北の平野 ギガレックスとの遭遇
「はぁ……はぁ」
「こ、ここが北の平野かー」
「や、やっと着いたーーーーー!」
呑気なエルフ騎士が歓喜に震えている。
「馬鹿者! 我々は何も問題を解決はしていないのだぞ! やっと目的地に着いただけではないかっ!」
騎士団長は叱咤する。これについては同感だ。俺達の目的は北の平野にたどり着く事ではない。ここに生息するとされる巨大モンスターを討伐する事にある。そして膨大な経験値を得る。そしてそれを俺の経験値分配能力者で2倍になった経験値をエルフの民に分配する。
そうすればエルフの民が成長し、森の魔力の問題は解決される、はずだ。
そもそも、その巨大モンスターを倒さなければならない。そのためにはまず見つけないと。
俺がそう思っていた。
「フィルド様……どこにその巨大モンスターはいるのでしょうか?」
「さあな」
平野はだだっ広い空間が広がっているだけである。遮蔽物のようなものはない。見晴らしに何の問題もなかった。
「ど、どこだ? どこにいるのだ? その巨大モンスターは」
騎士団長は周りを見回す。
巨大モンスターなのだから現れればすぐにわかるはずだ。
ドスン、ドスン、ドスン!
「なんだ、あれはっ! ド、ドラゴンかっ! あれは」
「いえ……あれは」
俺達は見あげる。それはドラゴンに近いが、ドラゴンではなかった。ドラゴンのように空を飛ぶわけでもない。そして、火を吹くわけでもない。だが見た目はドラゴンのようではあった。
「恐竜種だ」
俺は告げる。山をも超えるような巨大な化け物。姿は見えていたのだ。だが、俺達はその存在を遠くにある大きな山と誤認していた。だがら見えなかったのだ。
「あっ! あんな大きな化け物! 倒せるわけがない!」
騎士達は震え上がっていた。誰も山を平らにしようとは思わないだろう。あの化け物を倒すというのは言わばそういう問題であった。
「に、逃げろっ! 逃げろっ!」
「うわああああああああああああああああああああ! 踏み潰されるぞおおおおおおおおおおおおおおお!」
「いやだ! 死にたくない! 死にたくない! いやだーーーーーーーーーーーーーーー!」
もはや騎士団は恐慌状態だ。とても戦力になりそうにもない。そもそもの話として恐慌状態でなかったら戦力になったかというと、間違いなくなってはいないが。
「う、うろたえるなっ! 向かえ! 向かっていくのだ! こらっ! 逃げるなっ!」
騎士団長は命令をする。無茶を言うなと言いたいところだろう、騎士団からすれば。
恐竜種は巨大なモンスターであるとされているがこいつはその中でもさらに巨大だ。巨大恐竜種と言ってもいい。
ギガレックスは赤い目を不気味に光らす。そして足を踏み上げた。こいつからすれば俺達なんて眼中にあらず、ただ普通に歩行しているだけの事なのだろう。
「ひ、ひいっ!」
踏み上げられた巨大な足。その足の裏が迫ってくる。そのあまりの迫力に対して、騎士団長は自分で下した命令とは真逆の行動をする。他の騎士団員と同じだ。
「うわあああああああああああああああ! 逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
騎士団長もまた喚きながら逃げ出す。
「あれに向かっていけ、っていうのも無茶な話だろ」
俺は溜息を吐く。エルフ騎士団100人がかりでも無理だ。蟻が100匹集まってもゾウに踏み潰されるだけだ。仮にエルフ騎士団が1万人いても結果は同じだ。
「いかがされますか? フィルド様」
そうルナシスが聞いてくる。その目には多少なり不安の色が見られた。
「まあ、普通に人間相手に闘うようにはいかないわな」
そもそも相手は俺達を敵だと認識していない。ただ歩いているだけだ。道端に蟻がいる程度の認識である。
「まあ、見ているだけでは始まらないな。ルナシス、試しに攻撃してみろ。多少はHPが減るかもしれないぞ」
ルナシスの攻撃なら100くらい減るかもしれない。仮定としてギガレックスのHPが100000000だとすると、100万回くらい攻撃すれば倒れるかもしれない。
「はい! わかりました! フィルド様! はあああああああああああああああああああああああああああああ!」
ルナシスは剣を持って走る。
「はあっ!」
剣聖の名に恥じぬ見事な斬撃はギガレックスの足を大きく切り裂いた。あくまで人間サイズの話で、である。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「な、何も変化がありませんね」
「いや、一応歩くのやめただろ」
「そうですね。止まりました」
しばらくギガレックスは止まった。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
突如の咆哮がこの北の平原全体に響き渡る。
「なんだったんですか!? あの間は!?」
「でかすぎて痛覚が鈍いんだよ! 伝わるのに時間がかかるんだ!」
それ以外に考えられない。まあ、あれだけでかければなぁ、という感じだ。
「ひいっ!」
「くっ!」
「うわあああっ!」
「なんだっ! この音!」
その咆哮の衝撃は凄まじい。音の衝撃だけで十分な脅威だ。
「どうやら俺達を敵として認識したらしい。いや、害虫かな」
「よ、余計な事しましたかしら私」
「いや、そうでもない。どうせいずれは俺達を敵として認識させなきゃなんだ」
俺は語る。それでもどこかわくわくした。今の俺のレベルは人間相手では有り余るものだった。
だが、こいつだったら。このギガレックスであったのならば。相手にとっては不足はなかった。
「さあ、本格的に討伐開始だ」
目標はギガレックス。山よりも大きいかもしれない、巨大な化け物だ。
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ちょっと疲れたんで2回更新に変更します。
追記すみません!! 嬉しい事あったんで疲れ吹き飛びました3回更新します!!




