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【追放者サイド】かつてのライバルギルドのオーナーと遭遇する

「な、なんだって!! てめぇ! 今、なんて言いやがった!」


「す、すまねぇ、だから、クエストに失敗しちまったんだ」


 クロードは謝る。謝っているのはクエストを流した冒険者達だ。彼らがクエストを冒険者ギルドから元受け、クロード達、ギルドから依頼を受けれないような曰くつき冒険者に流していたのである。


「す、すまねぇじゃねぇ! どうしてくれるんだよ! ええっ!?」

 

 当然冒険者達は怒る。


「俺達がギルドになんて報告すればいいんだよ!! ジャイアントラット! でけぇネズミ一匹討伐できなかったって言えばいいのかよ!」


「だ、だから言ってるだろ、本当にすまねぇって!」


「謝って済む問題じゃねぇだろ……なあ、そこの女」


「な、なによ?」


「結構、良い身体してるじゃねぇか」


 男達は舌なめずりをした。


「性格は悪そうだけど、顔は結構綺麗な顔してやがるぜ。おっぱいもでけぇしよ! キキキッ!」


 冒険者達はニタニタとした笑みを浮かべた。


「落とし前つけろよ。その女一晩貸せよ。確か『栄光の光』のドロシーとか言ったか」


「お嬢さん、一晩俺達の相手をよろしくな。キキキッ」


「ふ、ふざけないでよ! なんで私があんた等の相手なんて」


「ふざけんな! てめぇら! 俺らを舐めてるのか!」


「あんなネズミ一匹倒せねぇ奴ら舐められて当然だろうが!」


「そうそう。何があった知らねぇけどよ。あの『栄光の光』も落ちるところまで落ちたよな。キキキッ!」


 核心をつかれ、クロードはキレた。


「ふざけんなっ!」


 クロードは冒険者達に殴り掛かる。


「なんだっ!! やるっていうのかっ! おらっ!」


「ごほっ!」


 クロードはボディーブローを食らい、悶絶した。思わず胃液を吐き出しそうになった。


「落とし前だ! てめぇをボコボコのサンドバックにして、それでストレス解消させてもらう!」


「キキキッ! やってやるぜ!」


「ぐはぁっ!」


 顔面を殴られ、クロードの口から鮮血が飛び散る。


「ちょ、ちょっと! ボブソン! あんたなんとか止めなさいよ!」


「い、嫌だ! と、止めに入ったら今度は俺が殴られる! こ、殺されるかもしれないっ!」


「ふ、ふざけないでよ! この意気地なし!」


「み、皆さん! どうかやめてください! クエスト失敗したのは我々も申し訳なく」


 カールが何とか止めに入った。


「うるせぇ! すっこんでろ! この眼鏡!」


「ぐわあ!」


 カールも殴られ、かけていた眼鏡が地面に転がる。


「てめぇもボコられてえのかっ!」


「く、くそっ!」


「ボブソン! 私、警備兵を呼んでくるわ」


 王都アルテアには警備兵団という治安維持機能があった。当然のように暴力行為は法律で禁止されている。そういった犯罪行為を抑止する統治機能は世界中のどこの国でも見受けられた。


 亜人種でもそれに近い制度や仕組みは存在する事が多い。暴力を制するための治安維持機能は当然のように存在していた。


「わ、わかった。俺も行く」


ボブソンもドロシーについていこうとする。


「一緒にいってどうするのよ。どさくさに紛れて逃げようとしているでしょ! あんたはなんとかクロードを助けなさいよ!」


「う、うむ!」


「時間がないわ! 私行ってくる」


 ドロシーは警備兵団を呼びに行く。


 ◇


「おらっ!」


「ぐあっ!」


 顔を殴られ、クロードは吹き飛ぶ。


「おらおらっ! まだおねんねには早すぎるぜ!」


 冒険者はクロードを起して、再度拳を浴びせようとする。既にタコ殴りにあったクロードの顔はパンパンになり、原型をとどめて居ない。


「ほらよ! もう一発よっと!」


「お前ら! 何をしているっ!」


 そのうちに警備兵団が現れた。


「や、やべぇ! ずらかるぞっ!」


「ああ!」


「待てーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 警備兵団に追いかけられ、冒険者達はとんずらしていった。


「クロード!!」


 ドロシーが駆け寄る。


 タコ殴りに合い、見るも無残なクロードの姿があった。顔は腫れ上がり、痣ができている。見えないところもあざだらけで骨折しているところもあるかもしれない。


「ま、待ってください! クロードさん! 回復魔術(ヒーリング)!」


 カールは回復魔術(ヒーリング)をかける。


「だぁからぁ……きかねぇ……っての」


 頬が腫れているため、上手く発声できていないが、何とか意味は理解できる。


「それでも何もしないよりはマシです」


「だぁしぃか……に」


 確かにと言っているようだ。


「後でもっとまともな回復術士(ヒーラー)のところに連れて行きましょう」


 ドロシーは言う。


「ドロシーさん! それじゃまるで僕がまともな回復術(ヒーラー)じゃないみたいじゃないですか!」


「実際そうじゃない……そこを否定しても始まらないわよ」


「……そうですね」


「ああ」


 皆溜息を吐いた。自分達は弱くなったと思ったが、こんなに弱くなったとは思ってもみなかった。

 

 ◇


 それは一般の回復術士が営む治療院にクロードを連れて行こうとした時の事であった。運命の出会いは唐突に訪れる。


「はぁ……はぁ……はぁ」


「しっかりしてよクロード。治療院はもうすぐよ」


「ああ」


 カールの回復魔術(ヒーリング)で微弱な回復をしたクロードはドロシーに肩を借り、何とか歩みを進める。――と。その時だった。


「お、お前達は……」


 数人の冒険者たちが目の前に現れる。ばったりと遭遇したのだ。


「『白銀の刃』の方々ではないですか……」


 カールは驚いた表情でそういう。ギルド『白銀の刃』。トップギルド『栄光の光』とずっとトップの座を争っていた、いわばライバルギルドである。

 

 中央にいる銀髪の美青年。レナード・レオナール率いるギルドだ。かつてはライバルギルドという事で『栄光の光』と『白銀の刃』は良く比較もされた。


そしてギルドの営業成績などでも熾烈な競争を繰り広げてきたのである。


その結果としてつい最近『栄光の光』は『白銀の刃』との接戦を制し、ついにはトップギルドとして周知される事となった。


『なった』当然過去形である。


「ど、どうして、お前達が……」


 ボロボロのなりのクロードが言う。


「へっへっへっ。誰かと思えば、あの『栄光の光』の連中じゃねぇか」


「聞いてるぜ。なんでか知らないけど、お前達今、ズタボロらしいじゃねぇか。見る影もねぇな」


 ギルドオーナーであるレナードの取り巻きのような冒険者達が嘲ってくる。


「けど感謝しなきゃな。お前達が転げ落ちてきてくれたおかげで、俺達『白銀の刃』がトップギルドに躍り出たんだからなっ」


「くっ!」


 事実を突きつけられ、クロードの表情が歪む。


「よせ」


 レナードが仲間を制する。美しい見た目をしていたが、ギルドオーナーをしているのだから見た目だけではない。実力も本物だ。聖騎士(パラディン)としての実力は本物であり、知略とカリスマ性にも富んでいた。


 彼を崇拝し、忠誠を誓っているギルド員は数多い。


『栄光の光』のギルドオーナーをしているクロードとしては、目下のライバルのような男だった。

 

「レナード……」


「変わったな。クロード。かつてのお前は嫌味な奴ではあったがもっと自信に満ち溢れた顔をしていた。他の役員連中もだ。性格の良し悪しはともかくやりづらい連中ではあった」


 レナードは残念そうに溜息を吐く。


「今のお前達にはかつての勢いが見る影もない。まるで別人のようだ。何があったかは知らないが」


「くっ!」


 クロードは悔しさのあまり目を伏せた。


「ライバルがいなくなったのは残念だが、致し方ない。確かにお前達が転落していってくれたおかげで、うちがトップギルドになれた側面もあるからな」


 残念そうにレナードはクロードを見やる。


「時間の無駄だ。行くぞ」


「「「「はいっ!」」」」


 仲間を引き連れ、眼中にないかのようにレナード達『白銀の刃』の連中は通りすぎていく。


 クロードは地面に膝をついた。


「く、クロード……」ドロシーが心配そうに声をかける。


「ちくしょう!」


 クロードは涙を流した。クロードとてトップギルド『栄光の光』のギルド長をしていたのだ。今も『栄光の光』のギルド長ではあるが。それなりにプライドというものが存在していた。そのプライドを大きく傷つけられた。


「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 かつてのライバルに、眼中にないかのように振舞われた。まるでギルド『栄光の光』が既に終わったと言わんがばかりに。


 悔しさと惨めさのあまりあふれ出てきて、クロードの絶叫が街中に響く。






お読みいただきありがとうございます。

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一日2回更新すると言っていましたが、嬉しい事があったので3回更新に戻します!!


もう書く筆が止まらないよ!! 自警団→警備兵団に修正しました。自警団って王都とかだと都市機能がうまくいかなくてスラム化してるようなときにしか使わないと指摘うけまして。

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