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ルナシスの正体



「この先に霧の迷宮があるんです」


「霧の迷宮!?」


「ありました。ここが霧の迷宮です」


 俺とルナシスは深い霧の中に入って行く。俺はもはやルナシスに何も言わなかった。彼女は自分から語る事を言っていた。然るべき時がきたら。だから俺はそれを待つだけだ。


 それに何となく予想がついていた。さらにいえばエルフの国に案内してくれるのなら俺はそれで構わない。彼女が何者かなど些末な問題だ。


 俺達は霧の迷宮をしばらく歩き進む。


 霧がかかった道がいくつもあった。


「この先は崖です。足元も見えづらいので落ちたら死にます」


「そうなのか……」


 恐ろしいな霧の迷宮は。


「こっちもです。正解はこっちです」


 俺達は迷路のような複雑な道を行く。ルナシスの指示に従うのみだ。


「そして、正解はこっちです。この先を行けばエルフの国にたどり着きます」


 これは普通の人間ではエルフの国にたどり着けないわけだ。運よく霧の迷宮にたどり着いても、中に入ったが最後、生きては帰る事はできない。


ルナシスが手を差し伸べてくる。


「え? なに?」


「ここからさらに霧が濃くなるんです。前が全く見えない程。フィルド様とはぐれてしまうかもしれません」


 ルナシスは顔を真っ赤にしながら言う。


「あ、ああ。わかった」


 俺はルナシスと手をつなぐ。ルナシスの手の温かみが伝わってくる。


「フィルド様の手、とても温かいです」


「ルナシス、まさか単に俺と手を繋ぎたかっただけなんじゃ」


「さっ! 行きましょうか!」


 ルナシスは気にせず歩き始める。俺は従うより他にない。そして言葉通り、前すら見えない深い霧の中、歩き続ける。そんな中、光が差し込んできた。


「この霧を抜ければ後はエルフの国です」


「ついに、エルフの国に」


 俺達は深い霧を抜けた。まさしく霧の迷宮だった。


 ◇


 そこの光景は見事なものだった。豊かな緑。青い空。そして綺麗な川。草原では色鮮やかな花が咲き乱れており、どこか幻想的ですらあった。


「ここがエルフの国か」


「はい。ここがエルフの国です」


 ルナシスは俺にしか見せないであろう笑顔を浮かべる。


 俺は感動で震えていた。こんな素晴らしい光景がこの世界にあったのか。エルフは他種族と交わらない種族だという。いわばエルフの国は鎖国状態にあった。


 その結果人間による汚染を免れてきたのだ。この地上にこんな綺麗な自然が残っていたのか。あまりの衝撃に俺は涙すら流しそうになった。


「……ありがとう。ルナシス」


「いえいえ」


「何かお前にお礼をしなきゃな」


「じゃあ、私と正式にパーティーを組んでください!」


「それは断る!」


「ええ!」


「なんでもとは言ってないだろ」


「じゃあ。んーっ!」


 ルナシスは唇を近づけてきた。目を閉じて。


「な、なんだよそれは」


「キスです。ご褒美にキッスしてください。んーっ!」


「ば、馬鹿! よせっ!」


 俺は何とか免れようとする。俺はその時一線を越えるつもりはなかったのだ。


 ――と、その時の事であった。


「あっ! 姫様だっ!」


「姫様っ! 姫様だっ!」


 エルフの少年少女が駆け寄ってくる。兄妹だろうか。人間の年齢にして5~7歳程度の見た目に見えるがエルフは長命な種族だ。一体何歳なのか見当もつかない。18歳の俺より年上だったりするのだろうか?


「姫様……!?」


「……久しぶりね。元気にしてた?」


「うん! 元気だった! 姫様は!?」


「私は勿論元気よ」


「隣の人は誰!? 恋人!?」


 エルフの少女が聞いてくる。やはり人間の子供と同じだ。目下の興味関心はやはり他人の恋情なのだろう。


「ええっ!? フィルド様!! この娘、何を言っているのかしら。どう答えればいいと思われます!?」


 ルナシスは顔を真っ赤にしてもじもじと聞いてくる。


「他人だ」


「ええ!?」


「ただの他人。案内人だ。そして暫定的なパーティーメンバーだ」


「なんだ!! 姫様の恋人じゃないんだっ!」


「それよりルナシス、どういう事だ? 姫様って」


「実は――」


 ルナシスはつけていたイヤリングを外す。そのイヤリングは魔道具のようだった。他人の視覚を惑わすイヤリング。そのイヤリングを外したルナシスの耳は元の尖った姿を取り戻す。


「実は私、エルフなんです」


 そう、ルナシスは俺に告げてきた。






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