フィルド率いるドワーフ兵 逃げる盗賊を追いかける
「逃げろ!! 捜索隊がやってきたぞ!! 俺達を捕らえに来たんだ!!」
盗賊達の慌てたような声がする。一軒家から続々と姿を現わし、山の方へと逃げて行った。
「フィルド様、これは一体……」
「間違いない。姿は見えないがクロードの盗賊団だ。逃亡への判断が早すぎる。俺達との実力差を認識しているクロードしかできない芸当だ」
「やはり、あの娘の言っているようにクロード一味の仕業なのですか。行商人を襲い、ドワーフ製品を強奪したのも」
「確証までは持てないが恐らくはそうだろうな」
「なんと卑劣でゲスな男。やはりあの時――」
ルナシスはその美しい顔を怒りで歪ませる。
「やめろルナシス。過去を悔やんでもどうしようもない。俺もまさか奴がここまでやる奴とは想像もしていなかった」
今まで人を人たらしめていたストッパーが外れると人間はこうまで堕ちれるものなのか。例えばそれが社会的立場であったり、収入であったり、家族であったり、仲間であったなり。
クロードはそういうものを失いすぎた。そして何もなくなってしまった。その結果盗賊稼業に手を染め、犯罪行為を繰り返すことに何の躊躇いもなくなってしまったのだろう。
あいつは俺が『栄光の光』からいなくなったことであまりに多くのものを失っていった。だがそれも自業自得だ。クロードの転落劇の責任はクロード自身にある。
「ともかく追いかけるぞ、お前ら!!」
「「「はい!」」」
ドワーフ兵が俺の叫びに答える。
「ちょ、ちょっと!! 勝手に命令しないでよ!! あてのドワーフ兵なんだからっ!!!」
セリスはムキになる。
「知るか!! 今それどころじゃないんだよ!! お前も追いかけろ!! 人質にされないようになっ!!」
「わ、わかってるわよ!! ドワーフ兵団!! 行くわよ!!」
「「「はい!」」」
こうして俺達とセリス率いるドワーフ兵団は逃げる盗賊達を追いかけ始めた。
◇
【盗賊クロード視点】
「はぁ、はぁ、はぁ」
クロード率いる盗賊団は山道をひたすら走る。
「頭領!! クロード頭領!!」
子分が声をかけてくる。
「なんだ!?」
「連中、追いかけてきやすぜ」
「追いかけてくるのは当たり前だろうが。俺達を捕まえに来たんだからな」
「あいつら、そんなに強いんですか」
「強いなんてもんじゃねぇ。王都に召喚獣バハムートを放った時に討伐したのはあいつ等。特にあのポイントギフターのフィルドは要注意だ。捕まった瞬間殺されると思え」
「そ、それほどのモンなんですか。あの少年は」
クロードの話を聞いた盗賊団は血の気も引いた様子であった。
「ああ。だから最大限の警戒をするんだ」
「お頭!!」
「なんだ!?」
「目の前に大きな岩がありますぜ。こいつを落とせば奴らも」
「それで倒せるような連中じゃねぇけど、それで時間稼ぎくらいできるかもしれねぇ。数名残って大岩を落とせ。俺達は先に行く」
「「「へいっ!!!」」」
盗賊団は大岩を数人がかりで動かし始めた。
「「「せーの!!!」」」「「「ふんっ!」」」
ゴロゴロゴロ。こうして盗賊達は数人がかりで大岩を動かすことに成功したのである。
◇
ゴロゴロゴロ。音が聞こえてくる。
「なんだ? この男は」
「フィルドの旦那っ!!!」
ドワーフ兵が叫ぶ。
「い、岩が!! 大きな岩が落ちてきますぜ!!」
遥か遠くから大岩が落ちてくる。偶然なわけがない。俺達の妨害をするためにクロード達が落としたのであろう。道幅は狭く、とてもではないがドワーフ兵を含め、避けきるにはあまりに空間が狭かった。
道の片方は崖になっている。上の方も傾斜がきつく、とてもではないが登り切れそうにもない。
仕方がない、俺はエクスカリバーを構える。そして大岩に対して振り下ろした。
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嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです! ホワイトな宮廷で薬師として雇われたので
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