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2バッハ バハムートちゃん崖っプチの半永久機関になる

 さわやかな朝バハムートは激昂していた。つまり激おこである。


 結局あのあと魔道士を追いかける形でついていき、慣れないカラダでヘロヘロになりながらもなんとかホテルまでは意識を保っていたが、そこで気を失うかの様に倒れ込んでからは記憶がない。もちろんその後気を利かせた魔道士がベッドまで運んでくれるという事は全くなく、その場で突っ伏したまま朝を迎えた。そう、激疲れていた上激筋肉痛であった。

 ぐぬぬと恨めしそうに魔道士をずっと睨みつけているが、当の本人は我関せずと新聞に目を通している。

「おい!」

「おい、貴様!」

「我を元にもどせ! おい!聞いてるのか! おい───!」

 さっきからずっとこの調子でブーイングしてるが、一向に無反応である。まるでそこには他に誰もいないかのように寛いでいる。激昂の一番の理由はこれである。

──おのれ!我をここまで無視するとはなんて、なんて、なんてイヤな奴なんだ! 精獣の我が言うのもなんだが、此奴人としてどうなのだろうか?

 つい昨日まで人ならざるモノとして君臨していたのに、この考えはどうよ?って感じだが、まぁ仕方ないよね。本来の姿の時は良くも悪くもこちらを無視する輩なんて誰1人いなかったからだ。

──それにしても、此奴の出立ち、ちとおかしくはないか?

 確かに部屋の中でも外套をきっちり纏い、フードを目深にかぶり口元だけ何とかみえるその様は明らかにおかしく、多数決をとったら圧倒的支持で不審者である。どこぞの世界なら某公務員に職質され、様々な店舗で入店拒否不可避であろう。これこそどうよ?って感じである。

──此奴なんでマント脱がないんだ?というかフードは外さないものなのか?素顔をみせないつもりか?それとも恥ずかしがり屋さんなのか?むぅ、気になる!

「おい貴様!なぜマントを脱がない?」

「暑くないのか?」

「ヘンな顔してるのか?」

「さてはハゲであろう!」

 もはや王者の威風はなく、ザコモブ並みにヒャッハー煽りまくってみたが反応がない。無視である。すでに色々限界にきていたバハムートは逆ギレよろしく、ぬわああああ!と奇声を発し魔導士から新聞をひったくりビリビリに破る。魔導士は溜息をひとつつき相変わらず億劫そうに応えた。

「暑くはない。むしろ魔法が施してあり内部は快適かつ清潔に保たれている。なんなら風呂上がりよりもキレイな程だ」

「なら何故──?」

「お前に見せる顔はない」

 そう言い放ち唖然としてるバハムートを気にもせず印を描き新聞を元に戻し再びそこに目をやった。

「は・な・し・を・聞け─────────────!!!!!」

 修復して開いた新聞を真ん中から真っ二つ裂いてバハムートが詰め寄る。

魔導士は観念したかのように一度だけ長く溜息をついてこっちを見た。見たと言っても顔は相変わらず見えないままなのだが。

「いいか、1度だけ話してやる。 お前がさっきから言っていたことについてだ」

 魔道士の纏う雰囲気が変わり、バハムートはコクリとツバを飲んだ

「まず、お前を元に戻せるかだが、最初に言った通り知らん。 お前をその姿には変えられるけど元に戻す方法はわからない。あの術式は超高難度で複雑なモノだからな」

「な……」

──我は、我はこのままなのか……?

 自らが小虫と見下していたモノに成り下り、絶望に落胆が色濃く出た。言うならば人がGになるようなものである。

「ただし、今は……だ」

 涙目で俯いていた顔をパッと上げる。

「今はまだ解析できてないが、この先できる可能性はある」

 パッと顔が明るくなった。が、一瞬にして元バハムートの本能が垣間見た。

──もしや、此奴を無き者にしたら……魔術が解けるやもしれないのでは……

 かわいい顔して悪い顔になってるバハムートを一瞥して言い放つ。

「言っておくがオレを殺そうとは思わないことだ。あれは呪術に近いモノだから、もし術者のオレが死ねば術式がロックされ永遠にお前はその姿で生きることになる」

「ぬな──」

「あれを理解できる奴がいるとは思わないが、万が一術式を書き換えようとしてもカウンターが発動して、そのモノは一瞬にして無に帰すだろうな」

 呆然とするバハムートにさらに不敵に追い討ちをかける。

「言わばお前はこのオレが解析が終わるまで、半永久的にオレを護らなければいけないということだ。オレが死んだらお前も終わりだ。 せいぜいしっかり護れよ」

──憎きこのモノに鉄槌を下す事はおろか、まさか隷属の様に付き従わないといけないのか……?しかもいつ終わるかわからない、下手すれば半永久的にだと……?

 愕然と膝から崩れ落ちるバハムートにトドメのように一言言う。

「オレはハゲではない!」

「─────?!」

 

 絶望のガケっ淵にどうでもいいことで締められたストレスでしばらく可愛らしい咆哮が響き渡った。


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