【追放者サイド】ギルドの幹部、国に呼び出しを食らう
「帰ってきませんね。クロードとドロシー……」
「ああ……一体何をやっているんだ」
カールとボブソンの二人は会議室で待ちぼうけをしていた。他にやる事はあるのだが、それに気を取られて手につかないのだ。人間なら誰でもそういう時があるだろう。
「カール様! ボブソン様!」
そんな時だった。ギルド員が会議室に飛び込んできた。
「なんですか! ノックもなしにあわただしい!」
ナーバスになっているカールは明らかに不機嫌そうに言い放つ。
「それが大変なのです!」
「大変!? なんだ!? 何があったんだ!?」
ボブソンは慌てていた。筋肉質な大男ではあるが見た目とは裏腹、神経質で気弱な性格を持ち合わせていた。
「なんと、国から我がギルド『栄光の光』に出頭命令が下されました!」
「なんだって! それは本当か!?」
「本当です!?」
「しかしなぜだ!? なぜ我々が出頭命令を受けるのだ!?」
「わかりません!」
次いで別のギルド員が駆け込んでくる。
「カール様! ボブソン様! クロード様とドロシー様が帰ってまいりました!」
「なんだと!? それは本当か!?」
「はい!」
「行きましょう。ボブソン殿」
「ああ。行こう」
二人はクロードとドロシーの元へ向かう。
◇
「どうしたのですか!? 二人とも!?」
「ああ!? なんでもねぇよ」
クロードは明らかに不機嫌そうに言い放つ。
「それでフィルドはどうなったのですか!?」
「失敗したよ。あいつの始末」
「失敗したんですか!?」
「なんだよ!? 悪いかよ。あいつ知らない間にえらく強くなってたみたいだ」
「そ、そうなのですか。それでフィルドはどうするんですか!?」
「知らねぇよ! 俺に言うなよ! 何で俺ばかり!」
「クロード! あなたはこのギルドのオーナーだから責任があるのよ。仕方ないじゃない」
ドロシーはクロードを激しく責めた。
「何言ってるんだよ! お前達だって役員だろ! 役員だって責任重大だ! もっと俺をフォローして助けろっていうんだよ! ったく!」
険悪な空気の中、役員達は醜い口論を発展していた。
――と。その時の事であった。
剣聖ルナシスが姿を現す。恐ろしい程の美人ではあるが、元々無表情故その感情は読み取りづらかった。だが、明らかに不機嫌であるように感じる。
「フィルド様は帰っていらっしゃらないのですか?」
「フィ、フィルドの奴は、そうだなっ! まだ休暇中だ!」
「そ、そう! 休暇中なの!!」
クロードとドロシーは必死に誤魔化そうとしてくる。
「本当ですか?」
その目には明らかな疑いの色が見られた。
「ええ!! 本当!! 本当よ!!」
「本当です!!」
「本当だ!!」
「信じられません。あまりに形相が必死すぎます。もしかしてですが、フィルド様はもうこのギルド『栄光の光』には所属していないのではないですか?」
確信を突かれた幹部達は表情を引きつらせる。
「その表情……まさか本当にもうこのギルドには所属していないのですか?」
「そんなわけないじゃない!」
「そうそう! ちなみにもしフィルドがこのギルドに所属していないとするとルナシス様はどうされるつもりですか?」
「それは勿論、このギルドを抜けさせて頂きます」
冷ややかな目でルナシスは告げる。冗談には聞こえない。本気の言葉であった。
「そ、それは困ります! 今ルナシス様にギルドを抜けられては!」
「待遇はもっと改善するわ! フィルドもそのうち休暇から帰ってくるから、どうにかギルドに残ってちょうだい」
「はぁ……」
気のない返事をするルナシスであった。
「それよりクロード、ドロシー。僕達が国から呼び出しをくらってるんですよ?」
「マジか!?」
「そんな、なんで!?」
「まさかあの商人たち、国にチクりやがったか」
「あの時クロードが商人を人質に取ろうなんていうからよ!! あなたのせいよ!!」
「何言ってるんだよドロシー!! 人質に取ろうっていったのはてめぇだろうが!! 嘘ついてるんじゃねぇ! このクソビッチ!」
「だ、誰がクソビッチよ! クソでもビッチでもないわよ!」
「ちょっと、喧嘩しないでくださいよ」
「そうだ、喧嘩はよくない。喧嘩は」
他の二人がその喧嘩を仲裁した。
「とりあえず、どうする?」
「国からの呼び出しだろ。無視するわけにもいかねぇ」
当然のように国とギルドでは規模が異なる。敵に回すのは得策とは言えない。出頭命令には従うより他にない。
「行くよりほかにありませんね」
カールは溜息を吐いた。
「どこかに行かれるのですか?」
ルナシスが訊いてくる。
「ちょっと王都に。国からの呼び出しがあって」
「そうですか。私も同行してよろしいでしょうか?」
「い、いえ。ルナシス様にご足労頂くまでは」
「そ、そうよ。ルナシス様はここでお茶を飲んでゆっくりしていて」
「なぜですか? 何か私に知られてはまずい事でもあるのですか?」
「ちょ、ちょっとどうするのよ」
ドロシーとクロードは密談を始める。ルナシスに聞こえないように物陰に隠れて。
「疑われているぞ。これで連れて行かないのも疑念が深まる」
「それもそうね」
「仕方ない。連れていくしかねーだろ」
こうしてクロード達ギルド幹部は剣聖ルナシスを連れて王都へ向かうのであった。
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書くことに熱心になりすぎ、感想を返す事はおろか、読む余力すらありません。その点申し訳ありません。