人質となったセリスを助ける
「あ、あて、まだ死にたくない! 助けてフィルド!! フィルド様ぁ!!」
セリスは泣き面になっている。流石にあのお転婆なセリスでもまだ死にたくはないようだ。まあ、誰でも死にたくはないかもしれないが。
「……セリス姫。なんでここに?」
イルミナは首を傾げる。
「大方俺達の実力に疑問を持ったセリスが心配して後をつけてきたんだろう。半分は野次馬の好奇心みたいなところもあるだろうが。まあ、それで敵に捕まっていたら本末転倒だよな」
俺は溜息を吐いた。
「こいつ等、貴様達の仲間なんだろ!! こいつの命が惜しければいう事を聞け!」
そう言って黒服の男は拳銃をセリスの頭に近づける。
「い、いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! あてまだ死にたくないーーーーーーーーーーーーー!!! やりたい事まだいっぱいあるのーーーーーーーーーーーーーーーー!!! まだ好きな人ともキッスもしてないしーーーーーーーーーー!!! あっちの方の経験だってないのーーーーーーーーーーーーーーー!!! それなのにまだ死にたくないーーーーーーーーーーーーーー!!! いやだーーーーーーーーーーーーーーー!!! うえええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんんん!!!」
セリスは大泣きしていた。子供の癇癪のようだった。
「セリス様……あっちの経験ないんですか」
イルミナは顔を赤くして呟いた。
こいつ……死の恐怖のあまり混乱してもはや言っていい事と言わなくていい事の区別すらついていない様子だ。
「イルミナ、今はそのことはどうでもいい」
俺は男達に向き直る。
「どうだ!? 手も足も出ないだろ!! 仲間の命が惜しければいう通りにしろ!!」
男は勝ち誇る。
「好きにしろ」
「な、なんだと!?」
「別に俺達は仲間でもなんでもない。そいつとは知り合いかもしれないが、かといってわざわざ助ける程の義理もない。勝手に俺達の後をつけてきただけだ」
「そんなっ!」
「びえええええええええええええええええんん!! フィルド様ーーーーーーーーーーーーーーーー!!! あんまりではないですかーーーーーーーーーーーーーーー!!! 確かについてきたのはあてが悪かったですけどーーーーーーーーーーーー!!! だからってそんな見捨てるなんてーーーーーーーーーーーーーー!!! そんな、そんなーーーーーーーーーーーーーーー!!! あまりに殺生ですぅーーーーーーーーーーーーーーーー!!! びえええええええええええええええええええんん!!!」
セリスは大泣きして癇癪を起していた。
「う、うわっ、こいつ!!! う、うるさいぞこの泣き声!!!」
男はあまりの泣き声の大きさに怯んだ。
「今だ!!!」
俺は一瞬で距離を詰め、男の拳銃をけり落とす。
「ぐわっ!」
「寝てろ」
「ごほっ!」
鳩尾に拳を入れ、男は昏倒した。
「ふう……何とかなったか」
「だ、大丈夫でしたか。セリス姫」
「あ、あて、助かったの? もう大丈夫!?」
「ええ。もう大丈夫ですよ。怖かったですよね。もう安心してください」
ルナシスとイルミナになだめられ、セリスは気を取り直す。
「こほん!!!」
そしてわざとらしく咳払いをした。俺を見やる。
「ま、まあ。た、助けてくれた事に対しては感謝してあげるわ」
「どんなに強がってもさっきの醜態を払拭できていないぞ」
俺は告げてやる。
「う、うるさああああいい!!! 忘れなさーーーーーーーーーーーーーーーーいい!」
セリスは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「それより今すぐ闇取引を中止させるんだ。そして盗品の出どころを聞き出すんだ」
「「はい!!」」
俺達は闇取引が行われている廃墟に侵入する。




