【盗賊クロードSIDE】クロード率いる盗賊団罪なき母子を闇商人に売りに行く
「へへっ……親分。昨夜はお楽しみでしたね」
そう子分となっている盗賊は言った。子分といっても末端となっている盗賊のまとめ役ではあるので盗賊内の地位としては中間程度のものだ。
クロード率いる盗賊団は母と娘を両手を縛った上で猿轡をして馬車に連れ込んだ。
数多にわたる凌辱行為を受けた母と娘はもはや死体のようにぐったりしており生気がない。もはや呻き声すら出していなかった。
「へっ。俺だけじゃねぇだろ。お前達も久しぶりの女だったもんで随分とハッスルしやがって」
クロードは軽薄な笑みを浮かべる。やった事に対する罪悪感は微塵も感じていない様子だった。もはやまともな倫理観を完全に失ってしまっている。
奴隷とする女は妊娠している場合価値が大幅に下がるのが通例だ。その為、妊娠しないように避妊具はつけていた。
だが、それはあくまでも人さらいをする側の都合である。そんな事関係なく凌辱行為を受ける女性にとっては痛ましい出来事であった。
そしてその後の境遇も尚の事であった。奴隷として売られる彼女達の未来に一片の光も差し込んではこない。
国によっては奴隷制度が今なお存在している国もある。そういう国に彼女達はゆくゆくは連れていかれるようだ。
クロード達は廃墟となっている教会で奴隷商と密会する事になる。
◇
「おらっ! 降りろ!」
「んっ、んんっ!!」
「んんんっ!! んんっ!!」
自分達の都合の為、両足の拘束のみ解かれた母と娘であった。二人は廃墟へと連れ込まれる。
「いやいや。どうもどうも。クロードさん、お世話になっております」
闇商人の男がそこにはいた。サングラスをかけた細身の男だ。人身売買から盗品の買い付けでもなんでもして、それを闇市場で売りつける、アンダーグラウンドのブローカーである。
「今日はドワーフ製品の売り付けじゃねぇ。こいつ等を買って欲しいんだ」
「これはこれは。人身売買ですか。うーんそうですねー。若い娘の方が価値があります。母親の方を金貨50枚、娘の方を金貨100枚でいかがでしょうか?」
「ああ。それでかまわねぇよ。ほらっ! いけっ!」
「んんっ!!」「んんんっ!!」
クロードは二人の背中を蹴とばす。ドサッ。二人が地面に転がった。
「それでクロードさん。今日はそれとは別に商談があるんですが」
「商談?」
「力が欲しくはありませんか?」
「力?」
「はい。力ですよ。力。お話を聞くに、どういうわけかあなた様は力を失ったようです。以前のあなた様はトップギルドであった『栄光の光』でギルドオーナーとして活躍されておりました。そのギルドオーナーとしての手腕は元より、魔法剣士としての腕も相当なものであったと聞いておりますよ。クックック」
闇商人は笑った。
「よせよ。昔の話だ」
「ええ。ですから昔のように力を手にしたくはないかと思っているのです。あなた様には誰か恨みを持った男がいるはずだ」
闇商人はクロードの心を見透かしているようだ。流石は闇商人としてのキャリアが相当にある様子だった。人の心情を見抜く事に非常に長けている。
「どうしてそれを?」
「顔を見ていればわかりますよ。きっと『栄光の光』時代になにか因縁があったのでしょう。クックック」
闇商人は笑う。そして懐から何かを取り出した黒い石だった。
「なんだそれは?」
「これは魔石です」
「魔石?」
「ええ。これを使えばあなたはかつて以上の力を得る事ができるでしょう。それはもう素晴らしい力を」
「……素晴らしい力?」
「はい。ただこれを使用した時はそれ相応の代償を支払う事になりますがね。いわば悪魔と契約するようなものですよ。クックック」
「悪魔との契約か……ロクな代物じゃねぇな。一体いくらなんだ?」
「金貨150枚。この母親と娘とトレードオフで構いません。特別価格ですよ。クックック」
「てめぇ! 何言ってるんだ!! 俺達の食い扶持を!」
「よせ」
クロードは制する。クロード達は盗賊という不安定な身分だ。収入にはムラがる。しかし盗賊事業はそれなりに順調であった。用意周到に末端の盗賊に襲わせ、足をつかませない戦略が功を奏している。
盗品の販売も順調だ。元手はゼロなのでそれなりに安値で売っても丸々利益になる。盗まれた側はただただ災難ではあるが。
だから今回金貨150枚を得られなかったとしてもやっていけないという事もなかった。それなりの余裕は存在している。
「その魔石っていうのは本物なんだろうな?」
「はい。それはもう保証します。闇とはいえ私も商人。顧客の信頼を裏切るような真似はしません」
「いいだろう。買うぜ。その魔石。その親子と引き換えだ」
「ありがとうございます。毎度どうも」
闇商人に魔石を渡される。黒く不思議な力を宿した魔石であった。
「それはお守りにされるとよろしいでしょう。ですが私のカンですが、クロード様。あなた様はいずれはその魔石を使う時がくる。そんな気がしてなりません。クックックック」
闇商人は笑った。
「こいつを使う時か」
あるとすれば……フィルドの顔がその時、クロードの脳裏に浮かんできた。
憎きフィルドに一撃を食らわしてやれるなら悪魔に魂を売ってもいいかもしれない。
とりあえずはクロードはその魔石をポケットに入れた。
「ともかくこれで商談は終わりだ」
「ええ。クロード様、またごひいきに」
こうしてクロード達は闇商人との取引を終えた。