ドワーフ姫、セリス現る
「なんじゃ。どうしたセリス。申し遅れた、この者はわしの娘のセリスだ」
ドワーフ王はそう説明をする。
「改めましてセリスです。皆様、よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします。セリス様」
「よろしくお願いします~」
「よろしく」
俺達はそう返した。
「それよりお父様、正気ですか?」
「正気とは」
「エルフ族、ましてや人間の手を借りれば、大きな貸しとなってしまう恐れがあります」
「それは確かにそうだがの」
ドワーフ王は頭を悩ませる。
「それに我々ドワーフの問題です。我々、ドワーフで解決すべきだと思います」
「それは確かにそうだがの……エルフ姫の好意もまた無下にする事はできぬ。それにセリスよ。今ドワーフ国は飢えておる。それは外交により外貨を獲得できていないためだ。そしてその外貨で他国から輸入品を仕入れられないためだ」
「確かに、それはその通りではあります」
「ドワーフの王族にはプライドが必要じゃ。だがそれ以上に飢えている民を救わねばならぬ。それ以上に優先する事などなかろう。食料の問題はなくとも洞窟暮らしは何かと不便じゃ。快適に暮らすためには他国から輸入をしてこなければならんのじゃ」
ドワーフ王は先ほどの言葉を繰り返す。
「その為には盗賊問題により途絶えている貿易経路を復旧させ、ドワーフ製品を販売する。その事で外貨を手に入れ、そして輸入品を仕入れる。それが国のためになるのじゃ。それをやるのがドワーフかどうかなど大した問題ではないかと思わぬか」
「それは確かにそうであります。申し訳ありませんお父様――国王陛下。つまらないプライドによりこのような事言ってしまい」
「わかればよい」
「よろしくお願いします。エルフの姫君達。是非あなた達の力でドワーフ国をお救いください」
セリスはそう俺達に頼んでくる。最終的には折れたようだった。メンツよりも国民を優先か。あるべき王族の姿とは思えた。
しかし。なんていうかちびっこいくせに偉そうにしていて、粋がっている子供のようで些か滑稽に感じた。
その気持ちが俺の表情に微笑という形で現れたようだ。
「な、なんですか!? あなた、今私を見て笑いましたね!?」
それをセリスは見逃さなかったようだ。よく見ている。
「い、いえ。笑ってないです」
俺は誤魔化す。
「う、嘘です! 若干口角が吊り上がりました! 私達ドワーフが小さいと思って馬鹿にしましたね!」
「ば、馬鹿にしてないです」
な、なんだ。えらいつっかかってくる。やはり小さいって事をコンプレックスに感じているのか。
人だろうが何だろうが、コンプレックスを突かれると人は怒るものなのだ。
「むーっ! ふんっ!」
セリスは怒って顔を背けた。
「それでドワーフ王、どうやって行商をすればいいでしょうか?」
俺は質問する。
「ああ。その流れについて説明するとしよう」
こうして俺達はドワーフ王から説明を受ける事となる。
以降一日一話更新でお願いします。