エルフの騎士団と一緒に北の平原を目指す
コンコンコン。
「なんだ!? 誰だ!?」
「お父様、ルナシスです」
「ルナシスか。何の用だ?」
「入ってよろしいでしょうか」
「ああ。入ってこい」
「失礼します」
俺とルナシスは国王の自室に入る。アンティークが多くあり、地味な印象を受けるがそれなりに金がかかっていそうだ。いかにも国王らしい部屋だった。何となく性格が出ている。
「どうした? ルナシス、何の用だ? 貴様、あの時の人間の男か」
国王の顔は若干やつれていた。やはり心労が多いのであろう。
「お父様にお願いがあるのです」
「なんだ?」
「エルフの騎士団をお貸しいただきたいのです」
「エルフの騎士団!! なぜだ?」
疑問を呈するのも当然だ。理由も聞かずに騎士団をぽんと貸すわけにもいかない。
「端的に言えばエルフの騎士団を連れて、北の森、それから山岳地帯を超え、その先まで行きたいのです」
「行ってどうする!? あそこは大型の危険なモンスターがいるそうではないか! 山岳と森がある事によりエルフの国は守られているが、なぜ自分たちからそんな危険地帯に足を踏み入れるのだっ! みすみすエルフの騎士団を死なせにいくようなものだぞ!」
「我々はその巨大モンスターを打倒しにいくのです」
「打倒しに? そんな事できるわけがない! 仮にできたとしてもそれが何になるというのだ」
「ルナシス、ここからは俺が話をしよう」
俺はルナシスを制する。
「国王陛下。俺には経験値分配能力者としての能力があります。俺の能力は取得する経験値を2倍にする能力があります」
「なんだと、取得する経験値を2倍に!? そんな事ができるのか」
「はい。それだけではありません。そしてその効果はパーティーメンバー全員に及ぶ。パーティーというよりは軍全体に効果が及びます。そのため、エルフの騎士団を連れて大型のモンスターを打倒すれば、皆の者は莫大な経験値を得る事でしょう」
「それでどうなるという、騎士団のレベルがあがったところで、森の魔力が回復するというのか?」
「俺の経験値分配能力者としての能力には経験値を分配する能力があります。その能力により経験値を皆の者に分配する」
「分配?」
「ええ。分配します。騎士団の経験値をエルフの民に分け与えるのです。森の魔力はエルフの民が成長する事で必ず復活します。それがこの問題を解決する唯一にして最善の方法なのです」
「ふんっ! 信じられるかっ! 人間の与太話などっ!」
「お父様! 信じてあげてっ! フィルド様はとても素晴らしいお方よっ! 決して嘘をついているわけではないの!」
「何を今更。第一王女としての責務を放棄し、お前は人間の国へ逃げて行ったではないかっ! のこのこと戻ってきおって。それよりもなんだ? お前? その男の肩をえらくもつではないか? そやつは人間なのだぞ」
「えっ!? お父様、なんですか? フィルド様は確かに人間です。それがどうしたのです?」
「ま、まさかルナシス、お前はそこにいる人間の男に惚れているのかっ!?」
「な、なに言ってるのよお父様! 私は確かにフィルド様を好きだし尊敬してるし、愛しています……あれ? ってこれ普通に惚れているって事じゃないですか!」
ルナシスは顔を赤くして叫ぶ。
「ほっつき歩いてきて、どこの馬の骨ともわからぬ人間の男を拾ってくるとは、どういう了見だ!」
「そんな、確かにフィルド様は人間の男性ではあるけど、決して馬の骨ではないです! お父様!」
「ええいっ! 認めないっ! 認めないぞっ! 人間相手などにっ! 娘はやれんっ!」
「お父様!」
「いえ。別にいらないんですけど」
俺は告げる。
「ええっ! そんなつれないです! フィルド様! そこは『お父さん! 娘さんをください!』って熱烈に訴えるところではないんですかっ!」
「勘違いするな。俺達はただの暫定パーティーメンバーだ。恋人以前に友達でもない。その関係は今後揺るぐことはない」
「ぐすんっ」
「国王陛下、俺とルナシスの問題はものすごーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーく、どうでもいい問題です。今はエルフの国の森の魔力を回復させるのが先ではありませんか? そしてエルフの民を救う事こそが国王であるあなたの使命であり、陛下を苦しめていた元凶ではありませんか!?」
「う、うむ。それは確かにそうだ。できるのか? そなたなら」
「おそらく……ですが。ともかく他に方法がありません。この問題、俺に預けてはくれないでしょうか?」
「わ、わかった。そなたに預けよう。正直わしも様々な方法を試した。だがどれも失敗し、もう万策尽きたのだ。もう打つ手がない。完全にお手上げで諦めていたところだ。まだ手があるというのならそれを試そうではないか」
「ありがとうございます。陛下」
「そうかしこまるな。礼を言いたいのはこちらのほうだ。よく考えればエルフの国を救ってくれるというのなら、相手は誰でもいいではないか。人間でも獣人でもドワーフでも。誰だって関係ない。確かにエルフの国の危機を解決するのが最優先事項だ」
国王は理解してくれたようだ。
「それで騎士団をどれほど連れて行くのだ?」
「騎士団は何人いるのですか?」
「100人といったところだ」
「ではそれを全員貸してください」
「なにっ!? 100人まるごとだとっ! それは本気かっ!」
「フィルド様!! それは本気ですか!! エルフ兵100人を北の平地に連れていかれるつもりなのですかっ!」
「ああっ。俺は本気だ」
「うむ……だがの。100人とはいかんせん。わしらにとっては規模が大きすぎて」
「俺の経験値分配能力者の能力は全体に及ぶといいました。人数に上限などない。数が多ければ多いほど、得られる経験値も多くなるのです」
「うむ。なるほど。よいだろう。フィルド殿でよかったかな?」
「ええ。フィルドと申します。国王陛下」
「フィルド殿。貴公にエルフ騎士団100人を委ねたっ! 頼むっ!」
国王は俺に泣きついてきた。
「このエルフの国の危機を救ってくれ! そしてイルミナを救ってくれ! それができるのなら誰でもいいではないかっ! 人間でも誰でもっ! それができるのであればっ!」
国王は涙を流していた。それだけ心労への負担が大きかったのだろう。国難に対して何もできず、ただただ苦闘しているだけだったのだ。その事がどれほど国王の心の負担になっていたのか。想像するのは容易かった。
「安心してください。必ず、俺がこのエルフの国を救ってみせます」
本当はそんな自信はなかった。何事にも絶対はない。その大型モンスターが今の俺を上回るほどの戦力を有している可能性もあった。
だが、こういう事で国王の心を楽にする事ができるのであれば、それで十分だ。嘘や誇張もその人のためになるのなら十分に意味がある事だ。
「ああっ。頼んだぞ。フィルド殿。必ず、必ずエルフの国を救ってくれ! 頼むっ!」
「ええ。わかっております。必ず救って見せます」
俺は国王と約束をした。
そしてこうして俺はエルフの騎士団100人を引き連れて、北の平原を目指す事になったのである。
ハイファン日間11位、週間4位 月間14位ありがとうございます!
広告の下の☆☆☆☆☆から是非評価お願いします。
面白ければ★★★★★に
面白くなければ☆☆☆☆★にしておいてください!
※1日3話更新戻します! なんで戻したかというと、やっぱり一日2話だと自分としては緩くて、もっと自分を追い込みたいと考えたからです。
誤字脱字は多いですがご指摘頂ければ幸いです。感想など読む気力もありませんが、ご指摘助かっております。感謝しております!
また更新頻度の告知はあとがきでします。