行商人としてドワーフ国の製品を売りに行く
「まずは諸君等にはドワーフ国の製品を持って、王都まで行って貰いたい」
「王都まで行くのは構いませんが、行商には許可証が必要でしょう」
「それは勿論、許可証はわしが発行する。それを持って王都まで行って欲しい」
「はい。わかりました」
「製品については後程説明しよう。それで製品を商品ギルドに卸したら金を受け取り、その身で適当に買い付けをして貰おうか。何よりも食料じゃな。ドワーフ国はこう洞窟の中にいるから食料に恵まれん」
ドワーフ王は頭に悩ませる。
「それに食事というのはドワーフにおける最大の娯楽でもある。色々な食料を買い付けて貰うとしよう。さらには衣類などの必要なもの、それから武具を作る上で必要な鉱石なんかも購入して帰ってもらおうか」
一体、どれほどの物を持ち歩かなければならないのか。いくら俺の筋力パラメーターが高くとも、限度というものがある。そんなに巨大なリュックサックがあるというわけでもないだろう。
「ドワーフ国王。俺達にどれほどの積み荷を持たせる気ですか? 馬車に載せるつもりでしょうけど、いくら何でも容量には限度があるかと思います」
「なんじゃ。お主ら、マジックボックスを知らないのか?」
「「「マジックボックス」」」
「ドワーフが所有している魔道具のひとつだ。かなりの大容量がひとつの箱で入る、便利な一品。後で製品を持つ時に手渡そう」
「はぁ……」
流石のドワーフだ。人間の国にはないような魔道具を所有しているらしい。ドワーフと言えばモノづくりの名人のような印象があったが間違ってはいない。
「それではよろしく頼むぞ。エルフの姫君達、そしてフィルド殿。我がドワーフ国の危機をどうか救ってくれたまえ」
「「「はい」」」
「ほら。セリス。お前からも頼まないか」
「ふん」
セリスは顔を背けた。背丈が低いため、怒っている子供のように見える。
「な、なによ! 人間! その顔はっ!」
「べ、別に……なんにも」
俺は頭を振る。
「し、しっかりやりなさいよ」
それが彼女なりの精一杯の言葉なのだろう。
「セリス! 我々の救世主になんて言葉遣いだ!」
「まあまあ。ドワーフ王。収めてください。彼女なりの精一杯の応援だったのかと思います」
ルナシスは微笑を浮かべる。
「う、うむ。我が娘ながら些か素直でないところがあっての。わしも手を焼いているのじゃよ。それではわしの部下にこれから販売するドワーフ製品とそれからマジックボックスの取り扱いについて、説明させるとしよう」
「「「はい!」」」
「それでは執事よ。来てはくれぬか」
「はっ!」
ドワーフの執事が姿を現す。背の低いおっさんが執事服を着ている。これまた多少滑稽である。笑うわけにもいかないが。
「私はドワーフ王の執事であります。ドワーフ王の手となり足となり、様々な雑事を行っております」
「はあ……」
「それでは執事よ。彼等を案内してくれ。手筈は聞いておるな」
「はい! わかっております。販売するドワーフ製品及びマジックボックスの取り扱いについて説明すればいいのですね」
「そうだ!」
「それではエルフ姫のお二人。そしてフィルド殿、参りましょうか」
「「「はい!」」」
俺達三人はドワーフ執事に連れられ、王城の外へと向かった。




