枯渇する森の魔力とイルミナの役割
「我々エルフの民と森の魔力は密接な関係にあります。森の魔力はエルフたちが新たに誕生したり成長したりすると回復します。ですがエルフはもともと成長性にとぼしく、また新しく子供がうまれるのも200年に一人くらいといった程度です」
「森の魔力が枯渇するとどうなるんだ?」
「森の魔力が枯渇するとエルフの民の生命力が低下します。その結果病にかかりやすくなったりします。そして完全に枯渇した場合、多くのエルフの民が命を落とす事でしょう」
「それじゃイルミナ様は森の魔力が枯渇した結果、病になったのですか?」
「それは少し違います」
王妃は補足する。
「高い魔力を持ったイルミナはその魔力を森に捧げる事で、魔力の枯渇を防ぐ役割をしていたのです。しかし、膨大な魔力を持ったイルミナでも限度があります。森に捧げていたイルミナの魔力は有限。いずれは枯渇します。そして今のイルミナは魔力が枯渇しかかっている状態なのです」
王妃は語る。
「そうして森に魔力を捧げるのが王女の務めなのです。しかしそこにいるルナシスはその王女の役割を放棄し、人の世界へと逃げ出していきました」
ルナシスは顔を伏せる。
「その結果、その責務は第二王女であるイルミナのところへと行きました。イルミナは自分の体を犠牲にし、森から魔力が枯渇するのを防いでいました。ですがそれももう限界です。そのうちイルミナの魔力は完全に尽きる事でしょう。今ですらエルフの民の多くが病に侵されているのです。多くの国民が死に絶える事となります」
王妃はルナシスを視線で責めた。
「ルナシス、あなたが王女としての使命から逃げたからですよ。そのせいでイルミナは!」
「やめて、お母様。お姉様を責めないで」
イルミナはそれでも健気にルナシスを庇った。
「お姉様のお気持ちもわかるの。生まれてから死ぬまで森に魔力を捧げて、ただただ一生をエルフの国で終える。そんな人生は普通嫌じゃない? だから人の世界へと旅立ったお姉様のお気持ちも理解できるの」
「イルミナ、けどそれであなたが死んだら何にもならないじゃない!?」
「わかりました。お母様!」
「ルナシス……」
「私がイルミナの代わりをします。森に魔力を捧げる。そうすればしばらく問題が解決するでしょう」
「ですが、それでいいのですか? お姉様」
イルミナは聞く。森に魔力を捧げる。それはルナシスがエルフの国に根付くという事を意味した。もう飛ぶことはできない。鳥かごの中の鳥となる事を意味する。
そしてルナシスは遠からずイルミナと同じような姿になる事だろう。弱り、そして最後には朽ちる。ただただ森に魔力を捧げるために一生を終えるだけの、そんな惨めな人生が続くのであろう。
「もっとまともな解決法を思いついた」
俺は語り始める。
「……なんですか? 解決法ですか? そんなものあれば既に行っています。今行っている以上の方法など」
「王妃様、黙って俺の言葉を聞いてください。イルミナもルナシスも犠牲にならなくていい、そんな方法があるんです」
「ば、バカなっ! そんな方法などあるはずもありませんっ!」
「それがあるんです。この森の魔力の問題、少しばかり俺に預けてくれませんか?」
「フィルド様! よろしいのですか? フィルド様にはそこまでする義理はエルフの国には」
「いいんだ。俺はエルフの国に来たかったんだ。ルナシスは案内の役割を十二分に果たしてくれた。少しばかりの礼をしたい」
「フィルド様……ですが、どうやってこの問題を解決するつもりなんですか?」
「さっきの話だと、新しくエルフが生まれてくるか、エルフが成長すれば魔力は復活するんだろう?」
「それが何だというのです? あなたに何ができるというのです?」
「聞いてください。王妃様。俺に考えがあるんです」
「考え? なんですか? その考えとは――」
「その考えとは――」
俺はエルフを成長させる、とっておきの秘策を話し始めた。
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