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フィルドの提案

「フィルド様に森の問題を解決する、案があるのですか?」


 イルミナは聞いてきた。


「ああ」


「それは一体……どんな」


「さっきの口ぶりからすると森の魔力はエルフの民は生まれてくるか、成長すると回復するんだろう。成長っていうのはつまりはレベルアップだ」


「レベルアップですか?」


「ああ。今さらエルフの民が新たに出生する事は考え辛いだろう。エルフの民の出生能力は極端に低いらしい。これは長寿からくるものだとは思うが。長寿なのに出生能力が高かったら、世界中がエルフだらけになるものな」


「それは確かに、そうですけど。だったらどうしようもないではないですか。新たにエルフは生まれないのです。正確に言えば生まれにくいのですが同じものではないでしょうか?」


 イルミナは問う。


「だから言っただろう。レベルアップだって」


「レベルアップですか? でもどうやって。私達エルフはレベルがあがらないのです。成長性が低いですから」


「成長性が低いっていうのはいわば経験値の効率が低いって事だ。それだけ成長させればいい」


「成長? どうやって?」


「俺の経験値分配能力者ポイントギフターとしての能力を使えばいい」


経験値分配能力者ポイントギフター?」


 イルミナは首を傾げる。


「だから、レベリングだよ。俺が誰か、エルフの騎士団でも連れていく。そいつ等を連れて経験値を稼がせる。俺の経験値分配能力者ポイントギフターは取得する経験値を任意で分配する事ができるから、それをエルフの民みんなに分け与えればいい」


「分け与えるとどうなるのだ?」


「レベルの高い騎士団では経験値稼いでもレベルは上がらないけど、エルフの民ならあがります」


 俺はそう補足をする。


「そっ! そんなっ! そんな事ができるのですかっ! フィルド様はっ!」


 イルミナは目を丸くして驚いていた。相当に驚きだったのであろう。


「ああ。できる。問題なのは連れていくエルフの騎士団。それから経験値を取得する相手だ。数は多いほどいい。何せ俺は取得する経験値を二倍にさせるのだ。後は倒すモンスターだな、当然経験値が高い方がいい……それだけ強敵になるが」


 俺は考える。どいつがいいか。できるだけ効率的に経験値を稼げる奴がいい。無駄な時間は使えない。何せ森の魔力は今現在も枯渇しているのだ。俺見立てではイルミナの命は長くない。そうだな。数日というところだ。数日でイルミナの魔力は失われ、そして同時に生命力も失われる。


 その結果森の魔力も枯渇し、多くのエルフの民が死ぬ事であろう。行きがかりの事ではあったが、それでもエルフの国は美しい。住んでいる人達もまた良い人達なのだろう。行きがかりとはいえ、彼らを見捨てるほど俺も冷血漢ではなかった。


「フィルド様!」


 ルナシスは目を輝かせる。


「なんだ? そんなに嬉しそうに?」


「フィルド様は我々エルフの国をお救いになってくれるのですねっ!」


「当たり前だろ。案内してくれた駄賃だ」


「フィルド様にとってはエルフの国を救う事はお駄賃をあげるようなものなのですかっ!」


「だから興奮しすぎだって。少しは冷静になれ」


「冷静になどなれるはずもない! 何せエルフの国をお救いになるのですからっ! フィルド様は私達エルフの英雄ですっ!」

 

 ルナシスは目を輝かせていた。


「落ち着けって。まだ俺は何もしていない。これからしようとしているところだ」


「はいっ!」


 それでもルナシスは肩で息をするように、興奮冷めやらぬ様子であった。


「まずは討伐するモンスターだ。このエルフの森の近くで、何か経験値の高いモンスターはいないか?」


「それは……そうですね」


「北の森、それから山岳を抜けた先にある平原に巨大なモンスターが現れるそうです」


 イルミナは語る。


「巨大なモンスター?」


「はい。なんでもその大きさは我がエルフの国を飲み込む程巨大なものであると言われています」


「へー……それほど巨大なモンスターだったら倒すのも難しくないかもな」


「で、ですができるのですか!? フィルド様に」


「俺だけじゃない。エルフの騎士団も連れていく」


「私も参ります!! フィルド様!」


 ルナシスが名乗りをあげる。


「わかった。引き続き暫定パーティーを延長だ」


「はいっ! わかっておりますっ!」


「いいか、言っとくけど暫定は暫定だぞ。このエルフの国を救ったら解除だからなっ!」


「はいっ!」


 ルナシスはそれでもにこにこと笑顔を浮かべていた。こいつ、暫定って事すっかり忘れてるんじゃないか。まあいい。


「で、ですが!! それでもできるのですかっ!! 危険ではありませんかっ!!」


 イルミナは俺達の事を心底心配しているようだ。当然、それだけ巨大なモンスターだ。


「イルミナ様。危険を冒さなければ何もできません。それにわかっているのですか? イルミナ様。このままではあなたの命はもう」


 長くない。俺は言葉を紡ぐのをやめた。イルミナの悲痛な表情がさらに悲痛さを増したからだ。


「わかっております。フィルド様。私の命はもう長くない。持って数週間。いえ、もって数日かもしれませぬ。森に魔力を注ぎ続けた結果、私の中の魔力は殆ど空になっております」


「そうだ。自分の命よりも他人が大事なのか?」


「それは勿論そうです! 私のせいで大勢の人々が傷つくのはとても耐えられません!」


 やはりイルミナも王女なのだろう。民を思う気持ちが強かった。それ故に彼女はルナシスの代わりにこの地に留まり、森に魔力を注ぎ続けたのだ。


「俺は別にイルミナ様だけを救うとは言っていません。俺はエルフの国を救うといったのです。エルフの国を救った結果、イルミナ様が救われる、それだけの事です」


「でも……」


「何を言っているのです! イルミナ、他に方法などありませんっ!」


「しかしっ! お姉様にも危険がっ!」


「安心しなさい。イルミナ。フィルド様なら、フィルド様ならきっとやってくださいますっ!」


 ルナシスは笑顔を浮かべる。


「ねーっ。フィルド様」


「なにがねーっだ。ルナシス、お前もきっちり働けよ。でないと暫定パーティーとして連れていく意味がない」


「はいっ! わかっておりますっ! フィルド様のお役に立てるように、精一杯務めさせて頂きますっ!」


「それじゃあ、後は騎士団に話をつけないとな」


 国王に。あの国王、頭が固そうだったけど話が通じるかな。まあいい。ルナシスもいるから何とかなるだろう。


 まさかただの観光できたというのに、こんな厄介事に巻き込まれるとは思ってもみなかった。だがしょうがない。実際エルフの国を訪れて、国の現状、人々を目の当たりにした。それで見捨てる事などできるはずもない。


「はいっ! お父様ならきっと自室にいらっしゃると思います」


「そうか。じゃあ、行こうか」


「はいっ!」


 ルナシスと俺は国王の自室へと向かった。






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