闇商人をとっちめて盗賊団に対する情報を聞き出す
「大人しくしろ!! 今すぐ闇取引をやめるんだっ!!」
俺達は廃墟に侵入する。
「な、なんだお前らは!!」
「警備の者はどうしたっ!!」
闇商人達は慌て出す。中には慌てて逃げ出そうという者も出てくる。
「イルミナ、魔法で動けなくしてくれ」
「はい! フィルド様、わかりました!!」
イルミナは魔法を発動させる。
「スタン!!」
イルミナは電流を闇商人達に流す。電気ショックのような魔法だ。死にはしないが、それでも麻痺して動けなくなる事だろう。
「「「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!」」」
闇商人達は電気ショックを食らい、動けなくなる。
「誰がこの闇取引の元締めだ?」
「あ、あっちです。あっちの黒いサングラスの男」
「……サングラスの男?」
麻痺して動けないでいる細身の男の存在があった。
「あんたが元締めか?」
「ち、違います。わ、私はたまたま居合わせてただけで」
「本当か? ……まあいい。イルミナ。魅了の魔法をかけろ」
「は、はい。魅了」
イルミナは魅了の魔法をかけた。イルミナに魅了の魔法により骨抜きにされる。
もはやイルミナの言葉に逆らう事はできない。
「おじさん。おじさんがこの闇取引の元締めなのですか?」
「は、はい!! そうでーーーーーーーーーーーーーーーす!!!」
麻痺しているにも関わらず、元気いっぱいに答えた。
「やはり嘘だったか」
「フィルド様。他に聞きたい事はありますか?」
「次に盗品の出どころだ。盗賊団、特にクロードに対する情報を聞き出してくれ」
「おじさん。盗賊団について何か知っていますか? 特にクロードって男の人に関して情報を教えて欲しいんです」
「クロードなら、この前に北にある教会の廃墟で取引をしました。奴隷となる予定の女二人を取引しました!」
「北の教会……その廃墟か」
俺は呟く。
「フィルド様、他に聞きたい事は?」
「それじゃあ、そのクロード達がいまどこにいるのかを聞いてくれ」
「おじさん、そのクロードって人はどこにいるか知っていますか?」
「それは知りませーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
元気いっぱいに答える。
「本当に知らないようだな。まあいい。これで聞きたい事は聞き終わった。魅了を解いてくれて構わない」
「はい!」
パン。イルミナが手を叩くと魅了が解ける。スタンは引き続き効果が持続しているようで身動きが取れないのは変わらないようだ。
「はっ!! お、俺は何を」
「魔晶石で警備兵に連絡しておく。大人しくお縄に就くのを待っていろ」
俺は通話ができるマジックアイテムを取り出す。
「ま、待てっ!! い、嫌だっ!! 捕まるのは!!!」
「大人しくしていろ。イルミナ、途中でスタンの効果が切れるのも嫌だ。再度スタンをかけなおしてくれ」
「はい。フィルド様!!! スタン!!!」
「「「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」
スタンを重ね掛けされた闇商人達は再度悲鳴をあげた。
「ルナシス、イルミナ、それからセリス姫。拘束されている女性たちを助けてくれ」
当然俺も手伝うが。
「「はい!!」」
「うるさい!!! 偉そうに命令しないで欲しいのよ!!!」
セリスだけは俺に反抗的な態度を取ってきた。
「はい。質問です。先ほどセリス姫が悪党に捕まっていた時命を助けた恩人は誰でしょうか?」
俺はセリスに意地悪な質問をする。
「ううっ!!! わ、わかったわよ!!! 他のドワーフ兵にも手伝わせるわよ!!!」
弱味を握られたセリスは大人しく俺達に協力する。
「大丈夫ですか? もう安心ですからね」
俺は拘束されている少女を助ける。猿轡と拘束を解き放つ。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああんんん!!!」
解き放った瞬間、少女が俺の胸に飛び込んできた。
「むっ!!!」
ルナシスが一瞬不機嫌な表情になる。
「勘違いするなルナシス。変な事をしているわけじゃない。今の状況なら仕方ないだろ」
「わ、わかってます」
ルナシスはルナシスで他の少女の救出を行った。
「よしよし……もう安心ですからね」
俺は少女の頭をなでる。きっと今まで怖かったのだろう。しかしこの後、少女からクロード達盗賊団に対するより核心的な情報を得る事となる。
◇
「じゃあ、ここで大人しくしていてください。しばらくしたら警備兵がくると思います」
闇商人達はスタンをかけた後、念のためロープで縛っていた。これで身動きひとつとれないだろう。排便の心配はあるが、その点を同情する余地のある人間などいない。
「ま、待ってください!!」
一人の少女が俺を呼び止める。
「ん? どうかしましたか?」
「クロードって男の人、聞き覚えがあるんです」
「な、なんだって!? どうしてですか。よろしければ詳しく教えてはくれませんか?」
「は、はい。それはその……」
少女は口ごもる。
「言いづらい事なら言わなくてもいいんです。何か知っている事があったら是非教えて欲しいんです。俺達は奴らを……盗賊団の行方を追っているんです」
「その人の居所を知っています」
「ど、どこにいるんですか? 教えてもらえませんか?」
「その人は仲間と一緒に来て、それでお父さんを……それでお母さんと私を、ううっ、うあああああああああああああああああああああああああああああっ! うあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
俺は彼女を優しく抱いた。彼女の涙で詳しく語らずとも何が起きたのか、理解できた。彼女をなだめつつ、俺の中に焔のような感情が芽生えてきた事に気づく。
クロードの奴。気に食わない奴だとは前々から思っていたが、ここまでの鬼畜だとは思っていなかった。人間落ちる時はどこまでも落ちるんだな。
もはやあいつを人間だと思わない方がいい。あいつは鬼だし、畜生だ。まさしく鬼畜だ。完全な鬼畜に成り下がった。
「あなたのお気持ちは十分察します。ですがそいつの居所は俺達にとって貴重な情報なんです。泣いて気持ちが落ち着いたらその場所を詳しく教えてくれませんか」
「は、はい!! お父さんと私達の仇を取ってください。それでこれ以上の犠牲者を出させないで。お願いです」
彼女は存分に涙を流した後、家の場所を克明に教えてくれた。
恐らくはそこにクロードがいるのであろう。
俺達は警備兵がたどり着くと事情を説明し、とりあえずはドワーフの国へと旅立った。
「一旦ドワーフの国に帰る。クロードと盗賊団も気がかりだが、それよりもまず」
「う、うわっ!! なによっ!! なにするのよっ!!」
俺はセリスのクビを持ち上げ、つるし上げる。ちょうど持ちやすい大きさだった。
「このお転婆姫をドワーフ国にお返ししないとな。マジックポーチと金貨の受け渡しもあるしな」
「は、放しなさい!! い、いやだっ!! あ、あては物じゃないのよ」
「はいはい」
どすん。俺はセリス姫を落とす。
「い、痛い! お、お尻ぶった!!」
「いいから帰るぞ」
「「はい!」」
こうして俺達は一旦ドワーフの国へ帰る事となる。