商人ギルド長との金額交渉
「お待たせしたね。大商人ゴンザレス、及びフィルド殿。お嬢様方」
俺達はギルド長室に入る。
「それでドワーフ製品の卸値はいくらになるんですか?」
俺は聞いた。
「単刀直入に言えば、こちらは金貨1000枚での仕入れを希望している」
商人ギルド長。アレクは答える。
金貨1000枚!! ドワーフ製品はそれだけの価値があるのか。俺は内心驚いていた。だが、本場の商人である大商人。ゴンザレスからすれば見解は異なっていたようだ。
ゴンザレスは渋い顔をしている。
「金貨1000枚じゃと! アレク殿。それは些かこちらを甘く見過ぎではないかねっ!」
「な、何かご不満かね。ゴンザレス殿」
「うちの鑑定士にも商品をあらかじめ下見させておいたが、軽く見ても金貨2000枚の価値があるとわしは踏んでおる」
「「「金貨2000枚!!」」」
俺達は驚き、声を張り上げた。
「くっ!?」
アレクは表情を歪めた。
「金貨2000枚。びた一文負けるつもりはない。出せないというのならそうだの。わしの方で借り入れをしてでも購入しよう。なにせこれだけまとまったドワーフ製品だ。簡単に元が取れるであろう」
ゴンザレスは余裕な笑みを浮かべる。
「わ、わかりました。ゴンザレス殿。金貨2000枚で構いません。その値段で商品を買わせて頂きます」
アレクは渋々ではあるがその提案を飲んだ。
「あ、あんな一瞬の交渉で金貨1000枚も違うなんて」
「ち、知識は力なんですね。そして無知は罪です。私なんて金貨1000枚も価値があるんだって知らずに喜んでいました」
ルナシスとイルミナは驚いた表情になる。
「ありがとうございます。ゴンザレスさん」
「なに。前にわしらを助けてもらった礼ができたというもの」
「そんなつもりでした事ではありませんが。でも、ありがとうございます」
「よかろうて。わしは君のように闘うのは強くない。だが、こういう世の中に対する貢献ができないわけでもない」
「あれだけの交渉。一瞬で金貨1000枚も違うんです。流石は大商人です。おかげ様ですよ」
「よせ。わしを持ち上げるでない。大した事ではない」
「いえ、大した事です。おかげでドワーフ国にとって大きな利益になりました。この外貨で必要なものをより買い付け、余った資金は蓄える事ができます」
「ふむ。何があったか知らぬが、フィルド君。君はドワーフ国と深いかかわりがあるようだの」
「そ……それは」
俺は口ごもる。
「言えない事もあるだろう。親しい関係だったとしてもなんでも打ち明けなければならないというわけでもない。フィルド君が話さないのも自分の為だろうし、わしの為でもあるんだろうて。深く詮索はせんよ」
「そう言ってもらえるとありがたいです」
「それじゃあ、わしが役立てる事はここまでのようじゃな。それではフィルド君。お嬢様方、また達者でな。また会おうぞ!!」
「はい!! ありがとうございました!! ゴンザレスさん!!」
俺達は商人ギルドで残る売買の手続きを滞りなく終えた後、市場へと向かう事となる。