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ドラゴン退治、サクッとざまぁ、そして皆でドラゴン肉パーティー

 俺は北の山岳地帯、その街道をひたすら歩く。普段は行商人で行きかうであろうその街道はがらんどうで普段より寂しい光景であった。


 いくら山岳地帯の街道とはいえ、ここまで人通りがないのは稀だった。当然のようにドラゴンの出現により、封鎖状態になっているのがその原因であろう。


「ん? なんだっ!?」


 大きな影が目の前にできた。そしてものすごい風圧を感じる。俺は目を閉じた。


 しばらくして風が止む。目の前に現れた巨大なモンスター。口から火を噴く、赤い皮膚を持った竜。


 間違いない、ドラゴンだ。その種類は最もオーソドックスなドラゴンと言われている火竜(レッドドラゴン)である。


「これがドラゴンのプレッシャーかっ……」


 確かにものすごいプレッシャーを感じる。だが思っていた程の恐怖がない。むしろ闘うのが楽しみでもあった。

 

 ポイントギフターとして、『栄光の光』に付与していた経験値を返してもらったのだ。


 今の俺はかつてのレベル1の俺ではない。今の俺のレベルは170だ。だから目の前のドラゴンがどれほど強敵であろうと負ける気は一切しなかった。


 俺は剣を抜く。装備を新調していない為、安物のブロンズソードを装備していた。その為、人が見ていたらドラゴンを舐めているとしか思えないだろう。その上にソロプレイだ。舐めているにも程がある。そう思われても仕方がない。


「来る!」


 俺はその剣を構えた。


 グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 ドラゴンが咆哮をあげた。そして放たれるのは紅蓮の炎であった。


 見える。俺はそれを難なく避けた。


 そして次に繰り出されたのは(クロー)による一撃。大地に大きな亀裂が走った。だが、空振りだ。その時、俺は宙に舞っていた。


 ドラゴンは俺を見失っている。


「遅い!」


 俺は剣を振り下ろした。


 グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 ドラゴンは断末魔のような咆哮をあげる。クビが両断される。ドラゴンは一瞬で朽ち果てた。


「やった! やったぞ! あのドラゴンを倒した! それも一撃でなんて!」


 俺は歓喜に震えていた。


「さてと! 念願のドラゴン肉を食べるぞっ! まずは調理開始だ!」


 俺はドラゴンを食べる為に調理の下準備を始めた。まずは血抜きを始めようとする。

 

 ――と、その時であった。


「ほら! さっさと歩きなさいよ! 日が暮れちゃうじゃない!」


「くっ! ぐうっ!」


「ったく、ちんたらしやがって!」


 見慣れた声が聞こえてくる。


「なんだ? この声は」


「ちょ、ちょっと! 何なのよこれ! ドラゴンじゃない!」


「本当だ! それにもう死んでやがるっ!」


「クロードとドロシーか!?……」


「へへっ。久しぶりだな。フィルド」


「ええ。久しぶりね。つい最近の事なのにそう感じるわ」


「何をしに来たんだ?」


「我が『栄光の光』に入ってきた剣聖ルナシス様があろうことかポイントギフターのお前にご執着でな」


「ご執着……?」


しかもあの剣聖ルナシスが? 何で俺なんかに……。

だが考える暇もなく、クロードが言葉をつなげる。


「俺達はお前を亡き者にしようとこの場にはせ参じたんだよ」

「なっ。どうして……?」

「んなもん決まってるだろ。死んでりゃ剣聖ルナシスも諦めざるを得ねえだろ? タダ働きでいいってんなら戻ってきてもいいけどな?」


「ふざけるなっ! あんなところに戻るのはごめんだっ! それで俺を殺しにきたってわけかっ!」


「ええ。そうよ。トップギルド『栄光の光』のツートップが来たの。恐ろしさのあまり震えているでしょう?」


「後ろの商人たちはなんだ?」


「それは人質よ。念には念をと思って」


「人質? 俺は雑魚だと思ってるんじゃないのか?」


「だから念の為よ。それよりフィルド、あなた本当にドラゴンを倒したの?」


「まさか。そんなわけあるか。きっと別のトップギルドのパーティーが倒してて、それでフィルドの奴がたまたまこの場に居合わせていたって線だろうぜ」


「まあ、そんなとこよね」


「なんだ? 俺とやるっていうのか」


「当たり前だろうが! 魔剣ウロボロス!」


 クロードは腰から魔剣を取り出す。


「なんだ!? この魔剣!? 前よりめちゃくちゃ重く感じるぞっ! こんなに重かったかなっ!?」


「か、考え過ぎよ! クロード!」


「魔法剣! 灼熱地獄(ヘルファイア)!」


 魔法剣士でもあるクロードは魔剣ウロボロスに最上位の炎魔法である灼熱地獄(ヘルファイア)付与(エンチャント)しようとした。


 シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


 しかし何も起こらなかった。


「な、なんだと! なぜ何も起こらない!」


 次第にクロードは魔法のランクを落としていく。そしてやっとこさ最下級の炎魔法である(ファイア)の発動に成功した。


「魔法剣! (ファイア)


 クロードの魔剣にやっとこさ微弱な炎が宿る。


「弱そうね」


「お、おかしい、こんな事なかったんだけどな。まあいい! フィルド相手だ! これでもおつりがくらああああああああああああああああ! てやああああああああああああああああああ!」


 クロードが襲い掛かってくる。俺の目にはクロードの動きがスローモーションどころか止まって見えていた。


「遅い」


「なに! ぐあっ!」


 俺はクロードを蹴り飛ばす。クロードは吹き飛び、無様に転倒した。


「て、てめぇ!」


「くっ! ふざけないでよっ! フィルド相手にこんな! 氷結地獄(コキュートス)!」


 ドロシーは氷系最上級魔法である氷結地獄(コキュートス)を発動した。


しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん


 しかしこれも何も発動しない。


「う、うそ! なんでっ!」


 仕方なくドロシーも魔法のランクを下げていく。


氷結(コールド)!」


 ドロシーもまた最下級の氷結系魔法で妥協をした。


「涼しい」


 涼しい風が吹いてきた。そうとしか感じなかった。


「う、うそっ! なんでっ!」


「ぐ、ぐおっ!」


「うわっ!」


 俺は一瞬の隙に商人たちを拘束しているギルド員を倒した。


「大丈夫ですか!?」


 そして俺は商人たちを解放する。


「あ、ありがとう。坊や」


「いえ。元職場仲間のやらかした不始末ですから」


「それにドラゴンまで本当に倒したんだね。君は本当に凄い奴だ」


「く、くそっ! 撤退! 撤退だ!」


「仕方ないわっ! 他の方法を考えましょう!」


 クロードとドロシーは慌てて撤退していく。部下であるギルド員すら置き去りにした。


「ま、待ってください! クロードギルド長! ドロシー様!」


 ギルド員が追いかけていく。


 行ったか。まあ、いい。今は追いかけている余裕もない。商人の人達を解放するのが先だ。それにもうあの様子じゃ何度挑んできても経験値を返してもらった俺にはかないそうもなかった。


「ありがとう! 君はフィルド君というのだね! 先ほどの連中から話は聞いているよ」


「ああ。酷い奴だ」


「それにしてもすごいな。ドラゴンを倒すとは。こんなまがまがしい化け物を、しかも一人で倒してしまえるなんて」


「良かったら商人の人達も食べていきませんか? ドラゴン肉の料理」


「ドラゴン肉の料理だって!? それは本当かい!?」


「ドラゴンはレアな食材でめったに食べられないんだ!? そいつを食べれるなんて、なんて幸運(ラッキー)なんだ!!」


 商人たちは大喜びをし始めた。こうして俺達はドラゴンを調理し、食べ始めたのである。ドラゴン料理のパーティが始まった。



「いやぁ! うまい! これがドラゴン肉か!」


「滅多に食えないだけじゃない! 肉質がしっかりしていて、相当にジューシーだよ」


 俺もドラゴン肉にほおばりつく。これがドラゴンの肉か。確かに食べ応えがあっておいしかった。


「それにしても『栄光の光』の連中だっけ。随分と酷い事をするね」


「ああ。あの様子じゃ最初から君を殺そうと……そのために我々まで人質として利用するなど」


「私達は結構な規模の大商会をやっていてね。この事を公表すればきっと国が動くと思うよ」


「そうですか……だといいんですけど」


『栄光の光』に相応の報いがあればいい。良い事には良い事なりの悪い事には悪い事なりの相応の報いがなければならない。


俺はそう考えていた。


ともかくその日のドラゴン料理のパーティーは滞りなく終了したのである。

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