レナードとの一戦
「それじゃあ、行くよ。フィルド君」
レナードは聖剣デュランダルを構える。
来る。
世界最強の聖騎士であるレナードが本気で俺に向かってくる。その威圧感はレベルを失ったクロードの比ではなかった。
いや、レベルを失う前、高レベルの魔法剣士として遺憾なく力を発揮していたクロードが相手だったとしても、一体これほどのプレッシャーを感じただろうか。
そう思わざるを得ないほど、レナードが放っている気はすさまじかった。
これはいくら俺でも気を抜くわけにはいかない相手だった。
俺は聖剣エクスカリバーを構える。
「聖剣デュランダル。俊敏性強化!」
レナードは自身にバフをかけた。どうやら聖剣デュランダルの真価はバフ(強化)にあるらしい。バフ(強化)にも色々とあるが、大まかにいえばパーティー全体、集団に対する強化つまりは全体強化と自分にだけかかる、単体強化がある。
当然、全体強化の方がパーティー全体に効く為、便利ではあるが、単体強化は単体強化で大きなメリットがひとつあった。
対象を絞る分、強化量が多いのである。
消えた。通常の動体視力であればそう見えざるを得なかったであろう。レナードの移動速度は圧倒的な速さで、目で追う事は不可能であった。
ただでさえ身体能力の高いレナードが単体強化をかけると必然的にこうなる。
だが、俺はその限りではない。それでもなお、俺はレナードの動きを見失う事はなかった。
「デュランダル!! 筋力強化!」
振り下ろす瞬間、レナードは筋力強化を自身にかけてきた。ただでさえ、圧倒的に速い踏み込みの上に筋力強化までかけられ、その聖剣デュランダルの攻撃はすさまじい威力を発揮した。
「くっ!」
俺は聖剣エクスカリバーでその攻撃を受け止めた。瞬間、もの凄い、風と衝撃が発生する。
「きゃっ!」
「うっ!」
それは離れた場所にいるルナシスとイルミナが思わず怯む程、驚異的なものであった。
「ふっはっは! やるねっ! フィルド君、本気になった僕の攻撃をまともに受け止めたのは生まれてこの方、君が初めてだよ!」
「俺もここまでの強敵に会った事がありませんよ」
ギガレックスは脅威ではあったが、あれは単に体が大きい、力が強いというだけの脅威だ。レナードの脅威には技術の高さがある。駆け引きがある。
だから闘っていて面白みを感じる。
「フィルド君、僕は君にさらなる興味を抱いたよ。一体君はどうやってそれ程強大な力を手にいれたっていうんだ?」
「言う必要性はありません」
ポイントギフターの能力は黙っておいた方がいい。ただ経験値を倍増させるだけの便利な奴だと思われていた方が楽な場合が多い。
「いいさ。続きといこうじゃないか。はああああああああああああああああああああっ!」
レナードの剣と俺の剣が交錯する。それは世界最高峰の剣技だった。
どうする。流石にこのレベル、手加減したまま抑え込むのは難しいか。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「エクスカリバー!!」
俺は斬撃の瞬間。剣を地に突き刺した。
「なにっ!? 何をするつもりだ!? フィルド君!!」
戦場において、剣を地面に突き刺す。その愚行にレナードが一瞬怯んだ。
「エクストラスキル2(セカンド)! アヴァロン(聖障壁)」
俺はエクスカリバーの秘められた力を解き放つ。聖なる光により作り出された、絶対障壁がレナードの聖剣デュランダルを弾き飛ばす。
「なにっ!? う、うわあっ!」
思わずレナードは怯んだ。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「な、なにっ!? し、しまったっ!」
「はあっ!」
俺はレナードの身体を斬る。聖剣エクスカリバーによる遠慮のない一撃、人理を超えたレベルから繰り出されるその一撃は例え世界最強の聖騎士である相手でもひとたまりもない。
「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
聖なる光による一撃を食らい、レナードは宙を舞った。