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レナードとの一戦始る

 舞台をだだ広い公園に移した俺達は向かい合い、視線で火花を散らしていた。


「それでは、始めようか」


 俺の目の前で剣を構えるのはあの『白銀の刃』のギルドオーナーであるレナードだった。『栄光の光』が落ちぶれ、なくなった事から紛れもない現在のトップギルドである『白銀の刃』。

 しかもそのギルドオーナーが目の前にいるのだ。


 クロード達のように俺のポイントギフターとしての能力に甘えていた偽物ではない。本物の武人が相手だった。


 まさか噂に聞いていたレナードとこうやって対峙する機会(チャンス)があるとは夢にも思っていなかった。


 賭けているレア装備が欲しいから、という事ではない。俺もまた純粋にレナードと闘える事に喜びを感じていた。


 ギルドオーナーとしてレナードの手腕は高く評価されている。だが、それ以上に名高いのが聖騎士(パラディン)としての腕前だ。その強さは比類するものがない程で人類でも最強クラスに位置している。


 いわば知将であり武将、完全無欠の将。それがレナード・レオナールであり、頭だけでもなく、力だけでもない。武と知の両立。


 その隙のなさがレナードのギルドオーナーとしての最大の魅力であった。


頭だけでは人はついてこない。力だけでも人はついてこない。両方を兼ねそろえているからこそ、ギルド員はレナードを崇拝し、ついていくのである。


 俺は腰の鞘から聖剣エクスカリバーを引き抜く。溢れるばかりの聖なる気を放った。


 俺の聖剣エクスカリバーを見たレナードの表情が驚きに変わる。


「ほう……聖剣エクスカリバーか」


「知っているんですか?」


「ええ。聖剣エクスカリバー、有名な聖剣だもの。今ではエルフの国に保管されていると噂で聞いた事がある。それをなぜ君が?」


「色々あって」


「色々か。まあ、話したくない事もあるだろう」


「それよりなぜ聖剣エクスカリバーの事を知っているんですか?」


「それは簡単さ。僕が聖剣エクスカリバーと同じ位には有名な聖剣の所有者――いや、使い手だからだよ」


 レナードはもまた鞘から聖剣を引き抜く。それは聖剣エクスカリバーと同程度の力に感じる、眩い光を放つ剣であった。


「聖剣デュランダル。僕の相棒さ」


 レナードは語る。


「聖剣デュランダル」


 聞いた事がある、レナードは聖剣の使い手ではあると。基本的にレナードは所謂二刀流である。だがそれは二本の剣を同時に使うという事ではない。


 一本の剣は普通に使う時用。そしてもう一本は切り札としてとっておいてある、らしい。


 そしてその切り札は滅多には見せる事はない。普通に使う時の剣もまた、それなりの名剣ではあるが、その切り札となっている剣がまさか、かの高名な『聖剣デュランダル』とは、俺も驚きを隠せなかった。


「僕は聖剣デュランダルの使い手なんだよ」


「知りませんでした……まさか、あの『白銀の刃』のレナードが聖剣デュランダルの使い手だったなんて」


 切り札としている剣がある、という事は知っていたが、それがあの聖剣エクスカリバーと並ぶ、名高き聖剣デュランダルだったとまでは知らなかった。


「切り札はあまり見せるものじゃないんだよ。だからこそ僕は剣を二本所有しているんだ」


「どうして切り札としている聖剣デュランダルを抜いたのです?」


「そんなの決まってるじゃないか。答えはひとつだけだよ。フィルド君。君にそれだけの価値があると僕は見抜いたのさ」


 この男――レナード・レオナール。やはり侮れない。LVの高さに甘えていたクロード達とは人間としての格が根本的に違う。そう感じざるを得ない。


 そうか。聖剣デュランダルの使い手であれば聖剣エクスカリバーの事を知っていても不思議ではない。そういう事であった。


「それじゃあ、始めようか。そこの魔導士の女の子」


「は、はい!」


「名前はなんていうのかな?」


「イルミナです!」


「イルミナちゃんか……ルナシス様の妹君かい?」


「は、はい! そうです!」


「君は魔導士だろう? 爆裂系の魔法か何かを使って、合図をしてくれないかい?」


「は、はい。わかりました」


 イルミナは魔法を発動させる。


「フレアボム!」


 バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


 空中で爆発が起こった。音が響き渡る。


「さあ、行くよ、フィルド君」


 来る。


 クロードのような偽物ではない。本物の実力者、レナード・レオナール。世界最強クラスの聖騎士(パラディン)は最高峰の聖剣デュランダルを構えて。

 

 手加減の余地など微塵もなく、全力で俺に向かってきた。






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