ドワーフの国に帰還する
「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」
セリスは肩で息をする。最も体力を消耗しているのは当然のようにセリスだった。俺を含め他の三人は息一つ切らせていない。対するセリスは既に半死人のようであった。
「セリス姫……大丈夫でしょうか」
イルミナは苦笑をする。
「がんばれ、セリス姫……もうすぐドワーフの国に着く。帰れるんだぞ」
俺はセリスを励ました。ドワーフの国は目と鼻の先にある……。とはいえ、それは余力のある俺達の話であり、既に体力の限界を突破しているセリスにとっては果てしなく遠い道のりであろう。
「もう限界なのよ……死にそうなの……天国に行ってしまいそうよ」
セリスは嘆く。
「しょうがないな……ほら」
俺はセリスを持ち上げる。
「ま、まさか……フィルド様。あ、あてにあの伝説のお姫様抱っこを……」
セリスは目を輝かせ、ロマンティックな展開を期待した。
俺はセリスをおんぶする。
「な、なんか違うのよ……」
セリスはまたもや嘆く。
「これじゃあ、ロマンの欠片もない……ただの親子みたいじゃないのよ」
「はぁ……色々と注文がうるさいな……文句があるなら歩いて帰るか?」
「い、いえ! こ、これでいいのよ! フィルド様!」
セリスは頭を振った。こうして俺達はドワーフの国まで帰っていったのであった。
◇
「セリス様だ……」
「無事だったようだな……」
「ご無事で何よりです! セリス姫! そして、人間とエルフの方々!」
俺達がドワーフの国『ダイガル』に戻ると、多くのドワーフ人達からの注目を浴びた。
「フィルド様……いい加減、ここで降ろしてくれていいのよ。みっともないじゃない。あては自分の足で歩けるのよ。それに、みっともないのよ」
「……そうか」
俺はセリスを降ろす。
「ご無事でしたか! セリス姫!」
ドワーフ兵の一人が駆け寄ってくる。
「……ええ。見ての通りなのよ」
「それで、目的の素材は手に入ったのでしょうか?」
「それも問題なく手に入ったのよ。道中、色々と大変だったけど……」
「何にせよそれは良かったです。お父上であるドワーフ王も御身を心配されておられました。早く顔を合わせてあげてください」
「ええ……そうするのよ。早く、お父様に会って報告しないと……」
こうして俺達はドワーフ王の元に再度訪れる事となる。
◇
「おお~~~~~~~~~~~~~~無事だったか! フィルド殿、ルナシス姫、イルミナ姫。そして我が娘であるセリスよ」
ドワーフ王は娘であるセリスを見るなり、持ち上げて、頬ずりをした。
「み、見ての通り、無事なのよ……い、いたた……お父様、ひ、髭がくすぐったいのよ……もさもさしてて……」
ドワーフ王の顔は髭をぼーぼーと生やしているので、セリスは頬ずりされるのを大変嫌がった。
「うむ……そうか、それはすまなかったな。セリスよ」
ドワーフ王はセリスを解放する。
「それでフィルド殿……目的であった、伝説級の武器を作る為の素材は手に入れる事ができたのか?」
「は、はい……ドワーフ王。この通りです」
俺は手に入れた二つの素材を見せる。氷結地獄の氷結竜から入手した『氷結竜の牙』と、それから世界樹の頂上で手に入れた『世界樹の結晶』、二つのアイテムだ。
「おお……これが『氷結竜の牙』と『世界樹の結晶』か……実物を見るのは初めてだ。良くぞ手に入れてきた。誠に大儀であったぞ」
ドワーフ王は俺達を労う。
「それでドワーフ王……約束の件ですが」
「勿論、覚えておる……。この二つを素材に諸君等に伝説級の武器を鍛造してみせようぞ」
ドワーフ王はそう宣言した。ドワーフは直接の戦闘能力こそ低いが、器用な種族であり、特に鍛冶を得意とする。
「それではこの二つの素材を元に、すぐに作って見せようぞ!」
こうしてドワーフ王の力により、二つの伝説級の武器が作られるのであった。
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世界最強の鍛冶師~闘えない無能はいらないと勇者パーティを捨てられた鍛冶師、SS級の危険ダンジョンで装備を鍛えていたら、気づかない内に最強になっていた。装備がボロボロになって戻ってこいと言われても遅い~
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