ドワーフ兵を引き連れ盗賊団のアジトへ
「さあ!! はりきっていくわよ!! ドワーフ兵団!!」
「「「イエッサーーーー!!! セリス姫!!!」」」
セリス率いるドワーフ兵団が進軍する。その兵数、ざっと20~30人といったところだ。小規模ドワーフ兵団と言える。
「なぜ、セリス姫まで同行するんだ?」
俺は疑問を呈した。
「ふん!! ドワーフ国を苦しめてきた悪党たちにお灸をすえなければ気が済まないのよ!!」
セリスはふんと顔を背ける。
「前にその悪党の人質になって醜態をさらしていたのはどこの誰だと思ってるんだ?」
「ああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー聞こえないーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
セリスは耳を塞いで大声で叫び始めた。
「あれだけ必死に命乞いして泣き叫んで、あっちの経験もないだのなんだの、言わないでいい事まで洗いざらいぶちまけてみっともなく」
「あああああああーーーーーーーーーーーーーーー!!! 聞こえないーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 聞こえないって言ってるでしょーーーーーーーーーーーー!!! しつこいわよーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「聞こえてるじゃねーか」
俺は溜息を吐いた。手間のかかる年の離れた妹ができたかのようだ。実際のところは俺より年上なのかもしれないが。見た目と精神年齢があまりにも幼い。
「うるさいって言ってるでしょ!!! あてが行かないと不安なのよ!!!」
「その『あて』が来ると俺達が不安になるという事をご本人がわかってないようだ」
俺は再度溜息を吐く。
「うるさい!! うるさい!! うるさい!!」
セリスは怒鳴り散らす。
「まあ、付いてきてもいいけど今度こそ敵に捕まって泣きわめいて醜態をさらすなよ」
俺は釘刺す。
「う、うるさいわね!! そんな事ならないって言ってるでしょ!!」
「どうだか、現に一度なってるじゃないか」
「だ、だからこのドワーフ姫のセリス様は同じ失敗は繰り返さない!!」
「はいはい。わかった信用してやるよ。一度だけ」
俺は仕方なく納得した。
「セリス姫!! 見えて来やしたぜ!!」
俺達の目の前に大きくそびえる山が見えた。あの山の麓に、被害にあった彼女の住んでいた家があるらしいのだ。恐らくはクロード達はその家を拠点としているようだった。
痛々しい被害にあった中、捜索に協力してくれた彼女には感謝してもしきれない程だ。この敵は是が非でも取らなければならない。
問題なのは拠点を移動していないか、という事であった。それだけが気がかりだ。
「ありました。フィルド様。遠くに一軒家が」
遥か彼方。数キロ先ほどの距離。余程視力がよくない限りは見えない程離れた距離に、一軒家が見えた。あれが彼女の住んでいた家だ。
「よし。慎重にいくぞっ!!」
俺達は盗賊団の拠点へと向かう。今現在も根城としている事を祈るばかりである。