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最強にして最凶の竜

その男は唐突に、当然、予想外に姿を現す。


フードを被った男、異様な雰囲気を放っていた。


「おいおい。俺を除け者にして勝手に盛り上がってるんじゃねぇよ。おい」


 声が聞こえてきた。聞き覚えのある声、しかしあまりに予想外であったことから頭の中で一致しなかった。


「お、お前は……まさか」


「う、嘘……なんで」


「馬鹿な……」


「なんだよ、そりゃ。まるで俺がくたばったみたいじゃねぇかよ。なあ、おい」


 フードが下ろされる。素顔を表す。間違いない。クロードだ。偽物なんてことはない。


 本人であろう。


 なぜ。王都で指名手配を食らっているクロードが俺達の前に姿を現したのか。俺は理解が及ばなかった。


「なぜだ? なぜ、クロード。俺達の前に姿を現した?」


「ん? 何がおかしい? 何かおかしなことでもあるか? なぜそんなことを聞いてくる?」


 クロードは首を傾げる。頭でもおかしくなったのか。確かに前に会ったときも異様だったが、今の異様さは落ち着き払った異様さだ。前とは違って余裕がみられる。それが異様だった。


 俺とクロードのレベル差は明白だ。前にネズミとドラゴンの差だといっただろう。


 ネズミがドラゴンを目の前にして、こうも余裕でいられるのはあまりにおかしなことであった。


「ひとつ聞いておきたい。『栄光の光』の役員を殺害したのはお前か?」


 俺は聞いたとき、おとなしく答えるわけがないと思った。しらばっくれる、そう思っていたのだ。


 だが、クロードから返ってきた言葉は予想外のものであった。


「ああ。そうだ。俺だよ。俺がぶっ殺したんだよ」


「な、なぜだ? なぜ殺した? あいつらはお前の仲間だったはずだ」


「そりゃあもう。ギルドが解散するってことで、俺の元から去ろうとしたからだ。だからぶっ殺した。俺についてこれねぇっていうなら用はねぇからな。くっくっく」


「そんな理由で、人を殺したのかっ!」


 いくら嫌味な連中だったとはいえ、そんなむごい人生の最後を迎えてほしいとまでは思っていなかった。


 そこまでのことを彼らがしたとは思えない。


「ああ。殺した。ぶっ殺したよ。間違いなく、俺がぶっ殺した。それだけの理由でぶっ殺すには十分だったんだよ。くっくっく」


 余裕のある笑みを浮かべるクロード。


「疑問の一つ目は解消された。それで、最大の疑問だ。なぜ俺の目の前に現れた?」


「んーっ!? 俺が雑魚ポイントギフターのフィルドの目の前に姿を現すの、そんなにおかしなことか?」


「それは前のことだ。俺のポイントギフターの能力で、お前たちから経験値を返してもらった。結果、力関係は逆転。それどころではない、かつて以上の差ができてしまった」


「そうだな。そいつは確かにそうだ。俺はもう魔剣ウロボロスも重くて満足に扱えねぇし、魔法剣だって最下級の魔法でしか付与(エンチャント)できねぇ。レベルがいくらかは知らねぇが、多分一桁台で間違いないだろうな」


「力関係は正しく理解しているんだな」


 そこらへんは前に見せつけたはずだし。そのうえ、ギルドが解体されていく上で、思い知らされる局面が幾度となくあったはずだ。


「ああ。そうだな。今の俺は弱い。そして経験値が返却されたフィルド、お前は強い。そうだな、そこにいる剣聖ルナシス様やレナードのやつより強いかもな。二人を足してやっと届くか。いや、それでも届かないくらいかもしれねえ。くっくっく」


 クロードは笑う。しかし彼我の戦闘力の差を認めたうえでなお、余裕な笑みは崩れない。


「フィルド、お前はもう人類でも最高峰につええんだろうな。俺では足元にも及ばないくらい。つまりまともに闘った場合、俺がお前に勝てる可能性はゼロだ。限りなくどころではない、完全にゼロだ」


 なぜだ。なぜそこまで冷静に、客観的に状況を把握しているにも関わらず、俺の前に現れた。そのうえ笑みを絶やさない。


 今この状況いるのは俺だけではない。剣聖ルナシス、そしてその妹の魔導士イルミナ。さらには『白銀の刃』ギルド長、聖騎士(パラディン)レナードまでいる。強者揃いだ。


 万が一どころではない。億が一にもクロードに勝ち目は見当たらなかった。


 なのになぜ、わざわざ俺達の前に平然と姿を現す。自殺行為もここに極めりだ。


 もはやクロードの敏捷性では俺達から逃げることも不可能だ。だから目の前現れた事を理解出来なかった。


「俺はよお。思ったんだよ。別にフィルド、てめぇを殺すのが俺じゃなくてもいいって。結果としててめぇが死ぬんなら俺はそれでいいんだ」


「誰か、いるっていうのか? 助っ人が?」


「そうだな。まあ、そういうことになるな。いるぜ、強力な助っ人が。とはいえ人じゃないから助っ人とは呼べないかもな」


 クロードは笑みを浮かべる。懐から何かを取り出した。石だ。真っ黒い石。中には黒い波動が秘められていた。恐ろしいまでの魔力。


 一瞬みただけでそれが恐ろしいものであることが理解できた。


「そ、それは禁忌指定されている召喚石」


「くっくっく。よく知っているな。この召喚石はあまりに危険故に、禁忌指定されている召喚石なんだよ。世界を滅ぼしかねない、危険な化け(モンスター)が閉じ込められているからな」


 クロードは告げる。


「さあ、フィルド、始めようぜ。せいぜい愚かにあがいてくれよな」


「やめろっ! 俺だけじゃないっ! そんなことをすればこの王都から多くの犠牲者が」


「もう遅いんだよ。取返しなんてつかねぇ。だから!」


 クロードは召喚石を解き放った。


「俺はなんとしてでも、てめぇだけはぶっ殺す!」


「馬鹿野郎! やめろっ! 俺への私怨だけで、大勢の人間を巻き込むなっ!」


 しかし、時は既に遅かった。その化け物は解き放たれた。


「出でよ! 最悪にして災厄の竜!! 暗黒竜!! バハムート!!」


 膨大な闇の光を放ち、突如天空にその竜は姿を現す。圧倒的なプレッシャーを放つ暗黒の竜。


 国すら、世界すら滅ぼしかねないといわれる、最強にして最悪の竜だ。


「暗黒竜バハムート!! あの雑魚ポイントギフター!! フィルドの奴をぶっ殺しやがれっ!!」


 天空に現れた暗黒竜バハムートに呼応するように、突如天気が曇った。まるで夜なのではないかと思う程、厚い雲で覆われ、光が届かなくなったのだ。


 こうして俺達はクロードにより召喚された暗黒竜バハムートとの交戦を余儀なくされたのだ。


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