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スリーシスターズ  作者: Shane
3/25

セレクション

バスケ部ながら陸上の大会で素晴らしい走りを見せた3人の素質にほれ込み、藤森がセレクションに誘う。ライバルがいる中、無事に合格できるのか。

 ある晴れた日に小向高校に藤森がやってきて3人と面談した。


藤森「千葉で滝野川大の練習会に参加するかい?」

さくら「うん、行く行く」

藤森「スパイクはあるのかい?」

さくら「ないです」

陽菜「私も」

七海「私もだし。お金ないし」

藤森「安いのでもいいから、あったほうがいいぞ」


 翌日、3人は近所のスポーツ用品店に行った。


七海「えーっ、いちまんはっせんきゅうやくえん⁈」

さくら「むりむりむり」

陽菜「ほかのにしよ」

陽菜「これ一番安いよ」

さくら「9800円、うーん」

七海「色もデザインもダサいね」

さくら「しょうがないよ、うちら貧乏だから」

七海「大学にいけるかもしれないから、先行投資だよ」

陽菜「お小遣いみんな使っちゃったよ、えーん」


 練習会には、大学の部員の他にゲストで20人くらい参加していた。


「今日はよく来てくれました。アップした後にドリルやって、それから100のタイムトライアルをします」


 ドリルが始まった。ゴムチューブを使ったももあげ、かかとひきつけ、ミニハードル走。


七海「うぉー、なにこれ、きっつ」

「もっと素早く!」

さくら「はぁ?」


 そしてタイムトライアル。


「3人ずつ走ってもらいます。1組目は七海さんと、大久保さんと高杉さん」

七海「えっー、いきなり私?」


パァーーン! ダッ、ダッ、ダッ。 

 七海はスタートで遅れたものの一位でゴール

「12秒2!」


「3組は松山さんと、さくらさん、乃木さん」

パァーン! ダッダッダッ。

 さくらはスタートから先頭にたちそのままゴール。

「11秒9!」


「5組は山縣さんと、桐野さんと、陽菜さん」

 パァーン! ダッダッダッ。

 競り合って3位でゴール。

「12秒3!」


「お疲れ様でした。今日はここまでです」

さくら「マジ疲れた」

陽菜「陸上なんかきらいだよ」

七海「みんは速えぇ。ありえねー」


▽数日後


藤森「こないだはお疲れ様。今日は良い知らせだぞ」

さくら「えっー、何?」

陽菜「緊張する」

藤森「ズバリ、3人ともうちの大学に来てもらいたい」

陽菜「うそっー」

さくら「冗談は顔だけにしてよ」

七海「うちらを喜ばそうとからかってるんじゃないの」

藤森「イヤイヤ、マジだよ」

七海「だって、セレクションでうちらより速いの何人もいたじゃん」

藤森「確かに、君たちのタイムは上位5名には入っていなかった」

「でも、走り方もロクに知らずにあのスパイクであそこまで走れるのは、もしかしたら将来大成するかもしれないと判断したんだ」

さくら「うちら3人ともですか」

藤森「ああ」

七海「貧乏でかわいそうだからじゃなくて?」

藤森「それはない。逆にハングリー精神があるだろうし、道具も大事にするだろう」

七海「そりゃあもちろん、超大事にするよね」

陽菜「うん、絶対する!」

さくら「あの、私、保育士の資格が欲しいんです。将来施設で働きたくて」

藤森「大丈夫。短大で保育科があるから。普通は受け入れないけど、特別に許可もらったよ」

さくら「信じられない。夢みたい」

藤森「その代わり、勉強と練習の両方こなさないといけないよ」



 数日前、藤森は滝野川大の学長である石橋に女子陸上部に入れる5名の特待生について相談していた。


石橋「藤森君、今回は3名が児童養護施設の子なのか」

藤森「ええ、はい。いけませんですか...ね」

石橋「いいじゃないか!! よく見つけてきた」

藤森の肩をポンっとたたいた。

藤森「朝倉さんが推薦してくださって」

石橋「朝倉? まぁ、誰でも良い、いい人選だよ今年は」

藤森「でもタイムはまだまだです」

石橋「そこは君が鍛えてあげてくれたまえ。プロコーチの腕前の見せどころだろう」

藤森「はい。でも学長にそんなに褒められるとは思いませんでした。むしろ叱られるとばかり」

石橋「藤森君。甘いな。ウチのようなFラン大が全国で知られるようになったのはなぜだい?」

藤森「えっ、ああ、駅伝ですね」

石橋「誰を連れてきたから強くなったのかね?」

藤森「えっと、ケニア人留学生です」

石橋「そうだ。ケニア人は駅伝を強くしてくれた」

藤森「彼女たちもですか?」

石橋「そうだ。もし1人でも全国区になってみい、マスコミが騒ぐだろ、滝野川大の児童養護出身の子がって」

藤森「えっ、ああ、確かに」

石橋「駅伝以外にも短距離でも話題にのぼれば、さらにウチが有名になって、志願者も増える。いい広告になる!フッ」

藤森「.....3人ともですか」

石橋「おいおい、素人連れてきてそんなに甘くないだろう。1人でもビッグになってくれればいい。上手くいかない子は辞めてもらってもいい。それがビジネスだ!」

藤森「そっ、そんな」

石橋「学費免除で寮費も払って欲しいなんて、ケニア人と変わらんじゃないか。生活のためにどんなキツイ練習でもこなすんじゃないか。ワッハッハ!!」

藤森「くっ!」


藤森は怒りをグッとこらえた。


つづく


◎登場人物紹介

中川さくら/さくちん 158cm あねご

桜井 陽菜/はるはる 175cm 物静かな美人

田原七海/みーなな 166cm 知恵袋

藤森健次郎  滝野川大監督 元世界陸上リレーメンバー

石橋 滝野川大学学長



無事に3人の入学を決めた藤森だが、学長の石橋の腹黒さを目の当たりにする。

3人は高校の卒業を控え進路を決めていく。

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