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8バッハ バハムートちゃん第1回トップ会談とリア充

 暖かな日差しが入るカフェの窓際で、バハムートちゃんはでぷりぷりしていた。 原因は目の前に座る期待の新人、元精獣のイフリートである。

子分ができたのを自慢しようと連れ立って商店街まで行ったはいいが、店のおばちゃん達に素早く回り込まれイフリートにやたら色めきたっていたのが非常に面白くなかったので、早々に撤収した。 おかげでクシヤキにありつけなかった。 おのれと小僧め──と、ひと睨みする。

「とことで旦那、あの魔導士は何モノなんです?」

 イフリートその一言を皮切りに、第1回・精獣(元)トップクラス会談が開幕したのであった─────

「うむ?」

「あんなすごい奴いたんすね〜 ちょっとズル入ってるんじゃないんすかね?チーターっすかね。 マジありえねーっすよありゃ」

 その時を思い出してか、遠くを見る様にして、どこか他人事の様に話す。

「お主、やけにあっさりしておるな。悔しくはないのか?」

「イヤイヤイヤ、ありゃ無理っすわ。 ……そりゃあ、まぁ悔しいけど、戦ってる最中もまるで勝てる気しなかったしな──── 何よりも旦那がやられた相手っすよ? このオレが勝てる通りないっしょ」

 といいながら、ずいっとバハムートちゃんに詰め寄る様に乗り出す。

「でも、旦那の事だから、かなりいいとこまでいったんじゃないっすか?」

 目をキラキラさせながらなんて事を聞くのだ此奴───とバハムートちゃんは黒歴史を思い出し、一瞬苦々しい顔をした。

「……う、うむ、まぁ……悪くはなかった、かな………」

「うっひゃ───! 流石旦那っすね〜〜〜オレなんかフルボッコだったって言うのに、やっぱすげーよなぁ、かっけーなー! よっ!流石旦那!!精獣最恐!!!」

 我もフルボッコだったぞ……とはとても言えず、羨望の眼差しに対して生温い微笑みを返しながら、持ち上げられても全く嬉しくない事もあるのだな、とバハムートちゃんは高速ラーニングした。

「……それにしてもお主、以前はそんな物言いしてなくなかったか?」

「ん? 確かに言われればそうっすね。 まぁいいっすよ」

 軽かった。

「随分その身体に馴染んでるな。 我なんか結構時間かかったぞ。」 

 イフリートの順応の早さにあきれ顔である。 我はむしろ未だに馴染んでおらんわ……と思いつつ、運ばれてきたばかりの目の前のイチゴパフェをひとくちパクッと口に入れては、それは幸せそうに恍惚の笑顔を浮かべる───充分馴染んでいた。

「まぁ、なってしまったもんは仕方ないっすよ〜〜」

 チラとバハムートちゃんを見る。

──これ見せられたらな〜むしろこの姿でありがとうってなるよな〜。

 とても旦那には聞かせられない言葉である。 その旦那はほっぺたにクリームをつけながら満面の笑みを浮かべていて、それをイフリートは微笑ましく見ている。

──さて、と。

 その言葉を合図かの様にス───ッとイフリートの表情が変わる。 目の前のバハムートちゃんはパフェに夢中で気付いてない。

──数は2、か。 場所は解ってるが、こっちからは死角で振り向かないとわからない。 さっきからチラチラこっちを盗み見しやがって、このオレ様が気付かないとでも思ったか? イフリート様もナメられたものだな───まぁこの姿じゃ仕方ねえか。 ……そうとも限らないな───もしオレ達の正体を知ってるようで、害なすようなら黙ってもらおうか、オレ様のやり方でな───

 人類に凶暴と恐れられた紅蓮の精獣だった頃の本能が垣間見た様な恐ろしい含み顔を一瞬だけ僅かに、誰にも気づかれる事なく覗かせた。

──御拝顔させてもらおうとするかな───

 心の中で嫌味を言いながら視線の方に鋭く顔を向ける。まるで獲物でも狩るかのように─────可愛らしい女子が2人いた。

──あれぇ?

 思っていたのとちょっと───かなり違くてイフリートは一瞬戸惑った。 バハムートちゃんは真ん中のアイスに突入した。目をキラキラさせてこっちには目もくれない。 

 女子達は視線が合うとキャ──と色めきたった。

 イフリートが手をやぁって上げるとキャ────! 

 ニコッと笑うとキャ──キャ──────!! 

 ウインクをバチっとしたらギャ──────────!!!であった。

──な〜んだ、よかった。 と、イフリートは胸を撫で下ろした。

 

 バハムートちゃんは最後の難関であるパフェグラスの1番下の細長いところにスプーンを必死に何度もカチャカチャしながらも、なんとかキレイに平らげた。 達成感が胸に広がった。

──イチゴパフェか。これも悪くないぞ! クシヤキとは全く違ううまさで溢れている。 実に満足したぞ!!

 顔にいっぱいクリームつけながらおまたせと言わんばかりにイフリートを見る──────いなかった。

 あれ?あれ?と店内をキョロキョロ探してると、窓の方からコンコンと音が鳴る。 外にイフリートがいた。 その両側には女子たちがいて、それぞれの肩に腕を回している。

 旦那、サーセン……とでも言わんばかりに肩に回した手を軽く上げ、そのこ達と悠然と目の前から消えていった。 そこには鬼の様な形相をしたバハムートちゃん1人が取り残されたのであった。


───こうして第1回トップクラス会談は終幕した。 忌々しく不愉快な事で〆るのは悔しいので、イチゴパフェの素晴らしさで記憶を上書きした。

 その後、朝帰りしたイフリートはバハムートちゃんの機嫌が直るまで、ホテルの部屋にいれてもらえなかったそうだ─────爆発してしまえ!


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