【魔人クロードSIDE】クロード悪魔に魂を売り膨大な力を得る
「クハッハッハッハッハッハッハッハ!!! もう俺には失うものなんてねぇんだよ!!!」
せっかく盗賊として力を蓄えてきたクロードはそれらを全て失った。また振り出しである。
心を折るには十分すぎる事であった。もはやなりふり構っている余裕などなかった。例えそれが悪魔に魂を売るような行為だったとしても躊躇う理由などなかったのである。
クロードは魔石を手に持ち、魔力を込める。強く念を込めた。
「魔石よ!! 俺の呼びかけに答えやがれ!! そして目を覚ましやがれ!! くれてやるっ!! 貴様が欲しいものをなんでも。俺の命でも肉体でもっ!!」
残った微弱な魔力に呼応するようにして、魔石がその力を発揮する。
真っ黒などす黒い瘴気を放ち、その気が洞窟内を満たしていった。
『我は魔王の力を秘めし石。貴様の魂と引き換えに如何なる願いでも叶えようぞ』
不気味な叫び声が洞窟に響き渡る。この魔石が声を発しているようだ。
「へへっ。本物の魔石みたいだな。良かった。あの闇商人に偽物つかまされたわけではなかったんだな」
果たしてそれが本物だったのがクロードにとって幸運だったのか、不幸だったのかはわからない。これから被害に会う人間や亜人種からすれば不幸極まりないが。
極めて自己本位で身勝手な畜生と成り下がったクロードからすればそんな事はお構いなしだった。
もはや彼は周りや他人の事など一切目に入っていない。追い詰められた人間というのは往々としてそういう心理状態になるものなのかもしれない。
「汝の名を答えよ」
「クロードだ。クロード・トリニティ」
クロードは名を答える。
「汝、クロードよ。汝は何を求める? 貴様の望みをなんでも答えよ。さすれば汝の命と引き換えに、全ての望みを叶えようぞ」
「力だ!! 魔石!! 力をよこせっ!!」
「ほうっ!! 力となっ!! それはどの程度の力だっ!!」
「この世界でも最強の力!! 魔王の力をよこせ!! かつての俺よりも、そしてあのフィルドの糞野郎よりも強い力!! あの糞雑魚ポイントギフターをぶちのめせるだけの力だ!!」
「良いだろう!! 汝クロードよ!! 貴様の魂と引き換えにその望みをかなえようぞ!!!」
「うおおっ!!」
口を通じて、魔石の瘴気が体内に侵入していく。力が漲ってくる。かつてない程強い力。そして自分の体が自分のものでなくなっていく事を感じた。
体も精神も全く別物に作り替えられる。器が自分というだけで、完全に中身は別物へと成り代わっていた。
クロードはフィルドと同じように自身の強さをステータスとして正確に認識できるようになっていた。
LV300
HP50000
MP30000
攻撃力:9123
防御力:9034
魔力:8912
敏捷性:8890
そこにはとんでもなく高いステータスが並んでいた。この力、間違いない。あのフィルドの奴。そして、あの時王都に降臨した竜王バハムートよりも強い。間違いなく自身が世界でも最強の強さを手に入れたのだ。
それで借り物どころか、完全に他人の力だったとしてもクロードには構わない。
もはやクロードをクロードたらしめるものは何も残っていなかったかもしれない。
だが、クロードを願いを魔石は確かに叶えた。膨大な力を授け、まったく別物の存在とさせた。だがそれでも、クロードのフィルドに対する身勝手な復讐心だけはちゃんと残してあったのである。
「へへっ。勝てる。勝てるぜ!! この力があれば間違いねぇ!! あの雑魚ポイントギフターのフィルドの奴に勝てる!!」
魔石の力により、望外な力を得たクロードは完全にその力に寄っていた。
「この力があればフィルドの奴をボコボコにできる。ただ殺すだけじゃ物足りねぇよな。あいつが手篭めにしているルナシス様とその妹をボロボロになるまで犯してやるよ。今から泣き叫ぶその顔を見るのが楽しみで仕方がねぇぜ」
クロードは醜悪だったその顔を今までよりもより一層、醜く歪める。完全なる邪悪へとクロードは染まり切っていた。
「クックックックックック! アッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
クロードの哄笑が洞窟内に響き渡る。この時、世界を震撼させる程の危険な存在が誕生した。
唐突に空が曇り、そして土砂降りの雨が降り出す。これから起こる困難を暗示しているようであった。