【追放者サイド】クロード召喚石商人を襲い、破滅の召喚石を手に入れる
クロードはある場所にきていた。そこは人のいない、廃墟のような場所である。
「いやいや。どうもアル。『栄光の光』のクロードギルド長」
小太りでサングラスをかけた中年男が小走りでやってきた。
「ああ。この度は御足労ありがとうな」
「いえいえ、古くからのお付き合いでアル。気にするでないアル」
クロードには『栄光の光』として得ていたものの殆どを失ったが、それでも残っていたものがひとつだけあった。
それが人脈である。『栄光の光』でギルド長をしていた時の人脈だけはまだ残っていたのである。
この中年男は商人ではあるが、ただの商人というわけではない。彼は召喚石に特化した、召喚石商人という、専門商人であったのだ。
「それで約束のものは持ってきてくれたか?」
「ええ、勿論アルよ」
召喚石商人は召喚石を取り出す。真っ黒な召喚石だ。邪悪な光を秘めている。あふれ出るそのオーラから、それがただの召喚石でない事は直観的に理解する事ができた。
その召喚石は災厄の竜と言われる暗黒竜バハムートをうちに秘めた召喚石だ。
「こいつはうちらが扱っている召喚石でも規格外の一品アルよ。その力は神にも魔王にも匹敵するといわれている災厄にして最悪の竜アルね」
暗黒竜バハムートの召喚石はいわば非合法の召喚石である。あまりに危険すぎるので、危険指定がされている。
そういったアンダーグラウンドな商品の取引の為、二人は人のいない、廃墟のような場所で面会しているのだ。
「そうか。そいつは結構だ。こいつが約束していた金だ」
「おっと、ありがとうアルね」
クロードは召喚石商人に小包を投げ渡す。
「ん? 何、あるか!! これは!!」
小包に入っていたのは光り輝く金貨ではない。安物の銅貨である。
「はああああああああああああああああああああああああああああああ!」
クロードは走りながらダガーを繰り出す。
「ぶぼおっ!」
召喚石商人の胸に、ダガーが突き刺さる。
「そ、そんな馬鹿な……こんな事があっていいわけがないアル」
ドサッ。召喚石商人は地面に崩れ落ちた。血が水たまりを作る。
「フィルドよ。確かにお前は俺達の経験値を元に戻す事で最強になったかもしれねぇ!! それで経験値を失った俺は最弱になったのかもしれねぇ!!」
クロードは笑う。
「けどよ、別にお前を殺すのが、俺じゃなきゃいけない決まりはないよな。俺はお前が死んでくれればなんでもいいんだから。くっくっくっくあっはっはっはっはっはっは!」
クロードの独善的な哄笑が廃墟に響いた。
暗黒竜バハムートが封じ込められた召喚石が黒く、怪しく光る。