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【追放者サイド】栄光の光に無期限の活動停止命令が下される

「くっ! なんだよ! フィルドがいなくなってからろくな事がないじゃねぇか!」


 クロードは嘆く。


「頼みの綱の剣聖ルナシスには出て行かれるしっ! こんなんじゃ他のギルド員の引き留めもできるかわからねぇだろうがっ!」


「本当ね」


 ドロシーは冷淡な感じで呟く。


「なんだよその態度! まるで他人事みたいじゃねぇか!」


「うるさいわねぇ! 別に私のせいじゃないでしょ! 役員の皆で決めた事じゃない!」


「二人とも! 喧嘩はよしてください!」


「そうだ! そうだ! 喧嘩しても何にもならねぇぞ」


 カールとボブソンの二人になだめられ、二人は気を治める。


「悪い。つい感情的になっていた」


「ごめんなさい。私もよ」


 これでも長年ギルドを一緒に営んできたのだ。だからそれなりの結束力が存在していた。この時はまだ辛うじて、結束が保たれていた時期でもある。


「クロードギルド長!」


 その時だった。ギルド員から報告が飛び込んでくる。


「大変です!」


「どうした? 何かあったか?」


「それが王都アルテアから役人がきているらしいんです!」


「役人だと!? なんでだ!?」


 ちっ。クロードは舌打ちする。この前の呼び出し尋問の時に誤魔化しきれていなかったか。


「ともかく、来てください」


 仕方なくクロードはその役人のところまで向かう。


 ◇


「『栄光の光』のギルド長、クロード殿で間違いないな?」


「は、はい! そうです! どうしたのでしょうか!?」


 訪れてきたのはいかにも役人といった感じの眼鏡をした堅そうな中年男だった。


「この前の国王の呼び出し尋問を覚えているな?」


「は、はい! 覚えております!!」


「その尋問の結果、貴公等のギルド『栄光の光』に処罰が下される事になった」


「しょ、処罰ですか!? どんな!?」


 流石に無罪放免といくとは思っていなかったクロードは罪状の勘定くらいしていた。『栄光の光』はここ最近トップギルドとして破竹の勢いで成長してきた。そこで王国に納めたギルド税はそれなりの金額になっている。


 また王国にとっても『栄光の光』がトップギルドとして君臨していた事で威光を示す事ができていたはずだ。

 

 だから。そうだな、とクロードは考えた。


(罰金刑くらいか……まあ、しょうがねぇな。それくらいなら気前よく払ってやるか)


 その時『栄光の光』にはまだ蓄えがあった。勢いを失速してきたとはいえ、トップギルドにのし上がる上で蓄えてきた備蓄はそれなりの金額であった。


 しかし役人から告げられた言葉はクロードにとって思ってもいなかった言葉だったのである。


「国王陛下からのお触れだ。『貴公のギルド、≪栄光の光≫の活動の無期限停止を命ずる』」


 役人は表情ひとつ変えずに告げる。


「な、なんだって!! 無期限停止だって!!」


「ああ。先ほど告げたであろう。聞こえなかったのか?」


「い、一体いつ活動を再開できるんだよ!?」


「それを私に聞かれてもな。国王のお気持ち次第だ」


「そんなんだったらどうやってこの失態を挽回するんだよ! 活動停止になったら挽回するチャンスも何もないじゃねぇかよ!」


「それを私に聞かれても困ると先ほど告げたであろう。私はただ国王陛下の命令を受け動いているにすぎないのだからなっ。それではな」


「ちなみに、もし活動停止中であるにも関わらず、活動していることがバレたらどうなるんだ?」


「うむ……そうだな。その時はより重い刑罰に課される事だろうな。多額の罰金、あるいはギルド長であるクロード殿への懲罰。さらにひどい場合はギルドの解体までありうる」


「そんなのってねぇだろ! 俺達はトップギルド『栄光の光』なんだぞっ! 今までどれだけ多額のギルド税を王国に納めてきたと思ってるんだ! それなのに一回の失態でこんな扱いあんまりだろっ!」


「何度も言わせるな! 私は命令を受けて動いているだけだっ! 私に不平不満をぶつけてきても何も変わらんっ!」


 役人は冷徹に告げる。


「くっ。うっ。くそっ!」


 役人の前でも感情を抑えきれずにクロードは悪態をついた。それほどまでに鬱憤のようなものが溜まってきているのだ。ギルド長であるという体裁を取り繕えない程に。


「ちなみに個人的な活動までは禁止されていない。国の為に奉仕活動でもしてみてはどうだ? 例えば王都のゴミ拾い、老人への手助けなどもいい。国王陛下のお気持ちが変わり、『栄光の光』の無期限活動停止が解かれるかもしれぬ」


「ゴミ拾い!! 俺達トップギルド『栄光の光』がゴミ拾いしろっていうのかよ!」


「何を言っているのだ。クロード殿。頂点に立つよりも頂点を維持する方が難しいのは自明の理だ。君たちは今、その座を維持できず転がり落ちようとしているところなのだぞ!」


「お、俺達が、俺達『栄光の光』が転げ落ちる」

 

 核心を突かれたクロードは膝をついた。正気を保っていられない様子だ。


「そ、そんなっ! あんなに上手くいってたのに! 用無しのフィルドをクビにして、それで他所のエースの剣聖ルナシスを引っ張ってきて、それでバラ色の未来がやってくるはずだったのに! なんで! なんでだ! なんでだよぉ! くそっ!」


 クロードは床を殴った。そんな事をしても拳が痛むだけなのではあるが、そんな事もお構いなしだ。拳が血で赤く歪んだ。


「この活動停止期間でその事をよく考えるのだな。そなたらは頂点に立った事で浮かれ、自分達が成功した理由を顧みなかったのではないか? 活動停止が解け、再びトップギルドとして舞い戻れるように猛省するのだな。では私はこれで失礼するよ。私も暇ではないんだ」


 役人はギルドを去っていく。


「くそっ! くそっ! くそっ!」


 クロードは床を殴り続ける。


「ちょっとやめなさいよっ! クロード。他のギルド員が見てるわよ」


「あ、ああ。すまない。ちょっと気が動転してな」


「とりあえずは役員室に移動しましょう。今後の話ならそこで」


「ああ」


 ドロシーに連れられ、クロード達は役員室に移動していく。


しかしギルド長のクロードの悪態。ギルドの無期限活動停止。さらには剣聖ルナシスの脱退。


 様々な悪材料は他のギルド員を一層不安にさせていったのだ。






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