
両隣から驚きの声が上がった。
ちらりとエリアエルをみると少しふらついている。シグナの様子を見たら「面白そうなことが起こった」というような表情をしていた。
そんな二人を見て隊長にしては珍しい疲れた表情で彼女達に加えて説明する。
「……エリアエルとシグナは女男爵か。まぁ女性の男爵と同程度だ。よかったな。これで晴れて名のある貴族となれたわけだ。求婚がたくさん来るぞ? 」
そう言う隊長の言葉にふと思い、聞いてみた。
「カエサル隊長。俺が貰う男爵というのはどの程度の爵位になるのですか? 」
「む? あぁそうか。説明をしていなかったな。こちらの落ち度だ」
「いえ」
「男爵はだな。『準』と名のつくものを除けば下から二番目になる」
そう言いながらカエサル隊長は説明してくれた。
爵位は上から王爵、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵とあるらしい。
付け加えて領地持ちの貴族は少ないらしい。
言われてみれば納得の理由だが単に国土面積が狭いから。なのでほとんどが文官か武官として働いているとのこと。
つい最近まで貴族とはほぼ無関係な生活を送っていたからよくわからない。
貴族にとって男爵に任命されることがそこまで大事なのだろうか?
「大事だよ。いや違うな。男爵程度の爵位授与を王城で行う事が大事だよ」
大事だったみたいだ。
「上に報告した私も今回ばかりは驚いた。君達の昇爵は予想できたが、まさか王城で授与式を行うとは」
「「「式? 」」」
「あぁ。愛する我がカエサル隊長の諸君。喜び給え。君達の爵位授与を大々的に行うそうだ」
にやりといたずらっぽく笑みを作りながらそう言った。
し、式?!
いや待て。そこまで大きな式じゃないかもしれない。
「……因みにどのような式を行うのでしょうか? 」
「それは当日のお楽しみだ」
嫌な予感しかしない。
結局その日は解散となり俺達は準備を始めた。
式典なんて出たことがない。
先に貰った報奨金を使ってエリアエル達と共に中央区で服を揃えて当日を迎えた。
★
当日。俺達は全員黒い軍服に身を纏い大きな門の前に立っていた。
先日用意させられた服はこの後のパーティー用らしい。
俺の体はとても大きい。よって特注となったのだが、間に合ってほっとしている。
「独立ダンジョン攻略部隊カエサル隊長の御入場!!! 」
扉の向こうから聞いたことのない音が聞こえてくる。
音楽と言うやつだろうか。
音楽なんて聞いたことないからわからないが。
しかし今の状況は至って平凡な農家の息子には即死ものだ。
紅く綺麗な絨毯に輝く魔道具の光。
説明によると今「ギギギ」と開けられている大きな門の先は謁見の間と言うらしい。
チラリと隣を見る。
今回ばかりは変態代表のエリアエルとシグナも流石に緊張しているようだ。服の上から震えているのがわかる。
しかしカエサル隊長は堂々としている。
慣れているのだろうか。
他人を分析しながら現実逃避をしたいたのだが、扉が完全に開き現実に戻される。
そしてまず隊長が動き出し、俺達もついて行った。
隊長の真似をしながら片膝をつく。
ざわつく周りが静かになると「面を上げよ」と声がかかった。
頭を上げるとそこには王冠を被った一人の男性が見える。
その隣には豪華なドレスに身を纏った女性と若々しい男性がもう一人。
ぼーっと見ていると壁際からハキハキとした声で男性が俺達の功績を読み上げる。
「独立ダンジョン攻略部隊隊員、『エリアエル・マーリン騎士爵』・『シグナ・ルーン騎士爵』及び……『アダマ』。この者達により難関ダンジョン『死者のダンジョン』が踏破された。これにより我が国が得た、そしてこれから得られる恩恵は多く——」
長い。そして回りくどい。
慣れない言葉に眠くなる。
流石に寝るのはまずいと思い我慢していると言葉が途切れる。
「――であるからにして褒章を授けることが決定した」
読み上げていた人が包めて仕舞う。
彼の目を追うと王様の方を向いた。
すると王様は席を立ち、俺達を見下ろし告げる。
「以上の功績を称えエリアエル・マーリン騎士爵はマーリン女男爵へ、シグナ・ルーン騎士爵はルーン女男爵への昇爵を。そして……兵士アダマはこれより『アダマ・タイト男爵』を名乗る事を許可する」
カツン、と持っていた杖で床を突くと隊長が頭を下げた。
エリアエルとシグナが「ありがたき幸せ」と言うので、俺もそれに倣い「ありがたき幸せ」と言って頭を下げた。
爵位の授与も終わった。これで終わりか。
そう思ったが、違ったようだ。
「なお本式典と同時に『死者のダンジョン』踏破を国内に発表する! 」
ん?
王様の言葉に少し顔を上げてしまった。
が王様はそれに気を止めず言葉を続けた。
「無論踏破者の名前も公表するが……。宰相、彼女達には相応の二つ名があってもいいと思わぬか? 」
「……陛下のおっしゃる通りかと」
宰相と呼ばれた、さっきまで功績を読み上げていた人が答えた。
だがどこか疲れたような口ぶりだ。
しかし二つ名か。
そう言えばその昔憧れていたっけ、と思いながらも少しドキドキしながら王様の言葉を待つ。
「ならば良し。ではマーリン女男爵」
「はっ! 」
「そなたは今日から戦略級魔導士を名乗るが良い」
「ありがたき幸せ」
おおお。かっこいい!
これならば期待できそうだ。
「シグナ・ルーン女男爵」
「はっ! 」
「そなたは今日から救世の戦乙女と名乗るが良い」
「ありがたき幸せ」
……少し変な方向に向かってないか?
「アダマ・タイト男爵」
「は、はっ! 」
「そなたは……。ふむそうだな。報告に上がっていた戦い方を考慮するのならば、不滅の守護者が良いか。いやクラウディア姫から生き残ったこと考えるのならば生き残った男爵も捨てがたい」
ん~、と顎をさすりながら悩んでいる。
まさかと思うが今考えていないか? この人。
それにさっき聞き捨てならない単語が聞こえてきたがするんだが。
「ふみ。国内には不滅の守護者と公表しよう」
「あ、ありがたき幸せ」
なんだかありがたくない悩まれ方だった。
しかし「国内には」?
まさかと思うが違う所で生き残った男爵とかで呼ばれるんじゃないだろうな?!
「そして人喰らい、ダンジョン都市国家『カエサル王国』クラウディア・カエサル第一王女」
「「「?! 」」」
「これからも我が国で彼らを導いてほしい」
「お任せを」
「よって新しい二つ名をと思うのだが、どうだろうか? 」
「是非お聞きしたく存じます」
前の二つ名が余程気に入らなかったのかカエサル隊長の言葉に少し刺々しさを感じた。
というか王女?!
どういう——。
「では、こほん。黒の指揮姫というのはどうだろうか」
「ふふ。ありがたくその二つ名を頂戴いたします」
「納得してもらえたようで何より」
王様は大きく頷き宰相を見る。
疲れた顔をしている宰相が顔を引き締め声を張り上げた。
「ではこれにて式典を閉幕致します。これより晩餐となりますので各人移動を」
こうして俺達の爵位授与式が終わった。
色々な謎を残して。
ここまで如何だったでしょうか?
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