セリス姫に武器を作ってもらう
「ふむ……それではセリスよ。この二つの素材を使い、武具を作るのだ!」
ドワーフ王はセリスに命ずる。
「セリス姫がですか!?」
ルナシスは目を丸くする。
「ふん……あてをただの足手まといのお荷物だとでも思ってたのかしら」
「正直……少しだけ」
イルミナは苦笑をする。
「ノーコメントで……」
俺は言及を控えた。
「何も言わない時点で、肯定しているようなものなのよ」
セリスは嘆く。
「見ているがいいのよ! あての鍛冶の腕前を!」
セリスは金属製のハンマーを取り出す。そのハンマーはセリスの見た目とは不釣り合いな程に巨大な物であった。
カンカン! キンキン! カンカン! キンキン! カンカン! キンキン!
「おお~」
俺は感嘆とした声を漏らす。あの情けなかったセリスとは思えない程の手際の良さだった。
「まるで別人みたいです……」
イルミナはそう漏らす。
「……それは誉めてるのかしら! けなしてるのかしら!」
両方だ。
「……全く」
セリスの鍛錬により、二つの武器がこの世の生み出された。二つの武器は輝かしい光を放ち、存在感を持っていた。
「……これが伝説級の武器ですか」
ルナシスは感嘆とした声を漏らす。
「できたのよ」
一つ目の武器は剣であった。
「これは氷結竜の牙をベースに作った剣なのよ」
海のように蒼い剣がそこにあった。
「この剣の名は『アイス・ファルシオン』。氷属性でも最強の剣なのよ!」
そう、セリスは小さな胸を張って主張する。
「「「『アイス・ファルシオン』」」」
俺達は異口同音する。
「そう。『アイス・ファルシオン』。その名の響きの通り、この剣には氷属性の魔力が秘められてるのよ。氷結竜の素材を使用して作ったのだから当然の事ではあるのだけれど……」
こうして俺達はまず一つ目の伝説級武器として『アイス・ファルシオン』を入手した。
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『アイス・ファルシオン』
氷属性最強の剣。氷結竜の牙をベースとして鍛造された剣。
剣の切れ味も異常な程よく斬れるがそれと同時に氷結魔法の効果により相手は氷漬けとなってしまう、恐ろしい剣である。
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「そしてもう一つ、『世界樹の結晶』から作ったのがこの杖なのよ」
そういって、セリスは魔術師用の杖を手で立てる。その杖は普通の杖にしか見えなかったが、輝かしい光を放っている。あの時、世界樹の天辺で手に入れた結晶が素材として使用されている様子だ。
「これは『賢者の杖』なのよ」
「「「『賢者の杖』」」」
俺達は口を揃える。
「……具体的に、どういう杖なんだ? 普通の杖とは何が違うんだ?」
伝説級の武器というからには、普通の武器とは何かが違うのだろう。
「ふふん……。普通の杖はただ魔力を上げるだけなのよ……。この賢者の杖は大幅に魔力を上げる事ができる……のみならず、使用者は本来使えないはずの魔法まで使えるようになるのよ」
セリスは胸を張り、偉そうに説明する。自分の功績を誇らしげに主張したいようだ。まるで子供のように。
「……本来使えない魔法?」
「……そう。使用者の力量に応じて、失われた古代魔法や、精霊術士や召喚士しか本来使えない魔法も使えるようになる可能性があるのよ」
「へー……凄い杖なんですね」
イルミナは感心した。
こうして俺達は『賢者の杖』を入手したのであった。
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『賢者の杖』
魔術師用の杖。
装備した者の魔力を底上げするのみに関わらず、本来使用できない魔法を使用できる可能性のある杖。
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「よくぞやった! セリス! 流石はわしの娘だっ! がっはっはっはっはっは!」
ドワーフ王は武器を鍛造した娘――セリスを褒め称えた。
「ふん……当然かしら。あての腕にかかれば、こんな事、朝飯前なのよっ!」
父であるドワーフ王におだてられて、セリスは有頂天になっていた。
「フィルド殿。この二つの伝説級武器をそなた達に授けようではないか」
「ありがとうございます、ドワーフ王。喜んで頂きます」
俺達はこうして、二つの伝説級武器を手に入れたのである。
「何、我々ドワーフの民を救ってくれたお礼だ。好きに使ってくれるが良い」
「フィルド様……」
「ん?」
ルナシスが俺に声をかけていた。
「……誰が装備しましょうか?」
「……俺にはこのエルフの国で貰った聖剣エクスカリバーがある」
俺は背中の鞘を指さした。この『聖剣エクスカリバー』は聖属性で世界最強の剣だ。唯一無二の剣である。これ以上の剣は考えられない。俺が『アイス・ファルシオン』を装備して、わざわざお蔵入りさせる事もなかった。
「だから、ルナシス。この『アイス・ファルシオン』はお前が装備しろ」
ルナシスが装備している『オリハルコンブレイド』は上等な剣ではあるし、高価な代物ではあるが唯一無二というものではない。金を払えば入手できる程度のものだ。些か値は張るが。前に家が買えるくらいと言ったはずだが……。
値段のつけようもない、この『アイス・ファルシオン』とは比べ物にならない。こいつは唯一無二の装備であるし、この剣を装備しないのは実に勿体ない事であった。
「良いのですか……こんな貴重な剣を私が使っても」
「何を言っているんだ……ルナシス。お前の為に作られたような剣だ。だからお前が使うのが自然な事だ」
「あ、ありがとうございます! フィルド様! 大切に使わせて頂きます」
こうして『アイス・フォルシオン』はルナシスが装備する事になった。
「そ、それでしたらフィルド様。この『賢者の杖』は……」
イルミナが言葉を挟む。
「ああ……イルミナ。この杖は魔術師用のものだ。俺達では宝の持ち腐れになる。是非、お前が使って欲しい」
「ありがとうございます、フィルド様……この『賢者の杖』。使いこなしてみせます!」
こうして『賢者の杖』はイルミナの手に渡り、装備させる事になった。
「ふっふっふ! あてに感謝するのよ!」
セリスは誇らしげだ。鼻高々であった。
「素材を取ってきたのは俺達だけどな……」
俺は突っ込む。些かセリスは調子に乗りすぎるところがあった。お調子者なのだ。このドワーフ姫は。
「ぐっ……それは確かに……そうなのよ。け、けど、あてはちゃんと素材のある場所まで案内したのよ」
セリスは自身がいかに今回、貢献したのかをどうしても主張したいようであった。
「……別に役に立ってないとまでは言わないが」
セリスのおかげでこうして二つの伝説級武器を手に入れる事ができ、俺達の戦力が大幅に強化されたのは否定しようもない事実だ。
「うむ……これで褒美の件は終わりだな。改めて今回、ドワーフの国を救ってくれた件、誠に大儀であった。皆の物。願わくばそのような力が必要ない事を祈るが……」
ドワーフ王はそう願っていた。
なぜか胸騒ぎがした。何となく良くない事が起こる気配を感じていたのだ。すぐに今回手に入れた新しい力が必要な時がやってくる。そんな気がしていたのだ。
――そして、その予感は間もなく的中する事となる。
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世界最強の鍛冶師~闘えない無能はいらないと勇者パーティを捨てられた鍛冶師、SS級の危険ダンジョンで装備を鍛えていたら、気づかない内に最強になっていた。装備がボロボロになって戻ってこいと言われても遅い~
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