3バッハ バハムートちゃん昼下がりの攻防と高速ラーニング
ぽかぽかの昼下がりバハムートは懸念していた。
ふむ?バハムート?確かに昨日まではバハムートではあったが、今やただの幼女である。自慢の鉤爪も鋼の様な肉体も大空を我が物にしていた翼も何もない。あるのは華奢な手足にくりくりお目目、ぷにぷにのほっぺた位である。もちろん空は飛べないし灼熱のブレスも吐けない。これをバハムートと呼んでいいものだろうか?
───これからは区別するため彼女をバハムートちゃんと呼ばせて頂こう。
さて前置きが長くなったが、バハムートちゃんは懸念していた。
そりゃもう、目の前のベッドですやぁお昼寝してる魔道士の所為である。
──おのれ!我がこんなに苦しんでおるというのに此奴は気持ちよさそうに寝息立てやがって!
もちろん外套はきっちりフードはしっかりである。それがまたバハムートちゃんの神経をトゲトゲさせていた。
──なんで此奴は寝てまでマントつけてるんだ!本人には快適でも四六時中これだと他からしたらただのやヘンタイだぞ!おのれ、あくまで我に顔を晒さぬつもりか! ……まぁいい、トゲトゲするのもここまでだ
椅子の上に立ったまま魔道士を見下ろし不敵に嘲笑う。何故椅子の上から?以前は常に上から見下ろしていた名残で特に意味はなかった。
『お前に見せる顔はない』
その一言を相当根に持っていた。
──今思い出しても腑が煮え繰り返るが、ここで一矢報いてやろうぞ!我の前ですやぁした事死ぬほど後悔するがいい!! さぁ暴いてやるぞ、必死に隠そうとしたその素顔をな!!ふはははははははは───!!!
必死に隠していたかどうかは置いといて、フードをガッと掴んだ!いや、正確には掴もうとした刹那指先に衝撃がはしる
「はうちっ?!」
起きたらヤバいと咄嗟に口元をおさえる。
──ふぅ起きてない様だな。此奴が起きては元も子もない。それにしてもなんだ今のは?触れようとした瞬間バチッときたぞ?
ピリっときたような自分の指先を見つめ小首を傾げるが、再び確かめる様にフードに手を伸ばす。
バチッ!っとするのと同時に可愛い悲鳴がでる。
「なんだこれは!」
怒鳴っていた。元も子もないはどこいった。
「……ちっ、うるっせーな」
気怠そうに魔道士がのそのそと起き上がるとジロっと見据える。もちろん顔はみえてない。ひぃっとババムートちゃんは飛び退き椅子の後ろに隠れる。
「わ、我は、バハムートだぞ……」
わかりやすく動揺していた。悪さをしようとした悪戯っ子のそれである。
あぁん?と魔道士は睨みをきかせる。顔はもちろん見えて─────このやりとりちょっと口説くなってきたので今後は割愛させて頂こう。
此奴寝起きやばい奴だ、とバハムートちゃんは高速ラーニングした。
「ば、バチッとしたぞ!なんだそれは?!」
居直った。が、魔導士はカウンターで無言で威嚇してくる。未だかつて誰かにこんな圧をかけられた事などない、我の前ではきっと皆こうだったのであろう、昔の我いいなと生暖かい目で思いを馳せた。しかし今や1人の人間の圧に耐えきれず椅子の後ろでガクブルしていた。
「ば、バチッと……バチッとして、それで────我は悪くないぞ!」
また居直った。ここも高速ラーニングした方がいい、威嚇されるからやめとけと。
「お前の前でこのオレがなんの対策もしないで寝ると思うか?」
圧強目で言われる。
「?」
「してるんだよ、わざと、バチッとするように」
フードを指さしながら言う。
「!!」
「まぁ静電気並みの威力だがな、だがそれでいい。 1番不快に感じる程度の痛みが最も効果的なんだよ」
不敵に笑いながら言った。ただの嫌がらせである。
「まぁ、それに耐えられてもトラップは何重にも張り巡らせてあるがな」
不敵な笑み返もされ、一矢報いるどころか手のひらコロコロだったわけで、それに気づいたバハムートちゃんは真っ赤な顔してここでは書けないような罵声をあびせながら涙目で部屋から飛び出していった。
───バハムートちゃんは高速ラーニングした。静電気は恐ろしいモノだと。