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枯渇する森の魔力


「エルフ……」


「はい。エルフなんです。私」


 エルフ特有の尖った長い耳を表し、ルナシスがそう言ってくる。


「驚きましたか?」


「……え? 別に?」


「ええっ!? なんで驚かないんですか!? エルフですよ!! エルフ!」


「いや、だって明らかにそれっぽかったしな」


 エルフの国の場所を知っていたのも、深緑の森で迷わなかったのも、霧の迷宮で迷う事なくエルフの国にたどり着けたのも。『ルナシスがエルフだから』の一言で済んでしまう。


「それよりどうして黙ってたんだ? いや別に黙っていたのはいい。言いたくない事は言わなくていいんだ。ただ少し気になった」


 そもそも俺達は暫定的なパーティーでしかない。だから別にそこで隠し事があったとしてもなんとも思わない。


「はい……もし私がエルフだとわかったらフィルド様に距離を置かれちゃうんじゃないかと思って」


「安心しろ。距離は置かない」


「本当ですか!? 嬉しいです」


「ああ。俺達はずっと今までの距離だ」


「距離縮まらないんですか!!」


「当たり前だ!! 俺のソロライフは誰にも邪魔させない!」


 ルナシスの正体はわかった。まあ、けどわかっていたし。どうしようもない正体だったけど。それよりも気になる事があった。


「姫様、ってどういう事だ?」


 さっきエルフの子供達が姫様と言っていた。


「姫様は姫様だよ!」


「そうそう、姫様!」


 エルフの兄妹が言う。


「そうか……ルナシスはエルフの国の王女だったのか」


「はい。王女です。私はエルフの国の王女」


 それよりも疑問だったのはなぜエルフの国の王女が正体を隠し人間の世界に紛れていたのか。確か前に組織になじめなかった、とか言っていたな。組織というのは国だ。使命を受け入れられなかった、というのは要するにエルフの王女としての使命を受け入れられなかった、と言っていた。


 そこら辺が理由になるだろう。だが特別俺から聞きたい事でもない。ルナシスが自然と話してくるだろう。話したくなったら。それで十分であった。


「案内してくれないか? エルフの国を」


「はい。エルフは排他的で他種族をあまり受け付けない性質があります。それはこう身を潜めるようにして生活している事からも理解できると思います」


「……そうか」


 確かにルナシスも俺にだけはなついているが、他の人間への態度からするに冷淡な印象だった。ああいう態度が人間に対する、本来のルナシスの接し方なのかもしれない。


「ですがエルフの王女である私がいればフィルド様もきっとすんなりと受け入れてくれると思います。この子たちもそうです」


 ルナシスはエルフ兄妹を指し示す。


 確かに。エルフの王女であるルナシスがいれば、ただの人間が紛れ込んできたというよりはすんなりとエルフの国に入っていく事ができるだろう。


 エルフの国にたどり着くまでの暫定パーティーだと思っていたが、今はルナシスがいた方が何かと都合がいい。


 まあいい。暫定期間延長だ。エルフの国にいる間はルナシスと行動を共にした方がいい。 


「エルフの国にいる間は一緒に行動してくれないか? ルナシス」


「はい! 勿論です! フィルド様。私は別にエルフの国から離れた後も継続してパーティーを組んでくれても構いません!」


「いや、それはお断りだ」


「ええ!!----------!! なんでですかーーーーーーーーーーーーー!!」


 だから言っただろう。俺は一人でいたいと。


 ◇


 俺達はエルフの兄妹とさっきまでいた森の外れから人里へ向かっていく。


エルフの兄妹は兄の名はダノン妹の名はサナと言うらしい。会話の中でそういう情報が出てきた。可愛らしい子供ではあるが、見た目は子供というだけでエルフなのだから案外俺の数倍は年がいっているのかもしれない。


「どうだった? ダノン。エルフの国は? 何か変わった事ある?」


「それが、なんか皆、元気がないんだ」


 しょんぼりとした口調でダノンは呟く。


「元気がない? どうして?」


 ルナシスはエルフの王女ではあるが今までの話の流れからすると、帰ってきたのは久しぶりの事のようだ。だから王女ではあるが、エルフの国の情勢には疎かったのであろう。


「それがなんだかエルフの森がおかしいらしいんだ」


「エルフの森がおかしい?」


「うん。森のまりょく、がどうのこうの、こかつがどうのこうの言ってたけど、サナ、よくわからなかった」


「それで大人達は大慌てなんだよ」


「そうそう。大慌て、大慌て」


「それにその森の影響で病気も流行っちゃって」


 エルフの生命力は森と密接な関係にあるとされていた。森の魔力が弱まると必然、エルフの生命力も弱まってくる。

 その結果、病にかかりやすくなる事は考えられた。


「それでイルミナ様も病気にかかちゃって」


「イルミナが!! それは本当なの!?」


 ルナシスが叫ぶ。その取り乱しよう。普段のルナシスからは考えられなかった。それほど重要な人物なのか。家族か、誰かなのだろう。親密な間柄の人物であるように思える。


「う、うん。そうなんだ。それもあって国中が大慌てなんだ」


「森を何とかしないとまずい、って皆騒いでるの」


「ルナシス。イルミナ、っていうのは誰だ?」


「フィルド様。すみません。イルミナというのは私の妹です」


「妹?」


「はい。私が第一王女としての責務を放棄し、人間の世界へ逃げ出していった後、全ての責務を引き受けてくれた第二王女。私の妹です」


「……そうか」


 ルナシスの沈んだ表情。きっと妹を心配しているのだ。人間の世界へ逃げ出してきたと言っていたが、それでも妹との関係は悪くはないようだった。

 

 姉妹だから、家族だからというだけで無条件で愛情を抱くとは思えないが。それでもルナシスは妹のイルミナの事をそれなりに想ってはいるのだろ。


 心痛なその表情から察する事ができた。


「とりあえずはそのイルミナのところに行かないか?」


「フィルド様、いいのですか?」


「心配なんだろう。それに俺はお前がいないと行動しづらい。ルナシスと離れるのは今は問題なんだよ」


「フィルド様、ありがとうございます」


 涙すら浮かべ、ルナシスは礼を言ってくる。


「礼を言うなんて大げさだな。礼を言いたいのは俺の方だよ。だってルナシスがいないと俺はまともにエルフの国も歩けそうにないんだから」


 こうして普通にダノンとサナがなついてくれているのも、ルナシスが一緒にいるからだ。普通だったら警戒するだろうし、人間の俺相手に逃げ出すであろう。ルナシスと一緒にいる事でエルフの人々の警戒心が解かれるのだ。


「ありがとうございます! フィルド様」


「だから礼はいいって。それよりじゃあ、そのイルミナのところへ行こう」


「はい!」


 会ったところで俺達にどうこうできるかはわからない。だが妹の容態を知る事でルナシスが現実を受け止める事もできるであろう。事実を知る事できっと受け止める事ができるし。前に進める事もあるはずだ。


 俺とルナシスはイルミナがいるとされる、エルフの王城へと向かった。

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