市場で買い物中 闇市場について耳に挟む
俺達は商人ギルドにドワーフ製品を卸した。そして金貨2000枚という膨大な資金を得たのである。
大商人ゴンザレスと別れた俺達は王都アルテアで買い物に勤しむ事となる。俺達は食料品や衣類。それから鍛錬に使う鉱石などドワーフ国では手に入らないものを購入していく。
「っと……こんなところか」
購入した物品は空になったマジックボックスに収納する。相当な量であるはずだが、実に便利なものであった。
ドワーフ製品の利便性や性能は素晴らしいものがある。
「後は適当に王国を散策するか」
「「はい!」」
おつかいを終えた俺達は王都を散策する事となる。
◇
俺達が王都を散策していたころだった。そうそれはちょうど裏路地に通りがかった時の事だった。
男二人が会話をしていたのだ。
「知ってるか? なんでも闇市場の話?」
「ああ。危険なもんが色々と流れてきてるんだろ? それにやばい取引も行われてるらしいじゃねぇか」
「知ってるぜ。そのやばい取引。やばい薬から何まで手に入るらしい。最近では奴隷売買も行われているらしくて」
「ああ。しかもその取引に最近流行ってる盗賊団も関わっているらしいんだ」
男二人が会話をしていた。
「ちょっといいか。ルナシス、イルミナ」
俺は二人に声をかける。
「少し話を聞いてみたいんだ。今聞き逃せない事を話してて」
「「はい。構いません」」
「そこら辺、離れない程度に市場を見て回っていいから」
俺はそう言って、裏路地にいる男二人に声をかけた。
「すみません、少し話を聞かせてくれませんか?」
「なんだい君は?」
「何の話を聞きたいんだい?」
「さっきの闇市場の話です」
「闇市場か。俺らだって詳しく知っているわけじゃないよ。ただやばい取引が行われているって事くらいで」
「そうそう。薬とか、後は人身売買も行われているらしいんだ。盗難されたドワーフ製品もそこに流されているみたいで。商人ギルドは許可された製品しか仕入れないんだけど、やっぱり非合法な連中は安くドワーフ製品が買えるとなると、目の色変えて買っちまうよね」
「盗難されたドワーフ製品……それは最近活発になっている盗賊団の仕業ですか?」
「そうだろうけど。詳しくは知らないよ」
おそらくクロード達の盗賊団だろう。先日、盗賊を締め上げた時にクロードの話が出てきた。奴らはドワーフ製品を闇市場に流しているのだ。さらには人身売買にまで手を染めている可能性がある。
誘拐をしているのだろう。それだけではない。殺人などのもっと重い犯罪行為をしているのに違いない。
かつてはギルド長であったという事もあり、そこまでの事はしないとは思っていたが。人間堕ちる時はとことんまで堕ちるもののようだ。
「その闇市場での取引はどこで行われているのですか?」
「それは知らないよ。そんなに簡単に連中が場所を教えるわけがないだろう。やばい取引をやっているんだから。場所も日時も不定期で、その手の関係者だけに教えられて密会をしているそうだよ」
「そうですか……それは残念ですね」
俺は頭を悩ませた。クロードの問題はいずれは解決しなければならない問題だった。やつを野放しにしてく事はできない。きっと今後もっと大きな問題へと発展していく気がしてならなかった。
「ただひとつだけヒントになる事があるよ」
「ヒントですか?」
「ああ。ヒントだ。噂があるんだ。ここの大商人ゴンザレスさんの店に対抗するように大きくなってきたアルデヒドさんって商人のお店があるんだ。そこの商人はものすごい安売りで店を大きくしていったんだけど、そんなの普通は採算が取れないよね。だからやばいところから仕入れをしているんじゃないか? って噂だ」
「やばいところから?」
「ああ。闇市場だよ。正規の仕入れじゃないから安売りしても採算が取れて繁盛するんじゃないか、って噂だ。だけど客からすれば安くていいものが手に入ればいいから関係がないだろ。まあ、実際にやばいところから仕入れをしていたらきっと何かしっぺ返しを食らうんじゃないか、って俺らは思ってるけどね」
「ありがとうございます。貴重な情報」
「いえいえ」
「少ないですけど受け取ってください」
俺は金貨を一枚ずつ男たちに渡す。
「い、いやいいよ。受け取れないよこんなに」
「いえ、それだけ貴重な情報だったんで」
「いや。悪いね。また何かあったら言ってくれ」
「はい。是非」
話を聞いた俺はルナシスとイルミナのところへ戻った。商人アルデヒド、何かありそうだった。俺は探りを入れてみる事にした。




