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竜王バハムートの脅威

「なんですか……あれは」


 ルナシスは大抵の事には動じない性格をしている。だが、そのルナシスを持ってしても動揺を隠せていない。


 それほどまでに天空に現れた漆黒の竜、竜王と言われるバハムートの存在感、威圧感は半端ではなかったのだ。


「フィルド様……私、怖いです」


 イルミナは震えていた。人目がない状態であったのなら、俺にしがみついてきても不思議ではない。


 超高位のモンスター、それこそ神だとか、神獣だとか言われる格のモンスターはその存在自体が他者に状態異常変化を与える事がある。


 俺はレナードからもらった破邪のネックレスを装備しているため、その効果を受けてはいないが。


 他のパーティー(暫定だ、あくまで)メンバーの様子を見ていると、少なくない影響を受けているようだ。


 その効果とは『恐怖効果』だ。端的に言えば、LV以上に弱くなる、ネガティブスキルだ。自分の本来の力を発揮する事ができなくなる。バハムートから発せられる圧倒的なプレッシャーにより。


 恐らくはルナシスやイルミナのレベルだから(彼女達は80~90程度)この恐怖に耐えられているのだ。ちなみにレナードのLVは90以上である。


 生半可な人間であるならばもはや『恐怖状態』を超越して『恐慌状態』になっていても不思議ではない。実力を発揮できないどころではない。恐怖のあまり戦闘自体を行えなくなるのだ。


「あの男っ!」


 ルナシスは激しい目つきでクロードを睨む。


「やはりあの時に殺――」


「やめろルナシス」


 俺はルナシスの言葉を遮る。


「今更それを言ったところで何も変わらない。それにルナシス、俺はお前にそんな物騒な台詞を言って欲しくはない」


「は、はい。わかりましたフィルド様」


「はい。フィルド様。い、いかがすればよろしいでしょうか?」


「クロードは無視だ。あいつ自体には何の戦闘能力もない。バハムートを倒した後、対処すればいいだけの問題だ」


 だが、最大の問題なのは当然、そのバハムートを倒せるかどうか、という問題である。


 それが何よりもの大問題でもあった。俺はポイントギフターとして能力を発揮する。


発動したのは『解析』(アナライズ)と似たような能力だ。要するに相手のレベルやステータスを読み取る事ができる。


名称『バハムート』種族『竜種』属性闇


LV200 HP500000 MP40000


攻撃力:6765

防御力:6700

魔力:6578

敏捷性:5890


保有スキル『竜王の威圧』これは要するに先ほどから皆が受けている恐怖効果を発生させるものだ。『状態異常無効』スキル。『自動回復』スキル。『ダメージ無効化大(物理、魔法共)』。


「だめだ……あれは人の理を外れている。人間で、いや他の生物がどうこうできる存在ではない」


 あれをモンスターだと思う事が間違いだ。あれはもう、神と呼ばれるような恐ろしい存在。


 人類では到達できない、遥か高みにいる化け物だ。


「そ、そんなフィルド様ですらそうおっしゃるなんて」


「フィルド様でどうにかできないのでしたら、人間に相手ができる存在ではないという事です」


 ルナミスとイルミナは嘆いた。


「くっふっふ……どうだ? 手も足も出ないだろう? このバハムートの前にはな」


 クロードは悠然とこちらをみくだしてくる。


「このっ! 虎の威を借る狐も甚だしい! 即刻その首――」


「やめろ」

 

 俺はルナシスを制する。


「そんな物騒な言葉を使うなって。それにクロードをどうこうする意味などない。あいつは存在していないと思え」


「はい。フィルド様」


「やれっ。バハムート、お前の力存分に見せつけろ」


 命令して動いているのか……いや、そんな事はない。クロードにそんな力はないはずだ。高位のドラゴンを使役できるのは高位のドラゴンテイマーくらいだ。


 クロードのLVも職業もそれに適合しない。だからたまたまバハムートが動いた時にクロードがその台詞を発していたに過ぎない。


 バハムートはその巨大な口を広げた。口の中に禍々しい気が集まってくる。間違いない、ドラゴンブレスの系統だ。レッドドラゴンであったのならば火を放つだろうが。バハムートのブレスはもっと強力で禍々しいものであるに違いない。


「あっ……ああっ……ああっ」


 その時だった。公園に遊びにきていた女の子がいたのだろう。彼女はバハムートを見た瞬間、恐怖のあまり凍り付いていた。


 無理もない。ルナシスやイルミナでも影響を受ける程の効果だ。女の子が恐慌状態になるのは当然の事だった。


 バハムートの口先が向かっているのは偶然にも女の子がいるあたりだった。


 まずい!


 バハムートの口より放たれるのは暗黒のブレス。ダークフレアだ。女の子は死ぬなんてものじゃない。一瞬にして存在が消滅する。


 見捨てる事なんてできるわけがない。


「アヴァロン(絶対聖障壁)!」


 俺はエクスカリバーのEXスキルを発動させる。


 バハムートから放たれたフレアと、絶対的防御力を誇る、聖なる(アヴァロン)が激しいぶつかり合いをする。


 凄まじい爆発音と衝撃が響き渡る。


「ぐっ、ううっ!」


「「きゃっ!」」


 それは思わずルナシスとイルミナが悲鳴をあげ、怯むほど痛烈なものであった。


 何とか俺はバハムートのフレアを防ぐ。


 だがまずい。絶対聖障壁(アヴァロン)は無償の産物ではない。普通の使い手なら一瞬でMPが空になるほどの消耗をするのだ。


 俺だから何とか5回程度使用する事ができるが、レナード戦で一回。さっきもう一回使った。後3回程度しか使用できない。


 恐らくイルミナの防御魔法では防ぎ切れないだろう。だからバハムートのフレアに対する防御手段がなくなってしまう。


 それにエクスカリバーの切り札である『星落とし(ホーリーブレイカー)』は唯一あのバハムートに対抗しうるものになるだろう。


 条件としてはHPとMPの全消費。つまりはMP切れの状態では各段に威力が落ちる。


『星落とし(ホーリーブレイカー)』を放ってバハムートがまだ生存していたのなら、完全にアウトだ。


「レナードさん。そこの女の子を安全な場所へ」


「わかった。連れて行ったらすぐに戻ってくるよ」


「ええ……そうしてください」


 正直レナードがいたからと言って、簡単に勝てる相手ではないと思うが、それでもいないよりはマシであろう。


 レナードは女の子を連れて安全な地帯へ向かった。


「くっはっはっはっは! なんて力だ! これだけの力があればあのフィルドも殺しうる。ざまぁみろ! あの雑魚ポイントギフターめ。くっふっふっふっふ! あっはっはっはっはっはっは!」


「ちっ。うざったい」


「見ていろ。クロード。絶対に俺はこの竜王バハムートを何とかしてやる」


 唯一恐怖状態に陥っていない俺は聖剣エクスカリバーを構え、天空にいるバハムートを見据えた。


 





 

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