ドワーフ国で褒美の話をされる
「あっぱれであったぞ!! フィルド殿、そしてその仲間たち!! さらにはドワーフ兵の諸君よ!!」
「「「はっ!! ありがたきお言葉でありますっ!!! ドワーフ王!!!」
「ふんっ!! あての活躍があれば当然の結果かしらっ!! ふふふっ!!」
セリスは小さな胸をそり、偉そうなポーズをとっていた。「えっへん」という感じであった。
「セリス姫、お前は何かしてたか?」
俺は聞いた。
「それはもう、ドワーフ兵に巧みな指示を取り、盗賊達を追いつめていったのよ!!!」
「嘘をつくな。誰もお前の指示を聞いてなかっただろう。どこで何をしていた? 正直に言ってみろ」
「ううっ。こ、今回は捕まらないように、隅の方で大人しく隠れていました」
「正直でよろしいっ! ま、まあ、捕まって俺達の足をひっぱらなかったことだけは大した進歩だ」
「よくやってくた。特にフィルド殿とルナシス姫とイルミナ姫。この三名はドワーフ国からすれば部外者であるにも関わらず、この盗賊問題を解決する上で多大な協力をしてくれたこと、誠に感謝申し上げる。そうだな、何か褒美を授けたい」
「い、いえ、いいですよ。個人的な事でしただけですし」
盗賊問題はクロードが裏で糸を引いていたことだ。あいつとは少なくない因縁があった。だからその問題が片付いたことには俺にとっても少なくない意味があったのだ。
「そういうわけにもいかぬな。そなた達は何を望む? 金ならそれなりにはあるだろう。今更さほど必要なわけでもあるまい。そうなるとそうだの。今以上の強さを必要とするのではないか? レベルアップによる強さは簡単に手に入るものではない。それだけの経験値を必要とする。だが、装備は別だ。装備は変更すればすぐに強くなれる。ドワーフ国は元来鍛冶師を生業としていた一族である。きっとそなた達の強さにも協力できるだろう?」
「俺達にもっと強い装備を授けてくれるというのですか?」
「左様。だが、見たところそなた達の装備はそれなり以上の性能を備えている様子だ。そうなると伝説級の武具でなければ装備を変更しても意味をなさないであろう。伝説級の武具を作るにはそれ相応の伝説級の素材が必要なのだよ」
「はぁ……伝説級の素材ですか?」
「そうだ。それを取ってきてくれたら、我々の方で伝説級の武具を鍛錬してやろう」
「その伝説級の素材は誰がとってくるのですか?」
「我々では無理だな。我々は元々生産を生業とする種族なのだよ。あまり戦闘や危険な事は向いていないのだ」
「つまり……」
褒美として武具を作ってやるから俺達に素材を集めてこいってことか。
「俺達に素材を集めてこいって言ってるんですか?」
「うむ。そうなるの」
「でも、その素材はどこにあるんですか?」
「あてが教えるわ」
セリス姫が名乗り出てきた。
「セリス姫が?」
「色々と助けてくれたお礼よ。あんたには世話になったから」
つんと言いつつ、顔を赤くするセリス。なんだこの娘は。情緒が不安定なのか。
「ちなみにどんな場所にその素材はあるんですか?」
「そうね。北の大地に氷結地獄というとても寒い場所があるの。そこにいるドラゴンの素材から強力な剣が作れるわ」
「他には?」
「南の大地に世界樹の大樹があるの。頂上にある世界樹の結晶を手に入れることで、特別な杖を作ることができるの」
それなりに大変そうなところではあるが。ただ行ったことのない場所でそれなりに知的好奇心や探求心をくすぐされはした。
「フィルド様、よいではないですか」
ルナシスが言ってくる。
「何がだ?」
「行ってみたことのない場所ばかりです。いろいろ見たこともない物がありますし。観光がてら行ってみても」
「そうです!! きっと楽しいと思います!!」
ルナシスとイルミナは言ってくる。二人とも行ったこともない場所なのだろう。俺も当然そうだ。俺でも行ったことがないのだから、二人がなくても当然と言えた。
「観光がてらって、それなりに危険な場所だぞ。危険なモンスターも間違いなくいるし」
第一、その氷結地獄にいるドラゴンの素材が必要ということは、間違いなくその素材が必須ということだった。つまりは戦闘は避けられないということだ。
「それはそうですが、フィルド様がいらっしゃるじゃないですか」
「それはそうかもしれないが、あまり俺に頼られてもな」
「それはもう、私達もフィルド様の足を引っ張られないように最善を尽くします」
「まあ、せいぜい、あての足を引っ張らないように努力するのね」
セリスが偉そうにふんぞり返った。
「い、一番足を引っ張りそうなやつが何か言ってるぞ」
「し、失礼な奴ねっ!! あてがどうして足を引っ張るのかしら!!」
「人質にされて泣き叫んでいたのを忘れたのか?」
「う、うるさいわねっ!! 忘れなさーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
セリスは顔を真っ赤にして叫んだ。
「まあ、じゃあいいか。面白そうだし」
まだ見ぬ光景がそこにあるのだったら、是非見てみたいものであった。退屈しなさそうだ。俺は俺でそれなりに乗り気だったのだ。
「ドワーフ王。わかりました。セリス姫に同行して貰って、その素材を集めてきます」
「おお、そうか。そうしてくれるかっ!! では素材を集めてきたら約束通りにそなた達に伝説級の武具を鍛錬しようではないか」
「はい!」
「ではお父様、行ってきます!!」
こうして俺達はセリスに案内をされ、素材取集の旅に出ることとなった。