5話 龍誕祭(エミス)
その日王国はいつもにも増してにぎわっていた。
龍誕祭である。
その昔。生まれた龍の子はその身に様々な祝福を与えられて生まれてきた。その祝福は人々にも零れ落ち、人と竜種の交わるこの地に注がれたそうだ。その感謝の念を乗せて行われるのが...
「...この龍誕祭ってわけだ!!」
「先生、なんか楽しそうね...」
「君は楽しくないのか?...あーもしかして隣の席の子の誕生日の方がよかったりするぅ?」
「はぁ?私の隣には誰もいないわ...って。あなた!今日が誕生日だったの!?もぉ。言ってよぉ...って!べべっ別にそんなんじゃないんだからね!」
「スフィアどのー。祭でテンション上がっているのはわかるが授業中くらいは控えてくれないかー。」
「す、すいません...」
「さぁ!気を取り直して...」
「これで今日の授業は終わりだ。」
「先生!今日は一時限だけなんですか?」
「あぁ。なんせ今日は祭だからな。ああそうだ。スぅフィぃアぁさぁんちょっと職員室に来ていただけるかなぁ?」
楽しい一日になりそうだ。
さてと今年もじいちゃんの都合で俺もいけないんだろうなぁ。
「いいぞ。せっかくだ、ともだちといっしょに行ってきなさい。」
「いいの!?」
「え?私とお祭り?(いいわよ行ってあげる。)やったぁ!まさかそっちから誘ってくれるなんて!」
「え?」
「ん?」
エミスが赤くなってしまい、聞いていなかったふりをして何とかセーフだったのは別のお話。
「今日のエミスなんか変じゃないか?なんていうか。俺のことになると急にテンション上がるし。」
「べ、別にそんなことないわよ。」
―10年前
「きゃぁぁぁぁ!」
「何?あっ!」
見るとそこには血まみれの母とウルフラスと戦う父の姿があった。
「うわぁぁぁ」父も数十分持ちこたえたがウルフの上位種だそうそう勝てるものではない。
「だめ...いや...」
―ザン
「大丈夫かい?」うなずくや否やその少年は母と父の方に歩み寄り、回復魔法をかけた。
「ごめんね。もう少し早く来れたら怖い思いをせずに済んだかもしれないのに。」
「ううんそんなことない。あなた強いのね!ありがとう!」
「それじゃあ行くよ」「あっ待って」
そしてそのままその少年は去ってしまった。
―三日前
「やっぱりゼノスってあのときのあの子よね。強いしカッコいいし。あれ?なんだか熱いわねなんでだろ。」
「恋」
「へ!?」
「恋しているからじゃない?」
「もう!お母さん、からかわないでよー」
「ふふふ。できたら婿入りしてもらってねー。新しく生まれたこの子に負担かけたくないものー
ね?ルイ?」
「お母さん溺愛しすぎ。嫉妬するよ。」
『あはははは』
(なんてことがあったなんて!絶対できない!もうお母さんのせいだ!それまではクールにできていたのに!)
「...ミス...エミス!」
「へ!?なっなに!?」「だから、チィコアスィかブアニラアスィどっちがいいの?」
「あっぁあ。ブアニラがいい。」
暑いこの時期はアスィが一番だ。
To be continued