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エルフ国をあげた盛大なパーティーが開かれる

エルフ国を襲っていた危機は過ぎ去った。そしてそれから1週間の時が過ぎようとしていた。その日に、日々準備をしていた祝いの宴が開かれる事になったのだ。


危機が過ぎ去った後、エルフの民からは溢れんばかりの笑みがこぼれてきた。


その様子を見ただけで俺は自分のした事を誇らしく思ったし、やってよかった。


偶然の訪問ではあったが、それがエルフの民を救う事に繋がったのだ。自分がこの国を訪れなければ、多くの人命が失われたと思うとぞっとする。


 俺達はエルフ城の広間に集まっていた。シャンデリアが煌めき、音楽隊が流暢な音楽を奏でる、そこは素敵なパーティー会場となっていた。当然のようにテーブルの上には豪華な料理が所狭しと並んでいる。


 俺も当然のようにそれなりのドレスコードにしなければならず、否応なく貸与されたタキシードを着る事となる。


「あの人がエルフの国を救ってくれたフィルド様だわ」


「あの人が我々を救ってくれた英雄」


 周囲のエルフ達がざわめき立つ。


「くっ……」


 俺は人間だ。当然エルフのように耳が尖っているわけではない。人間の英雄がエルフの国を救った、となれば人間を見ればすぐに合点がいく事であろう。


 今このエルフの国には俺以外に人間などいないのだから。人間を見れば、それがすなわちエルフの国を救った英雄なのだとすぐに理解できてしまう。


「フィルド様!! お待たせしました」


「ああ……」


 別に待ってないんだがな、という言葉を飲み込む。ルナシスはドレスを着ていた。青色のドレスだ。


「いかがでしょうか?」


 ルナシスはどちらかというと清廉なイメージがある。そうなると青のドレスはよく似合っていた。青のイメージ、それは空か、あるいは海を思い浮かべる。


「似合ってるよ」


 純粋にその感想を述べる。


「そうですか! 嬉しいですっ!」


 ルナシスは抱き着いてくる。


「お、おい! ルナシス、抱き着くな。皆、見ているぞっ!」


「構いません! フィルド様、だって私達はそういう関係ではないですかっ!」


 ルナシスははしゃいでいた。


「落ち着け。まあ、確かにエルフ国が救われたし、妹のイルミナの命も救われた、だからはしゃぎたくなる気持ちもわかるが」


 俺だって少しは浮足立っている。それだけの大仕事を終えてきたのだ。


「フィルド様!」


 その後、イルミナも姿を現す。


「イルミナ……」


 イルミナは白のドレスを着ていた。これも彼女によく似合っていた。白はもっとも純粋で無垢な色だ。無垢な彼女のイメージに寸分の違和感もない。


「いかがでしょうか? フィルド様」


「ああ。似合っているよ、イルミナ」


 嘘ではない。純粋な感想だ。


「まあ、嬉しいです! フィルド様」


 イルミナも俺の腕に抱き着いてくる。


「な、なんだよ、イルミナまで」


「私、夢みたいなんです。こうしてドレスを着て、パーティーに出れるのが。だってずっと床に臥せていましたから。てっきりそこで一生を終えるものだと」


「そうか……」


「これもフィルド様のおかげです。ありがとうございます」


 イルミナは笑みを浮かべる。


「ああ。そう言って貰えて嬉しいよ」


 しかしエルフ国の王女二人に囲まれるって贅沢なシチュエーションだよな。他の男達の嫉妬ややっかみが怖いくらいだ。


「あっ、お父様とお母様です」


 高台に国王と王妃が登って行った。


「皆の者、静粛に」


 皆、静まり返る。


「それではこれよりエルフ国が危機より救われた事を祝し、乾杯とさせてもらう。エルフの森の魔力は民の成長(レベルアップ)により回復した。今後1万年は安泰のようだ」


 パチパチパチ、拍手が響く。皆危機が去った事を喜んでいるようだ。


「乾杯の前にだ。この度、エルフ国を救ってくれた人間の英雄、フィルド殿を皆のものに紹介しよう。フィルド殿、こちらまで来てくれないか」


「は、はい」


 俺はエルフ王のもとへ向かう。


「フィルド殿、この度はよくぞ、我がエルフ国を滅びの危機より救ってくれたな。貴公の活躍ぶりは聞いておる。フィルド殿のおかげで我々エルフ国は救われたのだ」


「え、ええ……まあ、恐縮です」


「それではフィルド殿、まずはエルフ国を救った褒美を与えよう」


「褒美ですか?……」


 はあ、なにかな。金銀財宝とかかな。そんなに金には関心がないんだが、あるにこした事はないし。持ち運びする事を考えると、あまりかさばるものは欲しくはない。


 しかしエルフ王から出てきた言葉は俺の予想を裏切る言葉だった。


「フィルド殿、貴殿にエルフ国の王位継承権を授ける!」


「な、なに言ってるんですか!! おーいけーしょけん!!」


 それはなんだ。俺にエルフ国の国王になれって言っているのか。人間である俺が。


「ああ。貴殿には私の後を継ぎ、是非このエルフ国を率いて欲しい。どうやらルナシスとイルミナは貴殿に好意を抱いているようだ。どちらかを娶り、ゆくゆくは引退したわしの後を継いではくれぬか?」


「で、でも!」


「「お父様!!」」


 ルナシスとイルミナが乱入してくる。


「んっ? なんだ!?」


「フィルド様の妻になるのは私です!!」


「い、いいえ!! お姉さま!! 私です!! まずフィルド様に妻にして欲しいとお願いしたのは、私ですから!!」


「こら!! 風呂場の喧嘩を蒸し返すな」


「風呂場だと!! フィルド殿……ルナシスとイルミナと入浴をともにしたのか?」


「うっ!! し、しまった!!」


 墓穴を掘った。


「年頃の娘と入浴を共にするとは……これはもうフィルド殿には責任をとってもらわなければなぁ」


 エルフ王はにやりと笑った。


「そ、そうですそうです!! フィルド様には私達の裸をみた責任をとってもらいたいです!!」


「フィルド様!! 責任取ってくださいね!!」


「ふ、ふざけるなっ! お前達が頼んでもないのに勝手に裸で入ってきたんだろうが!!」


 俺は嘆き、叫んだ。


「致し方ない。二人とも譲る気はないようだ。よろしければフィルド殿、ルナシスとイルミナ、二人の娘を貰ってはくれぬか? 二人を妻とし、我が国の国王として民を率いてくれ」


「「よろしくお願いします、フィルド様」」


「ちょ、ちょっと!! なんなんですか!! これは」


「娘達が幸せそうで、お母さん、嬉しいわ……」


 王妃は涙を流していた。くっ、国王は俺を囲い込もうとしているんだ。俺がいれば何かあっても、例えばエルフ国が侵略されても安泰だから。そういう理由もあるのだろう。


 どこが褒美だ。自由でありたい俺からすればしばられるのは罰ゲームだ。


「それでは、フィルド殿のお気持ちが変わらぬうちに、三人の式をあげようか。盛大な結婚式を!!」


「「はい!! お父様!! よろしくお願いします!!」」


 二人は頭を下げている。


「娘達の晴れ姿が見れて、お母さん嬉しいわ。幸せよ」


 王妃は涙を流していたハンカチで涙をぬぐう。


「式はそうだな。一週間後にしようか。それまではフィルド殿は国賓として扱おう。我がエルフ城で存分にくつろいでくれ」


「お、俺はその……」


 だ、だめだ、とても断れるような流れではない。このままでは押し切られる。


「さあ、ではフィルド殿への褒美も渡したところであるし、皆の者、杯を持て」


「はい。フィルド様」


 グラスを渡される。赤い飲み物だ。赤ワインのようだ。今更成年かどうのこうのいうつもりもない。国によってルールは異なるし。18歳の俺でも成人扱いして、酒を飲める国は多く存在していた。


「あ、ああ」


 俺はグラスを受け取る。皆、グラスを持った。


「それではエルフ国の危機に救われた事、そして英雄フィルド殿の活躍を讃え、杯を鳴らそうではないか!! 乾杯!!」


「「「「乾杯!!」」」」


 小粋の良い音が鳴った。グラスの鳴らされる音だ。こうして祝いのパーティーが開かれたのである。





更新時間変更します


※現在 朝6時 昼12時 夜18時一日3回更新中。


考えなしに事前にタイトル変更して申し訳ありません。本日の18時、三回目となる投稿でエルフ国編完結ですのでタイトル変更などさせていただければと思います。

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