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第8話 死者のダンジョン 2 イレギュラー

「……十階層」

「ボス部屋だな」

「あっけなかったですね」


 そう言うエリアエルに俺とシグナはジト目を送った。

 すると彼女は慌てて弁明(べんめい)を始める。


「し、仕方ないじゃないですか。魔物があんなにもいたのですから」

「限度って知ってるか? 」

「ぐうぅ……」


 俺が少し()めると彼女は押し黙る。


 五階層を乗り越えて魔法で大量の魔物を倒したエリアエル。

 味を()めた彼女は六階層以降も魔法を使って無双して行った。

 本来ならば、例え独立ダンジョン攻略部隊でも苦戦するようなアンデットの上位種。

 それを力でごり押ししてここにいる。


「喜ぶべきか、悲しむべきか」

「喜ぶべきです! 」


 勢いよく近寄りそう言った。


「だが俺は殆ど何もしていないんだが」

「そ、それは気のせいです。『超硬化』でわたし達を守ってくれていましたし、何より盾役の活躍(かつやく)というのならわたし達が無事なのが何よりの成果でしょう! 」

「魔法を打ち込み過ぎていたエリアエルの意見を肯定する訳じゃないが、スキル以外にもアダマの体術は見張るものがあった。本当に『体術』スキルを持っていないのか? 」

「ああ。馬車の中で言った通りそれは昨日確認した」

「にわかに信じがたい」


 シグナはそう言いながら顔を引き()める。

 首を横に向けると俺もつられてそっちを見る。

 骸骨(がいこつ)が幾つも()め込まれた禍々(まがまが)しい扉が俺達が入るのを拒んでいた。


「カエサル隊長からの情報によるとボスはスケルトン・ジェネラルらしいな」

「そうですね。群れでないのが残念です」

「スケルトン・ジェネラルの群れなんて嫌だぞ」


 群れならば最上位の司令官は誰だよ、と心の中でツッコむ俺。

 将軍の意味ないな、と思いながらも情報を確認する。


「感じなかったが、出て来る魔物は他のダンジョンで出現する魔物よりもかなり強い」

「うぐ」

「よってスケルトン・ジェネラルも一般で知られているよりも(はる)かに強いと思われる。それこそ変異種やネームドと呼ばれる魔物くらいには」

「スケルトン・ジェネラルのネームドクラスか。斬り合いがありそうだ」

「……今回は俺に任せてくれ」


 俺が言うと不満げな目を二人が向けて来た。

 だがこればかりは(ゆず)るわけにいかない。


「これは俺に()された試練のようなもの。もし危なかったら助けてほしいが、それまでは手を出さないでくれ」

「だがアダマの実力は証明されたぞ? 」

「いや必要なのは実力じゃない。結果だ」


 強く言い拳を握る。


「ここに来るまで殆どエリアエルの魔法頼み。せめて「『死のダンジョン』のスケルトン・ジェネラルを単独で倒した」という実績が欲しい」

「わかったが……攻撃手段はあるのか? 」

「……拳一つでやってみる。後は(から)め手も使う予定だ」

「絡め手? 」


 シグナが聞いて来る。

 それに頷きながらも「そんな大層な物じゃないが」と言いながら応じた。


「まぁ関節を狙ったり足払いをしたり、だ。案外魔物はそう言うのに弱い。対人なら誰でも気を付けるが、恐らく魔物達はそう言った訓練をしないのだろう」

「……魔物に向かって足払いをかける人なんて聞いたことありません」

「私もだ」


 (あき)れたような口調で二人が言う。

 しかしわかってくれたようだ。

 (うなず)きながらシグナが扉に手をやった。


「さぁ行くぞ? 」


 その言葉に続いて俺も手をやり頷いた。

 エリアエルが扉に手を付けた所で、三人で扉を押し開けた。


 ★


 ギギギと扉が開いていく。

 中に入ると洞窟(どうくつ)のような空洞(くうどう)に出た。


「まだ何もいないな」


 シグナが索敵(さくてき)をしながら先に進む。

 両脇には蝋燭(ろうそく)のような物が置いてあり、彼女が進むにつれて灯火(ともしび)が部屋を明るくする。

 ()った演出(えんしゅつ)だ、と思いながらもシグナに続く。

 そしてシグナが手を上げた。


「来るぞ」


 シグナの言葉と共に洞窟の奥から「カシャン、カシャン」と音が鳴る。

 スケルトン・ジェネラルの防具の音だろう。

 同時に『範囲防御』をきり、『超硬化』を発動させる。

 少し緊張しているとその姿が現れた。


「kakakakakakaka......」


 俺は半身になって拳を構えてスケルトン・ジェネラルと対峙(たいじ)する。

 大きさは普通のスケルトンよりも大きい。

 身長は俺と同じくらいで騎士のような(かぶと)(かぶ)り鎧を着ていた。装備は剣と大盾を両手にひとつずつ。下手な冒険者の装備よりも高価そうだ。


 相手が「kaka」と笑い声のようなものを止める。

 俺を敵と認識したようだ。

 一歩前に出る。

 相手も前に出て俺に向かって剣を振り上げた瞬間拳を突き出した。


 シュパゴン!!!!


 スケルトン・ジェネラルは吹き飛び壁にぶつかった。

 そしてだらりとして起き上がってこない。


「ふぇ? 」


 思わず言葉が漏れてしまったが……え?

 どういうこと?


「……一撃で倒してしまったようだな」

「アダマは人の事は言えませんね」

「え? いや、え? 」


 何度見ても起き上がってこない。


「そのスケルトン・ジェネラルからは何も感じないな」


 シグナがスキルを発動させて確認したのだろうが……これで終わり?


「「ようこそ。非常識人(わたし達)の世界へ」」


 俺はがくりと項垂(うなだ)れた。


 ★


 嬉しくない世界への扉を開けた後、俺はスケルトン・ジェネラルから魔石を取り出した。

 すると骨は崩れ盾・鎧・剣が残る。

 それをエリアエルがアイテムバックに詰め込み、彼女は次の階層への階段を見つけた。

 だが——。


「帰還用の転移魔法陣はどこでしょうか? 」

「フロアボスを倒したら出るはずだが」

「見当たらないな」


 右に左に探してみる。

 だが何も見つからない。


「イレギュラーか」

「なら仕方ない」


 シグナが自分の帰還石を取り出した。

 こういうことは稀にある。

 自然にできたものだからイレギュラーの発生は仕方がないとはいえ困るものは困る。

 嘆息(たんそく)し「あぁ勿体(もったい)ない」と思いながらもシグナが帰還石を地面にたたきつけた。


 パリン!


 しかし何も起こらない。


「!!! 発動しない?! 」

「嘘だろ?! 」


 驚き俺も帰還石を手に取りたたき割る。

 しかし何も起こらない。

 続けてエリアエルも叩き割るが三つとも発動しなかった。


「……不良品か? 」

「いやこれはダンジョン自体に異常状態が起こっているんじゃないか? 」


 俺が言うと二人が見上げてきた。


「出現しない帰還用の転移魔法陣に帰還石の不発動。魔道具自体の不備(ふび)と言うよりもダンジョンで何かが起こっていると考えた方が良い」

「……冷静だな」

「冷静じゃない。正直(あせ)っている」


 そう。かなり焦っている。

 ここは『死者のダンジョン』。

 帰還用の転移魔法陣が無ければ、帰還石も使えない。

 そしてここから先は未知の領域。

 つまり——。


「俺達は『死者のダンジョン』を攻略しないと出られない可能性が出て来たということだ」

ここまで如何だったでしょうか?


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