【盗賊クロードSIDE】クロードと盗賊団罪なき家族を襲い食い物にする
平和な日常というのは何となく人間にとっては退屈で当たり前の事だと感じてしまう事が多い。
そこは山の麓にある一軒家の事だった。人里離れた家に、男と女。それから一人の娘が暮らしていた。
幸せな日常であった。娘はそろそろ15になる頃だ。身内びいきであるのは承知だが、美人な母に似て来て、娘は美人に育ってきた。
そろそろ嫁に行ってもおかしくない年齢だった。寂しくはあるが仕方がない。それが娘の幸せにもつながっているし、ゆくゆくは自分達の幸せになる。
父はそう思っていたし。母もそう思っていた。娘もそう思っていた。
この幸せで平凡な日常は何となくこのままずっと続くのだろうと。そう信じて疑わなかった。
――だが、時として災厄は突如、襲い掛かってくるものである。
バリン。突如、ガラス戸が割られ、何者かが襲撃してくる。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
娘が甲高い悲鳴をあげた。
「な、なんだ!?」
父は慌てた。突如の襲撃であった故に、備えが出来ていない。侵入してきたのは男達だ。明らかに盗賊のような恰好をした男達。武器を持っているし、普段斧を振るって身体を鍛えているからと言って、一体それがなんの役に立つかもわからなかった。
「な、なんだ!! お前達はっ!!」
「うるせぇ! 死んどけっ! おっさん!!」
「ぐほっ!」
盗賊に刃物を突き立てられ、父は膝をついた。腹から出血し、血の水たまりを作る。
「あ、あなたっ! い、いやっ! 何をするんですっ!」
「女は縛っておけっ! 女は闇市場で奴隷として高く売れるからなっ!」
奴隷商は基本的に法律で禁止されている。大抵の人間の国では。だが、法律で禁止されているからといって全く存在しないという事はない。
闇の市場で奴隷が売買されている事はよくある事であった。残念ながら法律で禁止されている事がかえって、その対象の価値を高める事がありうる。
ドラッグなどもそうだ。高い価値がある奴隷を売買し、利益を得るために人さらいをする連中なども往々にしてよくありえた。
今この場で起きている事がその通りの出来事である。
「へへっ。上玉じゃねぇかよ。お前達。よくやったぜっ」
金髪の男が言った。少女の顔面を嘗め回すように品定めをしている。男の名はクロードと言い、かつてはトップギルドであった『栄光の光』のギルドオーナーだった。
と少女にいったところで信じはしないであろう。
そんな堅気な仕事をしていた過去があったとはとても信じられない。それほどまでにその顔は悪意で歪んでおり、生粋の盗賊だとしか思えなかった。
「うっす。親分が親分になってからというもの、俺達も絶好調ですぜ」
「流石は元トップギルドのオーナーですぜ。頭の回転が違います」
「昔の事は言わないで欲しいが。確かにそうだ。よく探して調べたんだぜ。人里離れたところにある家で、襲われてもしばらく気付かれないようなそんな都合の良い物件。さらには若い娘つきだ。こいつは高く売れるぜ。母親の方もそれなりの値段で売れる。まだ若いからなっ」
クロードは舌なめずりをする。
「へへっ。奴隷として売るより前に、少しばかりお楽しみといこうぜ。ヤるの久しぶりだからさっきから息子が抑えきれねぇよ」
「や、やだっ! お、お父さん! お母さん! た、助けてっ! やだっ! やだっ!」
娘は抵抗をする。だが、盗賊にがっちりと身体を抑えられ、抗う事は困難であった。
「大人しくしてろっ!」
「へへっ。安心しな嬢ちゃん。初めてでもすぐに気持ちよくなれるからよっ。へへへっ」
盗賊達が囁くように語り始める。
「じゃあ、そろそろ始めるかっ。ご褒美のパーティーをよ」
クロードはカチャカチャとベルトをいじり始める。人間の本性。悪意が娘に襲い掛かってくる。
「やだっ。やだっ。いやだっ!」
娘は泣きわめく。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
決して届くことのない虚しい悲鳴が一軒家に響き渡った。