王都アルテアの三人で出来事 次なる目的地はドワーフ国に
俺達は王都アルテアに向かった。
「わー!! すごい多い人です!!」
イルミナは感嘆とした様子で叫ぶ。俺は気を取り直した。
クロードの事も役員の事も、そして『栄光の光』の事も全ては自業自得だ。俺は忠告したはずだ。俺がいなくなったらどうなるか。
それを聞かなかったのだから自分達の責任と言えよう。だから俺が心を痛める必要は全くないはずだ。
「フィルド様とお姉様はこんなに大勢の人が行きかう国で暮らしていたのですか!!」
「まあな」
「ええ。そうです。イルミナ」
「私には知らない事が世界にはいっぱいあったのですね。これもフィルド様が私の命をお救いになってくれたおかげです。ありがとうございます」
「お、大げさだよ、イルミナ。大体、こんな人混みで驚いていたら、これからの生活が驚きっぱなしだよ」
まあ、それも楽しくてよいのかもしれない。人生が新鮮な事の連続。俺達にとって当たり前の事でもイルミナにとっては新鮮に感じられるのだろう。
「とりあえず、適当に市場でも見て回るか」
「「はい!」」
二人は答える。
◇
俺達は何となく、武器屋に入った。実際には武器だけではなく、防具も扱っている店だ。
「へい。らっしゃい、らっしゃい。見ていってよ、お兄さん、お姉さんたち」
「フィルド様、いかがされたのですか?」
「そうだな。そろそろなんか防御も強化したいと思ってな」
「防御ですか?」
「ああ」
まあ、俺のレベルだとそんなに必要性ないかもしれないけど。エクスカリバーで思い知ったんだが、武器や防具は装備を変更するだけで強くなれるから、即席的なんだよな。
「けど、ここの装備、なんか変わっているな」
「へへっ。そこのお兄さん、目が高いぜ。なんたってここの武器や防具、輸入品だからな」
「輸入品!?」
「人間の鍛冶師が打った武具もあるけど、結構な割合がドワーフ国から輸入してきた武具なんだ。雰囲気が少し違うだろ」
「ええ、まあ、何となく」
見た目はそんなに違わないのだが、オーラが違った。感覚的な問題でしかないが。感じるのだ、その武具を見た瞬間。エクスカリバーを所有している事による効果かもしれない。
「ドワーフ国から輸入してきた武具は人間の武具とは何が違うんですか?」
「主にはその効果だな」
「効果ですか……へー」
「ああ。奴らは生粋の鍛冶師だ。作る武具には特殊効果が付与されている事が多い。伝説の武具なんかも、言い伝えではドワーフ族が作ったものだとされているんだ。だからその子孫であるドワーフの作った武具は、人間のものとは一味違うのさ」
「へー、ドワーフ国かー」
次の目的地に、ドワーフ国なんてどうだろうか。伝説の武具を作ったとされる、鍛冶師としての特性を持つ種族。
次の目的地として申し分ない。
「ふっふっふ」
ルナシスが笑みを浮かべる。
「な、なんだよ。ルナシス、急に笑って」
「知っていますか? エルフ国とドワーフ国は仲がいいんですよ」
「へー」
「ましてやドワーフ国もエルフの王女が二人もいるとなればきっと、温かく出迎えざるを得ないかと思いますわ」
イルミナも言ってくる。
「フィルド様――」
「ドワーフ国に行ってみたいですか?」
「うっ、行ってみたいが」
自分の心積りでは次の目的地はドワーフ国に決まっていたくらいだ。
「では、私達もご一緒させてはいただけないでしょうか?」
「きっとフィルド様のお役に立てると思うんです」
「はぁ~」
俺は溜息を吐いた。
「わかった。ドワーフ国に行くまでだぞ」
「はい! わかっております!」
「フィルド様と今後も行動を共にできること、とても幸福に思っております」
「だから、ドワーフ国までだと言っているだろうが」
俺の旅はソロライフなのだから。
「とりあえずは一週間くらいは王都アルテアに滞在しよう。それでしばらくしたら、ドワーフ国へ向けて出発しよう」
「「はい!」」
「お優しいんですね。フィルド様、なんだかんだ言って」
ルナシスが含みのある笑みを浮かべる。
「ん? なんでだ?」
「ずっと閉じこもっていたイルミナに人間の世界をしばらく見せたいのですよね?」
「ば、馬鹿をいうなっ! そんなわけあるかっ! エルフ国で疲れたし、俺も少しばかり休憩したいだけだ!」
「ふーん。そうですか。そういう事にしておきます。うっふっふ」
「くっ」
なんだか、見透かされているような笑みだな。俺達は王都アルテアにしばらくいた後、ドワーフ国を目指して、出発する事となった。