クロードとの思いもせぬ再会
「るんるん♪」
「な、なにをそんなに楽しそうなんだ、ルナシス」
「そんなの簡単です。想い人と一緒にいられるだけで、女の子は嬉しいものなのです」
「女の子って……エルフだから結構年いってるんじゃないか?」
エルフだし俺の数倍年上だったりするのかもしれない。
「ひ、ひどいですっ! フィルド様っ! 淑女に年齢を聞いてきますか?」
「わ、悪いな。地雷だったか」
知らない方がいい事もあるだろう。
「変に長く生きていると思われて、フィルド様に妹のように思われなくなったら、私嫌です」
「そうか……」
やっぱり結構俺より年上なのか。見た目が年下にしか見えないというだけで。その点触れないでおこう。
王都アルテアへと向かう、道中の事だった。俺達は思いがけない人物と再会する。
「おいおい……フィルド、随分と幸せそうにしてるじゃねぇか。なあ、おい」
一人の男が現れる。金髪をした嫌味な男。忘れるはずもない。俺がかつて勤めていたギルド『栄光の光』のギルドオーナー、クロードだ。
「これがあのフィルドか。とてもそうは思えねぇな。隣にいるのは剣聖ルナシス様だし、もう一人は誰だ!? 随分ぺっぴんさんじゃねぇか! ルナシス様の妹か? よく似てやがるぜ」
クロードは二人がエルフだという事は知らない情報だ。普通の人間にしか見えていない事だろう。
「……クロード。どうしてお前が」
「あの童貞くさかったフィルドがこんなにモテるとは思ってもみなかったぜ。なぁ、聞いてもいいか? どんくらいヤった? 気持ちよかったか? 聞くまでもないか。さぞ気持ちよかっただろうな。そんな綺麗な女好き放題にできるんだからよ。クックック」
クロードは壊れたような、不気味な笑みを浮かべる。
「気持ちよすぎて、俺の事なんてすっかり忘れちまってただろうなぁ。俺なんて眼中になくなっちまったんだよ。レナードだけじゃねぇ、フィルドだってそうだ。そうだろ? なぁ、おい」
「お、お知り合いの方ですか」
イルミナが怯える。クロードの様子は普通ではなかった。
「昔の知り合いだ。何の用だ、クロード。『栄光の光』はどうした?」
「ああ。『栄光の光』なら解体されてなくなったよ」
「……そうか。他の役員達は?」
「あいつ等ならいなくなった」
『いなくなった』俺はその言葉に含みがあるように感じた。
「そうか……いなくなったのか。それでクロード、俺に何か用か?」
「用ならあるぜ、俺にはたんまりとな。ぐっはっはっはっは!!」
クロードは壊れたように笑う。
「これからてめぇにするのはただの逆恨みだよ!! 逆恨み!! ゆるせねぇんだよ!! 俺が不幸のどん底に落ちているのに、フィルド、なんでてめぇが良い女連れて、充実した人生歩んでるんだよ!! クックック!! アッハッハッハッハ!!」
壊れたようにクロードは笑う。
「あの雑魚ポイントギフターのフィルドが幸せそうで、なんで俺が虫ケラみてぇに地を這わなきゃいけねぇんだ。こんなのおかしいだろ? そうは思わなねぇか?」
「……フィルド様」
「大丈夫だ。あいつはもうかつてほどの脅威ではない」
それは前に闘った時に証明済みだ。それでもまだ向かってくるというのか。
「へへへっ!! 死にやがれっ!! フィルド!!」
クロードは突如数本のナイフを投げつけてきた。毒でも塗ってあるのだろう。
「エアシールド!!」
イルミナが魔法を発動する。風の護りがナイフを落とした。
「はああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
間髪入れずにクロードが斬りかかってくる。ダガーを突き刺そうとしてきた。だが、俊敏さがあまりに足りなかった。動きが遅すぎる。
「はあっ!」
「げふっ!」
ルナシスに蹴られ、クロードは地面に転がった。
「フィルド様を害する者を私は何人たりとも許しません」
「がはっ……げほっ、ごほっ」
腹を痛烈に蹴られ、クロードは悶絶していた。
「フィルド様、いかがされますか? この男。よろしければ私が――」
俺はルナシスの言葉を遮る。
「よせ、ルナシス。お前が手を汚す程の価値がこの男にはない」
「へへっ……どうした? 殺さないのか? 俺みたいな雑魚、殺すまでもねぇっていうのか?」
「行くぞ……どうせこの男には何もできはしない」
「「はい」」
俺はクロードを無視して、王都アルテアへ向かっていく。
「許せねぇ! あのレナードと同じでまた俺を無視しやがって!! あのフィルドの奴まで!! 許せねぇ!! 殺してやる!! ぜってぇにぶっ殺してやるからなっ!! くっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
クロードは壊れたように笑い続けていた。
今日から3章王都混乱編です。
連載2週間経過したんで2話更新に落とさせて貰えればと思います。
1カ月経過で1話更新など。
よろしくお願いします。