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エリアエル・マーリンとシグナ・ルーン

「新しい人が入りましたね、シグナ」

「そうだな。隊長好みしそうな男だった」


 エリアエル・マーリンとシグナ・ルーンは、エリアエルの部屋で顔を合わせていた。

 話題はもちろん今日入って来たアダマの話。

 アダマのおかげでダンジョンに入れるようになった二人だが、エリアエルは少し心配していた。


「これからその人とダンジョンに潜る訳ですが……大丈夫ですか? 」

「何がだ? 」

「いえ。それほどまでに挑発的な衣装をしているので」

「大丈夫だろう」

「……何故そう思うので? 」

「直感だ」


 シグナがそう言うと深く溜息(ためいき)をつくエリアエル。

 彼女はシグナをみて、自分を見た。

 再度溜息をついてシグナに視線をやる。


 小さく可愛らしいエリアエルとは(こと)なりシグナは高身長に豊満な胸を持つ大人な女性。細い手足に健康的な色の肌に加えて男性を誘惑しているとしか思えない装備。

 歳は近いのになんでんこんなに差があるのかとエリアエルは内心(なげ)くもどうにもならない事はよく知っている。


 そんな彼女は友人であるシグナを少し心配している。

 体が大きく力強そうに見えるアダマ。

 今日入って来たばかりと言うのもあるが、山賊と間違えそうな顔立ちを見ると仲間とわかっていても警戒してしまうのは仕方ない。

 しかしながら心配されている当の本人はどこか楽観的だった。


「直感もそうだが……。彼、えぇっと……」

「アダマ」

「そうアダマだ。奴は攻撃系や力を増幅(ぞうふく)させるようなスキルを持っていないんだろ? 」

「隊長からは聞いてませんね」

「ないのであれば力で私が負けることはない」

「『剛腕』のスキルですか」

「加えるのなら『回避』や『瞬歩』とかもあるぞ? 」


 そう言いニカっと笑みを向けるシグナ。

 いざ襲われた時は逃げることができると自信満々に友人エリアエルに言い、安心させる。


 彼女シグナは超速で()り出す剣撃が持ち味の剣士だ。

 ビキニアーマーは彼女の趣味(しゅみ)というのもあるが、単に身軽にするだけという意味も込められている。


 どんなに強い攻撃も当たらなければ意味がない。


 それが彼女の信条(しんじょう)である。

 当たらない事が前提(ぜんてい)なのでスキル構成も速度上昇系が多い。加えて敵を一撃で(ほうむ)()る『剣術』スキルも有している。

 見た目や露出(へき)を除けば優秀な剣士なのだ。


「まぁそれを引ても、多分だが積極的に何かするような感じではない気がするんだ」

「顔は怖いですが……確かに変な人ではなさそうですね」


 不敵(ふてき)に笑うシグナに同意するエリアエル。

 警戒しているものの彼女のアダマへの印象は悪くなかったようだ。


「だが良かった。これでダンジョン攻略に参戦できる」

「アダマの『範囲防御』のおかげです! 」


 好戦的な笑みを浮かべるシグナにバッと顔を向けるエリアエル。

 さっきまでのアダマに対する警戒心はどこへやら。

 目を輝かせてシグナの方にぐいぐい近寄るエリアエル。


「このままだとわたし達は『力だけの無能集団』で終わっていたでしょう」


 それはエリアエルのせいでは、とシグナは思うも口に出さない。


「しかし! ドラゴンの攻撃すら痛みを感じないその体に、ダメージを身代わりになってくれる範囲防御!!! これで、これで範囲魔法を打ち放題です!!! 」

「……少しは加減してやれよ」

(いな)! 否ですよ! シグナ! 範囲魔法は全力で繰り出し大勢いる相手を一撃で仕留(しと)める爽快(そうかい)感がたまらないのです。手加減などありえません! 」


 興奮のあまり口調が変わるエリアエルを「また始まった」と苦笑いを浮かべながら彼女の話を聞くシグナ。


 エリアエルのこのフェチズムをシグナは良く知っている。

 出会って長いわけではないが、よく聞かされたからだ。

 よって彼女がどんな凶悪な範囲魔法を放てるのかも知っている。

 今までだと巻き添えを喰らうためダンジョンに潜るどころか訓練すらも遠くから見ているだけだったが、アダマの出現により大きく状況が変わった。

 それを内心嬉しく思いながらもアダマの心配をするシグナ。

 一人熱弁(ねつべん)しているエリアエルだが、興奮余ったのかシグナにも矛先(ほこさき)が向いた。


「――それにシグナ。範囲防御で守られているということはわたしの魔法の中を突っ込んで行き最前線の強敵と戦えるということですよ」

「それは良い」


 その言葉に好戦的な表情を浮かべるシグナ。


 今までシグナはエリアエルの範囲魔法の巻き添えを喰らうということでダンジョンに潜れなかった。

 高位の剣士である彼女からすればストレスものであったに違いない。


 この独立ダンジョン攻略部隊がダンジョンに潜る時は基本的に――冒険者で言う所の一パーティー単位。

 これは人材不足が理由ではなく「ケチることなく帰還石が使えること」や「個人の能力が非常に突出していること」が理由である。


 通常他の軍が攻略のためにダンジョンへ向かう時は補給部隊などを組んでキャンプを作りながら時間をかけて大人数で先に進む。

 独立部隊はその必要がない。このことから部隊全体の能力の高さが(うかが)える。

 また新設(しんせつ)されたにも関わらず、高価な帰還石を湯水(ゆみず)のように使える程の資金を回してくれるということは独立部隊が相応(そうおう)の功績を上げているということでもある。


 そんな部隊の一員であるシグナだがエリアエルと組むのではなく他の隊と共にダンジョンに潜るのも一つだった。しかし彼女はそれを拒んだ。


 隊を超えて人材が()き来することはままある。

 しかしながら、——一応組める相手がいるのに他の隊と合同攻略するのは不誠実(せいじつ)

 露出狂だが、シグナはどこか真面目なのだ。


「明日が楽しみですね」

「そういや持っていくもん何が必要だったっけか」

「それは――」


 二人で話を進め翌日ダンジョンに潜るために準備を始めるのであった。


 ★


 シグナはエリアエルとの準備を終えて兵舎(へいしゃ)に戻る。

 受付の武官と軽く話して明日の事を伝えた。


「あの書類冗談(じょうだん)じゃなかったのですか?! 」


 恐らくカエサル隊長がダンジョン探索の申請書でも出したのだろうと考えるも、驚く武官の女性に苦笑いで返して肯定する。


「……あの人はそこまでの逸材(いつざい)でしたか」

「少なくとも一日で()めることにはならなかったな」

「よかったです。カエサル隊は火力だけを見ると独立部隊最強ですから、これ以上遊ばせるわけにもいかなかったので」

「……もしかして解体の話でも出てたか? 」


 シグナが聞くと気まずそうに頷く女武官。


「解体して……、あぁ他の隊へ再配置か」

「そう言う所です。残念ですが――」

「言わなくてもわかってる。エリアエルの事だろ? 」

「ええ。流石に味方を巻き()えにするのは看過(かんか)できないので」

「そうか。だが心配の必要はなくなった」


 そう言い受付と話を進めていくシグマ。

 そのまま彼女は女武官と別れて兵舎を上がった。


 そこに一人の魔法使いがいたことに気付かず。

ここまで如何だったでしょうか?


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