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ドワーフ王との面会

「ここがドワーフの国ですか」


 ドワーフの国は通常の国とは大きく異なった作りをしていた。普通の国は平野にあるものだ。稀に山岳地帯にある国もあるにはある。だがそれでも空は見える事だろう。

 

 ドワーフの国は巨大な洞窟のようになっていた。つまりは空は一切見えないのだ。代わりとしては松明のような照明道具があった。光を放つ魔道具(アーティファクト)だ。


 ドワーフの工芸品における文明レベルは他種族より群を抜いている。その為、本来不便なはずの洞窟暮らしでも案外快適なのだろう。


 周りから攻められる心配がない分、灯りの問題さえなんとかなれば平野で暮らすよりもずっと快適なのかもしれない。


 ドワーフの住民たちは洞窟の中に、土造りの家を建てている。土造りの家は本来耐久性に乏しく、住居としてあまり好ましくはないのだが。


 洞窟という天然の護りと、その他にも様々な工夫により安全面の問題はないのだろう。


 恐らくは、である。詳しい事はドワーフに聞いてみなければわからない。俺もまだ来たばかりなのだ。


 しかし目につくのは男女共にその体の小ささだ。男も女も人間の子供程度の大きさしかない。ドワーフの男は大抵髭を生やしているため、何とか威厳を保ててはいるが。


 女性に至っては成年しているであろうにそこらにいる小さい女の子と区別がつきそうにない。


「ここがドワーフ王の城だ」


 土造りの大きな城が存在していた。


「さあ、中に入るがいいだ」


 俺達はドワーフ兵に促される。どうやら彼とはここでお別れのようだ。俺達はドワーフ王城へと入って行った。


 ◇


「来たか……旅の者よ」


 ドワーフ王が姿を表した。相変わらず小さい。威厳を保つためだろう。髭を生やし、尚且つ身長の半分くらいはありそうな王冠をつけている。

 彼がドワーフ王のようだ。


「ドワーフ王。お久しぶりです。ルナシスであります」


「イルミナです。お久しぶりです。ドワーフ王」


 二人は礼儀正しく挨拶をする。


「おお。久しぶりよの。エルフの姫君たち。元気にしておったか?」


「はい……元気にしておりました」


「ははっ……」


 イルミナは苦笑をした。イルミナは元気とはとてもではないが言える状況ではなかったのだ。


「お前達が最後に来たときはまだドワーフの女子くらい小さい時だったからのぉ。もう遠い昔のように思えるのぉ」


 ルナシスとイルミナは苦笑を浮かべる。一体何年前、いや、何十年前なんだ。という事は二人の年は一体何歳なんだ。とても考えたくない。

 世の中には知らない方が良い事が確実に存在していた。


「それで何をしにドワーフ国に来たのだ?」


「ドワーフ製の装飾品の輸入交渉に」


「わしを甘く見るな、エルフ姫よ。わざわざエルフの姫君二人がそんな交渉事にわざわざ足を出向くものか」


 ぐっ。図星だった。やはりドワーフ王か。小さい身なりではあるがそれなりに聡い。


「んっ!? そこの男はエルフではないようだな。人間だな」


「は、はい。フィルド様と申します」


「に、人間ではありますが我々エルフをお救いになった英雄です」


「ふむ。そうか……大方ハネムーン代わりにドワーフ国を観光したくなったのであろう。どうだ? そんなところであろう?」


 ハネムーンのくだり以外は殆ど正解だ。


「は、はい。実際のところその通りなのです。興味本位でドワーフ国を訪れてしまい申し訳ありません」


「よいよい。気にするでない。ドワーフ国とエルフ国は実に親密な関係じゃ。久しぶりにそなたらの顔を見れた事、わしは大変喜ばしく思うぞ」


 ドワーフ王は破顔する。


 やはりルナシスとイルミナを連れて来てよかった。やりやすい。すんなりとドワーフ国に入れたし、その後王に面会する事もできた。


「だがな。今はあまり観光案内をしている余裕はないのじゃ」


「盗賊の問題ですか?」


「知っているのか?」


「はい。先ほど門番をしていたドワーフ兵から聞きました」


「うむ。実はドワーフ国を訪れる行商人が減っているのだ。盗賊に襲われ、物品を奪われたり中には殺されたりする事件が増えているからの。だから危険を忌避して、あまりドワーフ国と貿易をせんようになってきたのじゃ」


 ドワーフ王は嘆いた。


「フィルド様……」


「なんだ?」


「ドワーフ国を困らせている盗賊の問題、解決してあげてはどうでしょうか? 例えばそうですね。私達が王国まで行ってドワーフ製品を販売してあげればいいのです」


「どうしてそこまでしなければならない?」


「問題が片付けば、ドワーフ国をゆっくりと観光できるじゃないですか」


「ま、まあ。それは確かにそうだ」


「それに、ドワーフ国とエルフ国は友好的関係にあります。友好国が困っているのを見て見捨てる事はできません」


 ルナシスとイルミナは訴える。俺は溜息を吐いた。


「わかった。その盗賊の問題、俺達も協力しよう」


「ありがとうございます。フィルド様」


「きっとドワーフ国も喜んでくれます。ドワーフ王、よろしければ私達がドワーフ製品を人の国まで出向き、販売します」


「な、なんだと! そなたらが余っている製品を売ってくれるというのか!?」


 ドワーフ王は驚いた。


「はい。盗賊が現れても、このフィルド様がきっとやってくれます。フィルド様は私よりももっとお強い方です。盗賊など物ともしませぬ」


 ルナシスは雄弁に語る。


「お父様。そのような余所者に力を借りると後々大きなしっぺ返しになって返ってくる気がします」


 物陰から一人の少女が姿を現す。金髪をツインテールにした少女。少女に見えるが単にドワーフの女性からすれば立派な成年なのかもしれない。強い眼差しをしている。他のものを寄せ付けないような。そんな雰囲気。


「セリス、か」


「お初にお目にかかります。エルフ姫のお二人、そして人間の男」


『人間の男』含みのある言い方ではあった。


「セリス・ウォン・ダイガルと申します。ドワーフ国の王女です」


 そう彼女はドレスの両端を摘み、礼儀正しく挨拶をしてきた。


「皆様よろしくお願いします」


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