表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/95

フィルド、エルフの国を出る覚悟を決める


 宴会(パーティー)が始まった。これからは所謂社交界のようなものだ。


 特別プログラムなどは用意されていない。基本的に自由に飲食して良い時間ではあるが、俺に限ればそうはいかないらしい。


 突如、着飾った少女達が俺に詰めかけてきた。どうやらこの場にいるのは王族か、基本的に貴族の人間らしい。つまり達は彼女達はエルフ貴族の娘という事になるであろう。


「あれがフィルド様なの!?」


「きゃあーーーーーーーフィルド様よ!! 英雄フィルド様!!」


「な、なんなんだ?」


 食べ物を口にしている暇などない。瞬く間に俺の周りには大量のエルフ少女が詰めかけてきた。


「英雄フィルド様、少しお話をよろしいでしょうか?」


「お、お話? どんな?」


「この度、どのようにしてエルフの国をお救いになったのか、武勇伝をお聞かせ頂きたいのです」


「ぶ、武勇伝?」


「はい!! エルフの騎士団を連れて北へ向かわれたのは聞き及んでいます。何でもエルフ騎士からは大きなモンスターを倒されたと聞き及んでいます」


「ま、まあ。それは間違いはないが」


「どのように倒されたのですか!? ご本人からお話を伺ってみたくて」


「まあ、何て言うか、普通に」


「普通にですか!? そんなモンスターを普通に倒せるのですか?」


 何て説明をすればいいのだ。克明に話をすればいいのか。


「北の平野に辿り着いた俺達の前に、恐竜(レックス)種の中でもとりわけ大きなモンスターが現れたんだ」


「恐竜種? それはどのようなモンスターなのですか?」


「ドラゴンはわかるだろ? あれと違って空を飛べないし、火も吹かないけど、とりわけ馬鹿でかい、ドラゴンみたいなモンスターだ」


「まあ、そんなモンスターをお一人で倒されたのですか!?」


「一人じゃない。皆の力があってこそだ」


「でもフィルド様のお力がなければそのモンスターを倒す事はできていないのでしょう?」


「そこは流石に否定できないかな」


 確かにルナシスはともかく、騎士団長含めエルフ騎士団は何の戦力にもなってなかった。逃げ惑っていただけだ。だが経験値の取得から考えると別にそれでも一向に構わなかった。

 その場にいてくれただけで助かったのは事実だ。俺のポイントギフターの経験値を2倍にする効果からしてパーティーの参加人数は多い程好ましいからだ。


 彼らの存在には十分に意味があった。だが戦力として意味があったかというと首を傾げるより他にないというだけだ。


「そんな強大なモンスターを倒されるなんて、フィルド様はお強いのですね」


「そう言って貰えると嬉しいよ」


 俺は苦笑しつつ答える。


「凄いですわ。私、強い殿方って、大変好みなんですの」


「お、俺は人間だぞ。何言っているんだ?」


「種族など関係ありません。強い殿方はどの種族であろうと、女として心惹かれるものなのです」


「そうか?」


「そうです! あーあ。フィルド様、素敵だから、ルナシス様とイルミナ様とご結婚なさらないのでしたら、私、すぐに花嫁候補に立候補したのに」


「わ、私もですわ。でも流石に私でもルナシス様とイルミナ様では分が悪いですわ。だってお二人ともエルフの姫君であり、とても素敵な女性ですもの」


「フィルド様!! 三番目でいいんですっ! 私も妻にしていただけないでしょうか!?」


 一人のエルフ少女が立候補してくる。


「ず、ずるいっ! じゃあ、四番目!! 私は四番目でいいんですっ!!」


「わ、私も五番目でいいんでっ!」


「私は六番っ!」


「おいおい……ちょっと待ってくれよ。そんなに来られたって俺困るよ」


 こんな怒濤の如く迫られると気後れするな。それにルナシスとイルミナには悪いし、国王にも王妃にも悪いのだが、別に俺はこのエルフの国に留まるつもりはないのだ。ルナシスとイルミナとも結婚する気はない。王になるつもりなんてさらさらないのだ。


 俺は溜息を吐いた。


「何をやっているのだ? ミレーヌ」


「お父様」


 そこにタキシードを着た中年エルフがくる。間違いない。甲冑は着ていないが、エルフの騎士団長だ。っていうか、この娘達の中に騎士団長の娘がいたのか。


 やっぱり騎士団長も貴族の血筋か何かなのか。実績だけではなれない、貴族でしかなれない役職なのやもしれぬ。


「フィルド様に求婚していたところです」


「なんだと!」


 怒ったのだろうか?


「それは素晴らしい!! 相手は次期国王になられるお方だ!! これで我が家は安泰だ」


 俺はずっこけそうになる。


「フィルド殿!! 娘、ミレーヌをよろしくお願いします」


「は、はあ」


 よろしくされても困るんだがな。


 潮時だな。今日の晩にエルフの国を出よう。挨拶も何もせずこの場を去るのは礼を欠いているかもしれないが致し方ない。


 なぜなら、このまま俺がエルフの国にいたらルナシスとイルミナと強引に結婚させられる事だろう。


 エルフ国に留まらせる為に。


 だがそれは俺が最も嫌っているところである自由からの束縛である。自分の本心と矛盾している。


 それは俺にとって好ましい事ではなかった。


 だから俺はこの日の夜に、エルフの国を出て行く事を心に決めた。


 ルナシスとイルミナにもなにも告げず、忽然と姿を消す事にしよう。置き手紙くらいは置いても良いか。


 気づいた時は蛻の殻という寸法だ。俺は今晩、エルフの国を後にする事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


ここまで読んでいただいた皆様にお願いです!

↑の☆☆☆☆☆評価欄↑を

★★★★★にしていただけると作者の大きなモチベーションになります!


もちろん、ブックマークも嬉しいです! 引き続きよろしくおねがいします!



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ