行商人としてドワーフ製品の運搬をする
俺達はドワーフ執事に案内をされる。案内された場所のすぐ近くに鍛冶場があった。
キンコンカンコン。多くのドワーフが鍛冶に勤しんでいる。様々な武具や装飾品を鍛造していた。
ドワーフ達は王族を除けばこういった鍛冶職に就いている者が多いように感じる。執事のようなその他の職業も多く、兵士もいるが。やはりドワーフと言えば物づくりの種族という事で大方の間違いはないようだ。
「ここがドワーフの鍛冶場です。そして出来上がった製品を他種族の国で販売し、外貨を得ております」
ドワーフ執事は説明する。
「それで製品の在庫はどこにある?」
「そこにあります」
ドワーフ執事は俺達の背後を指さした。
「うわっ……」
「すごい沢山ありますね」
沢山の剣などの攻撃武器、盾や鎧などの守りの装備。それから俺がしている破邪のネックレスのような装飾品だ。指輪からイヤリング、ネックレス。などなど、様々なドワーフ製の物品が山積みになっている。
「最近は行商人が少なくなり、在庫過多になっているのです」
ドワーフ執事は嘆いていた。
「けど、こんなに沢山マジック・ボックスに入るのですか」
「入ります。それ! マジックボックスオープン! 目の前の在庫を全て吸収するのですっ!」
マジックボックスは瞬く間に在庫を飲み込んでいった。
「このマジックボックスは意思を持っております。中身を外に出したい場合も先ほどのように命令してください」
「便利ですね……」
ルナシスは驚いていた。
「はい。ドワーフ製の魔道具はどれも優秀です故」
「でもこれなら私達でも問題なく持ち運びできそうですね。フィルド様」
イルミナが嬉しそうに言ってくる。
「ああ。そうだな。これなら問題ない」
「こちらがドワーフ王の許可証です。こちらがあれば商人ギルドでも問題なく取り扱ってくれる事でしょう」
「ありがとうございます」
「いえいえ、礼を言いたいのはこちらの方です。そしてこれがこちらが買い付けて欲しいリストです。商人ギルドに物品を卸したお金でこちらの品物を買ってきて欲しいのです」
「お使いみたいですね」
イルミナが感想を語る。
「実際お使いみたいなものだからな……途中に盗賊の危険が襲い掛かるかもしれない、というだけで」
実際やる事は単純である。人の国。王都アルテアまで販売に行く、そして商人ギルドに在庫を卸す。そしてその金で買い物をして帰る。それだけの事だ。
「それでは皆様方、気をつけていってらっしゃいませ」
「はい。行ってきます」
「馬車の手配などはしなくてよろしいでしょうか?」
「ああ。いいです。多分歩いたほうが速いんで」
「は、はぁ……そうなのですか」
ドワーフ執事はあっけにとられたような顔をしていた。あまり意味を理解できていないらしい。『馬車より歩いたほうが速い』とはいったどういう事なのか、という感じではあった。
「それじゃあ、行ってきます」
俺達はドワーフ国を出発する。
「はい。お気をつけていってらっしゃいませ。エルフの姫君たち、そしてドワーフ国の救世主フィルド様」
ドワーフ執事は俺達を見送っていた。
その時俺は遠くから見ている視線に気づいていた。気づいてはいたが、気付いていない振りをした。
あのドワーフのちびっこ王女様の視線だ。どうやらあの王女様俺達の事が信用ならないらしい。
持ち逃げでもすると思っているのか……あるいは単純に実力を疑問視しているのだろう。
やれやれといった感じだ。
ともかく大した問題ではないので俺達は行商人として王都アルテアを目指した。
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